映画 ~ ヒミズ ~




ヒミズ
監督:園子温(その しおん)
脚本:園子温
出演:染谷将太(そめたに しょうた)、二階堂ふみ(にかいどう ふみ)
公開日:2012/1
ジャンル:ヒューマン




「ヒミズ」は大震災後の日本のある地方で、普通を願いながら両親から見捨てられ絶望と狂気に揺れ動く少年を描いた物語です。

監督・脚本は愛知県出身、「愛のむきだし」、「冷たい熱帯魚」の園子温さんです。

普通を望みながらもネグレクトに苛まれる中学生役を、東京都出身、「寄生獣」や「きみの鳥はうたえる」に出演されている染谷将太さんが演じています。

奇抜な行動が目を惹くクラスメイト役を、沖縄県出身、「私の男」や「翔んで埼玉」に出演されている二階堂ふみ さんが演じています。

その他、渡辺哲さん、でんでん さん、窪塚洋介さんといった方々が出演されています。

古谷実さんが手掛けた同名タイトルの漫画が原作となっています。


あらすじ


瓦礫の山、荒廃した町並、散見される人、大雨の中で詩を朗読している女子学生、散策する男子学生、学生の目に廃棄された洗濯機が目に留まります。それを空けると中に銃がありました。それを手にとり、銃口を自身の頭に向けると彼はそのまま引き金をひきます__


夢から目を覚ました男、住田祐一(すみだ ゆういち/染谷将太)は中学3年生です。川辺の簡素な小屋のような家で暮らしています。

朝のテレビでは福島県の震災と放射能汚染に関するニュースがやっています。彼は家の外にある洗濯機を確認します。夢で見たものと同じ洗濯機です。蓋を開けて中を確認しますが、当然、銃は入っていません。

彼の家の周囲には震災後に行き場を無くした人たちが暮らしています。住田の母親は彼らを汚らわしいもののように見ていますが、住田にはそんな様子はありません。行き場を無くした人の1人である夜野(よるの/渡辺哲)は、住田のそんな部分に親近感を抱いていて仲がよいです。

住田の家では貸しボート屋を営んでいます。しかし、父親は多額の借金を抱え家に不在であることが多く、母親も育児放棄している状態です。

住田の望みは平穏でした。授業中に夢を語る先生に対して、普通が1番ですと声をあげます。周囲から浮いた行動も厭いません。多分、一生大きな幸福はないだろう、しかし、きっと大きな禍もない、それが彼の望みです。

そんな住田のことを気にかけるクラスメイトがいます。茶沢景子(ちゃざわ けいこ/二階堂ふみ)は住田の過去の発言を語録として書き留め、それを部屋に貼ってあるという変わったところがあります。住田は彼女にそっけない態度ですが、彼女はめげません。

ある日、住田の母親が他に男を作って、住田から黙って去っていきました。そして、住田の父親が顔を出してきます__


感想


居たたまれなくなる作品です。平穏を望む一方で、ネグレクトを受ける思春期の中学生、彼が罪を憎み罰を欲することになりながらも、内包する矛盾と社会の無関心と人の優しさに苦悩する様子が描かれています。

閉塞感いっぱいなストーリーですが、奇抜な行動や罵倒や暴力のテンションの影響で、序盤から退屈することはありません。これは他の邦画作品と異なる特徴だと感じます。暴力が合わない人には合わないでしょう。

主役の2人の印象が抜群によいです。ずぶ濡れになろうが、泥をすすろうが、感情を爆発させようが殺そうが、迫真というと語弊があるのですが、息を呑む様相でした。他の出演者たちもクセが強いですが、魅力的でした。

漫画原作ということで、あの姿で街中をほっつき歩き続けているのはどうなの、という点だけ気になりました。国家権力や社会はそれほど甘くないというのは、この作品には必要なことだと思います。

物語の結末はどちらでも私は受け入れられたと思います。過程の描き方がよく、そこで満足できました。煮詰まって煮詰まって、最後の味付けに好みの違いが生じるのは仕方ないでしょう。


俺にはわかる
何だってわかる
自分のこと以外なら





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