映画 ~ 海炭市叙景 ~




海炭市叙景(かいたんしじょけい)
監督:熊切和嘉(くまきり かずよし)
脚本:宇治田隆史(うじた たかし)
出演:谷村美月(たにむら みつき)、竹原ピストル(たけはら ぴすとる)
公開日:2010/12
ジャンル:ヒューマン






「海炭市叙景」は、北の市「海炭市」で暮らす市井の様々な事情を抱える人々を描いた群像劇です。

監督は北海道出身の熊切和嘉さん、脚本は和歌山出身の宇治田隆史さんです。「私の男」や「アンテナ」といった両名の作品がたくさんあります。

造船所の海炭ドッグで発生した事故以来、2人兄妹で生活する妹役を、大阪府出身、「神様のパズル」や「死にぞこないの青」に出演されている谷村美月さんが、兄役を、千葉県出身、「私の男」への出演や、ミュージシャンとしても著名な竹原ピストルさんが演じています。

他にも、加瀬亮さん、山中崇さん、中里あき さんといった方々が出演されています。

小説「そこのみにて光輝く」や「きみの鳥はうたえる」の佐藤泰志さんの小説が原作となっています。

本作品は「海炭市」という架空の市が舞台ですが、原作者の出身地である函館を模した場所となっています。



あらすじ


颯太(そうた/竹原ピストル)と帆波(ほなみ/谷村美月)は兄妹です。北の地方にある海炭市で暮らしています。颯太は海炭ドッグで船にかかわる仕事をしています。小学生のとき、海炭ドッグで大規模な火災事故が発生して、両親を失ってからは2人で暮らしています。

冬が近づく中、仕事の昼休憩中、颯太はテレビで海炭ドッグが閉鎖されること、大規模なリストラの噂があることを知ります。颯太は先輩から海炭ドッグの労働組合としてストライキへの協力を求められ、12月10日からストが開始されます。

「船がすべて」という先輩、しかし、気づいたときにはストライキは終わっていました。先輩は職場に残るようです。颯太は職を失い、大晦日を迎えることになってしまいます__



感想

逝去されてから数多くの作品が映画化されている佐藤泰志さん小説の映像化のひとつです。

そこのみにて光輝く」や「オーバー・フェンス」とは異なり、本作品は複数の登場人物に焦点を当てた群像劇となっています。2時間30分を超える作品ですが、1人1人に描かれている時間はそれほど多くありません。そのため、もっと描写に時間をかけて欲しいという思いもありました。行間を読むための行が私には少なすぎでした。

地方を舞台に、そこで生活する人々の息遣い、そして各々が抱えている寂寥感の描き方が秀逸です。暗い映画ですが、希望に期待する、絶望に打ち勝つ、といったものだけが人生ではなく、希望に打ち負かされる、希望から置いていかれる、絶望と距離をおく、希望や絶望なんて関係ない、といった様々な歩みがあることを受け入れられる作品だと思います。






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