9人の翻訳家 囚われたベストセラー(きゅうにんのほんやくか とらわれたべすとせらー)
原題:Les traducteurs
英題:The Translators
監督:レジス・ロワンサル(Régis Roinsard)
脚本:レジス・ロワンサル,ダニエル・プレスリー(Daniel Presley),ロマン・コンパン(Romain Compingt)
出演:ランベール・ウィルソン(Lambert Wilson)
公開日:2019/11(2020/1)
ジャンル:サスペンス
「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」は文学を巡る事件を扱ったサスペンス作品です。世界的に大ヒットした小説の完結編の世界同時出版のために集められた9人の翻訳家、彼らは情報流出防止のために地下に閉じ込められますが、数日もしないうちに出版社のもとに作品を流出させるという脅迫文が送られてきます。
監督はフランス出身、「タイピスト!」のレジス・ロワンサルさんです。
脚本はレジス・ロワンサルさん、ダニエル・プレスリーさん、ロマン・コンパンさんの共同脚本です。
出版社の社長役を、フランス出身、「パリに見出されたピアニスト」や「マトリックス リローデッド」に出演されているランベール・ウィルソンさんが演じています。
その他、オルガ・キュリレンコさん、アレックス・ロウザーさん、フレデリック・チョーさんといった方々が出演されています。
あらすじ
街の小さな書店、フォンテーヌ書店で発生した火事、たくさんの本が炎をまとい燃え続けます。それは文学界を揺るがす悲劇的な事件の予兆にすぎませんでした。
ドイツ、フランクフルトで開催中の「ブックフェア」、そこでアングストローム出版社の社長であるエリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)は大勢の報道陣を前に大々的に宣言します。
それは世界的に大ヒットした小説「デダリュス」シリーズ3部作の完結編、「死にたくなかった男」の出版権を獲得したというものでした。エリックは世界同時発売の販売戦略のために、過去2作品をとおして販売部数が多かった9ヶ国語を対象として、本作品への理解が深く、各言語の翻訳に精通したエキスパートたちを集めます。
デンマークのコペンハーゲンから、夫や子供との別れを惜しみフランスに飛び立とうとする女性、エレーヌ(シセ・バベット・クヌッセン)、ポルトガルのリスボンから、「デダリュス」の翻訳のために2ヶ月休暇を願い出て仕事を首になってしまった女性、テルマ(マリア・レイチ)をはじめとして、イタリア語のダリオ(リッカルド・スカマルチョ)、ロシア語のカテリーナ(オルガ・キュリレンコ)、英語のアレックス(アレックス・ロウザー)、中国語のチェン(フレデリック・チョー)、スペイン語のハビエル(エドゥアルド・ノリエガ)、ドイツ語のイングリット(アンナ・マリア・シュトルム)、ギリシア語のコンスタンティノス(マノリス・マブロマタキス)、総勢9名がフランスのヴィレット邸に集合します。
アングストローム社で秘書のように雑務をこなす女性、ローズマリー(サラ・ジロドー)が集まった9人に邸宅の案内をしようとしますが、9人を待ち受けていたのは厳重な警備でした。
アレックスが持ってきたスケートボードといった物は許可されましたが、携帯電話はもちろん、録音機といった類の機器も没収されます。持ち物検査を終え、一行が降り立った場所は、「デダリュス」ファンのロシアの富豪が世界の終末に備えて作ったシェルターでした。インターネットは使用禁止、新聞は各国のものが毎日届く、映画は一生観賞しきれないほど用意されているということでしたが、そこは、「デダリュス」完結編発売前の情報流出を恐れたエリックが、9人を2ヶ月間閉じ込めて作業させるための場所でした。
翻訳作業は1日に20ページを目安に少量ずつを翻訳家たちに渡し、最初の1ヶ月で全480ページの翻訳、次の1ヶ月で確認と推敲となる計画でした。
その2ヵ月後、フランスのボワ・ダルシー刑務所、そこには接見に臨むエリックの姿がありました。2ヶ月前の事件が原因です。接見の相手は__
感想
翻訳家が事件に巻き込まれ軟禁される、しかし、軟禁の原因となる事件の犯人は翻訳家たちのなかにいるはずであるという、誰が犯人かというミステリーも楽しめる文学をメインとしたサスペンス作品です。
ジェイムズ・ジョイスさんの小説「ユリシーズ」等の小話、特異な状況下で様々な言語で意思疎通を図る登場人物たちの存在、文学を本当に愛するものは誰だったのか、またそれに関する爽快な皮肉、万事が都合よく進むとは限らない展開、そして、何より作品全体をとおして言葉や小説を大切にしようと感じられた部分がよかったです。
一方で、真犯人の予想は容易であること、警備員たちが終盤の緊迫した状況下でとる行動としては違和感を覚えること、真犯人の行為が少し回りくどく、第3者を巻き込みすぎなこと、そのあたりは気になってしまいました。
「イミテーション・ゲーム」でもそうでしたが、アレックス・ロウザーさんの独特な雰囲気は印象に残りやすい気がします。
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