岬の兄妹(みさきのきょうだい)
監督:片山慎三(かたやましんぞう)
脚本:片山慎三
出演:松浦祐也(まつうら ゆうや)、和田光沙(わだ みさ)
公開日:2018/7
ジャンル:ヒューマン
「岬の兄妹」は、自閉症の妹と、彼女を一人で看る貧困に苦しむ兄のセイの物語です。
監督・脚本は大阪府出身の片山慎三さんです。本作品が初長編映画作品となります。片山監督は、ポン・ジュノ監督や山下敦弘監督の一部作品の助監督としての経歴もあります。
貧困な中で妹を世話する兄の役を、埼玉県出身、「おっさんのケーフェイ」や「さよならくちびる」に出演されている松浦祐也さんが演じています。
自閉症の妹役を、東京都出身、「菊とギロチン」や「ひとよ」に出演されている和田光沙さんが演じています。
本作品は、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の2018国内コンペ部門で優秀作品賞と観客賞を受賞しています。
あらすじ
風の音が聞こえる港の近く、右足を引きづり、まりこ、と女性の名前を何度も叫ぶ作業着姿の男(松浦祐也)がいます。彼は妹(和田光沙)を捜しています。
妹は自閉症を患っています。普段は家の外から鍵をかけ、時には家の中で妹を拘束することもあります。そんな妹が鍵を壊して脱走してしまいました。脱走は3回目です。
兄は港の岸辺の水面に靴が浮かんでいるのを発見します。右足が不自由な兄は、友人で警察官であるハジメくん(北山雅康)に助けを求めます。
ハジメくんは近くで釣りをしていた人から網を借りて、靴を拾い上げます。兄がそれを見て、妹のものではないことを確認します。
兄はハジメくんと別れて、街中を捜し歩きます。日が暮れてしまい、兄は家に戻ってきます。すると、公衆電話から兄の携帯電話に着信がかかってきます。
それは妹を保護したという男からの電話でした。待ち合わせ場所に向かう兄、そこに車がやってきます。妹は元気そうでした。妹は海鮮丼をご馳走されたと喜んでいるようでした。兄は礼を述べます。男はそそくさと立ち去っていきました。
2人で家に帰宅します。妹は風呂に入ります。兄は妹が脱ぎ捨てた衣服を洗濯しようとします。すると、妹の服から1万円札が入っていることに気づきます。さらに、妹の下着に体液が付着していることを発見します。
兄は妹を問い詰めますが、次第に大喧嘩になってしまいます。
あくる日、兄は港に立ち尽くしていました。造船所の仕事をクビにされてしまいました。収入がなくなった兄は内職で食いつなごうとしますが、家賃をまともに払うことができなくなってしまいます__
感想
血の繋がりや貧困、生と性を扱った倫理観と社会観を扱った作品です。タイトルが似ているために連想してしまう中上健次さんの小説「岬」も、血の繋がりや社会問題を描いていました。小説の場合は想像力が良くも悪くも作用する面がありますが、本作品の場合は目を塞ぎたくなるような映像が、想像したくない映像が入り込んできます。
主役2人が印象的です。兄を演じた松浦祐也さんは数多くの作品で目にすることがあります。本作品では悲壮感と低俗な雰囲気がよかったです。学校での場面は壮絶でした。妹を演じた和田光沙さんは難しいという言葉ではとても足りない役を演じきっていました。
個人的には社会保障のくだりがもう少しあったほうがいいのかなと感じました。警察官の友人という存在もあるため、一層そのように思ってしまいます。橋口亮輔さんの「恋人たち」では主人公が申請に行き無下に扱われることで切迫感を高めていました。ただ、この作品は社会保障のことを描く作品ではないのだろうと思います。
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