海辺のリア(うみべのりあ)
配給:東京テアトル
監督:小林政広(こばやし まさひろ)
脚本:小林政広
出演:仲代達矢(なかだい たつや)、黒木華(くろき はる)
公開日:2019/10
ジャンル:ヒューマン
「海辺のリア」は、石川県を舞台に、引退した認知症の名俳優とその家族を描いた作品です。
監督・脚本は東京都出身、「バッシング」、「愛の予感」の小林政広さんです。
元名俳優の役を東京都出身で無名塾主宰、「人間の條件」や「切腹」に出演されている仲代達矢さんが演じています。
海辺で出会う女性役を、大阪府出身、「シャニダールの花」や「幕が上がる」に出演されている黒木華さんが演じています。
他にも、阿部寛さん、原田美枝子さん、小林薫さんといった方々が出演されています。
あらすじ
小言のつぶやきと、キャリーバッグをひくキャスターの音が聞こえる。桑畑兆吉(くわばたけ ちょうきつ/仲代達矢)がどこかを目指して歩いています。
彼は俳優として名を馳せていました。しかし、今では認知症を患っています。道中で半狂乱になり、身に着けていたマフラーを道端に投げ捨て、履いていた靴を道路に脱ぎ捨てていく始末です。
彼はそのまま海辺にたどり着きます。海の家の案内板には「千里浜なぎさドライブウェイ」の文字があります。砂浜でも彼はキャリーバッグを引き続けます。
海辺には女性がいました。伸子(のぶこ/黒木華)と名乗る女に桑畑は悪がらみします。カモメの鳴き声が響くその場所で二人は微妙な距離を保ちながら歩き続けます。
休みたい、水をくれと桑畑が言うと、伸子は手にしていたペットボトルを渡します。桑畑が飲み続けようとすると、伸子はそれを取り上げます。けちんぼと言い放つ桑畑に向かって、伸子はペットボトルを投げつけます。
どこまで行くの、どこ行くの?と伸子が尋ねます。忘れちまったと桑畑が答えます。
とある邸宅の前、行男(ゆきお/阿部寛)と呼ばれる男が車に乗り込もうとしています。行かないで、と行男の妻である由紀子(ゆきこ/原田美枝子)が止めようとします。ガレージの前には運転手(小林薫)が待機していますが、行男は運転席に乗り込みます。由紀子も助手席に乗り込み、車は出発します。
由紀子は、見捨てればいいのに、私たちのためだ、と行男を説得します。彼は、俺が何も知らないと思っているのか、と彼女に答えます。
桑畑兆吉はかつての映画スターでした。妻を亡くし、別の女性との間に授かった次女を追い出しました。そして、今度は長女と、元弟子で長女の旦那の2人によって、施設に追い出されてしまいました__
感想
シェイクスピアの悲劇「リア王」を想起させる、地位を失いつつある高齢男性の家族問題を描いた作品です。かなり特徴のある作品です。演者5人以外はエキストラも含めて一切他の人物が登場しません。また、他の車も見かけなかったように記憶しています。最初は田舎をディスっているのかと思ったのですが、途中からは、エキストラなど登場しない壮大な舞台劇を観ている気になりました。
ストーリーに関して、かつての栄光や過去の罪も描かれていません。家族問題が煮詰まっている場面から描いているため、人間関係や事の経緯が後からわかります。
良くも悪くも仲代達矢さんの印象が強く残ってしまいます。代わりが利かないという意味で。
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