存在のない子供たち(そんざいのないこどもたち)
原題:کفرناحوم
英題:Capernaum
配給:ソニー・ピクチャーズ・クラシックス(キノフィルムズ)
監督:ナディーン・ラバキー(Nadine Labaki)
脚本:ナディーン・ラバキー、ジハード・ホジェイリ、ミシェル・ケサルワニ、ジョルジュ・カッバス、ハーレド・ムザンナル
出演:ゼイン・アル・ラフィーア(Zain Al Rafeea)
公開日:2018/5(2019/7)
ジャンル:ヒューマン
「存在のない子供たち」は、西アジアの一郭を舞台に、児童問題、貧困問題、移民問題といった社会問題を一人の少年の目線から描いたレバノン作品です。
監督・脚本はレバノン出身のナディーン・ラバキーさんです。自身も弁護士役として本作品に出演されています。
主人公の男児役をシリア出身のゼイン・アル・ラフィーアさんが演じています。実際にレバノンのベイルートにいた子供たちの中からキャスティング・ディレクターの目に留まった彼が、俳優としての経験がない彼が本作品の主人公に抜擢されました。
その他、主人公が出会うことになるエチオピア移民の役をヨルダノス・シフェラウさんが演じています。
本作品は2018年にカンヌ国際映画祭の審査員賞とエキュメニカル審査員賞を受賞しています。
あらすじ
レバノンのある街中を駆け回るたくさんの子供たち、時にはタバコをふかしたり、模造銃剣でチャンバラしたりしています。
とある場所にはたくさんの女性がいます。エチオピア移民のラヒル(ヨルダノス・シフェラウ)はティゲスト・アイロと名乗っています。彼女は偽装の滞在証でレバノンにいるため、身分を偽っています。
そして、手錠をかけられ連行されている少年がいます。彼の名前はゼイン・アル・ハッジ、とある罪で収監中です。
彼は正確な自分の生年月日を知りません。医師が彼の口の中を確認し、乳歯がないから12歳か13歳じゃないかと推測します。
彼は裁判に臨もうとしています。周囲にはテレビカメラがたくさん集まっています。彼が原告です。原告の代理人はナディーヌ・アル・アラム弁護士(ナディーン・ラバキー)です。少年が訴えたことに世間の注目が集まっています。
被告はセリム・アル・ハッジ(ファーディー・カーメル・ユーセフ)とスアド・アル・ハッジ(カウサル・アル・ハッダード)の夫妻です。ゼインの両親です。弁護人はサイード・タメルです。
ゼインは5年の刑で服役中です。裁判長から何の罪かを問われたゼインは、クソ野郎を刺した罪、と答えます。
ゼインは裁判長から何歳かと問われます。彼は、そっちに聞いてと、被告人側を見ます。代理人のナディーヌが代わりに答えます。ゼインには出生証明書がなく、どの公文書にも記録が存在しないと、両親でさえ彼の誕生日を把握していません。
裁判のきっかけは、ゼインが刑務所からかけた電話です。マスコミが大騒ぎになりました。
ゼインは両親を訴えたいと答えます。僕を産んだ罪でと__
感想
子供を主人公に社会問題を描いた作品です。同じく子供と社会問題にあてた、少年兵士やストリートチルドレンを描いた「それでも生きる子供たちへ」は短編でしたが、こちらは長編です。
責任を持てないのであれば子供を産むなと言う主張が強く印象に残っています。社会の構造上、そこに親の愛情の有無は関係ないのかなと思える描写がよかったです。もちろん愛情はあったほうがいいのですが。
出生証明がないから社会から認知されないと言うのは何とも皮肉な話です。成熟した社会とはどのような社会なのか、議論する余地があるのではと思えます。
ドキュメンタリーに近い映画であり、知らない世界がそこにありました。
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