見栄を張る(みえをはる)
配給:太秦
監督:藤村明世(ふじむら あきよ)
脚本:藤村明世
出演:久保陽香(くぼ はるか)
公開日:2018/3
ジャンル:ドラマ
「見栄を張る」は公私共に半端な生活を送る女優が、シングルマザーの姉の事故を契機に、姉の仕事や、姉のひとり息子、そして自身と向き合っていく映画です。
監督・脚本は東京都出身で、「彼は月へ行った」、「(十年 Ten Years Japan)その空気は見えない」の藤村明世さんです。
主人公の見栄を張る女性役を、兵庫県出身で映画「(21世紀の女の子)粘膜」や「私以外の人」に出演されている久保陽香さんが演じています。
他に、残されたひとり息子役として岡田篤哉(おかだ あつや)さん、姉の職場の上司役として似鳥美貴(にとり みき)さんといった方々が出演されています。
本作品はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭でSKIPシティアワードを受賞しています。戸田彬弘さん監督の「名前」の劇中映像で本作品が使用されています。
あらすじ
「君の儚い命」のオーディションを受ける女優の吉岡絵梨子(よしおか えりこ/久保陽香)はカフェのアルバイトで生計を立てています。
過去に缶ビール「スーパーラビット」のCMに出演したこともありますが、現在は事務所を離れています。当時の後輩が連ドラを出演を決める中、後輩が表紙に掲載されている雑誌をゴミ箱に投げ捨てるなど、あせりが見えます。一方で、アルバイトの同僚や元事務所の後輩に対しては、仕事がうまくいっているように見栄を張る毎日です。
絵梨子には同棲するヒモ男の翔(しょう/齋藤雅弘)がいます。翔は相方とお笑いコンビを組んでいますが、翔は適当なところがあり、真面目な相方は次のコンテンストで駄目だったら見切りをつけようとしています。
絵梨子は料理をしないため、二人の食事はしょうがをたっぷり追加したカップ麺が多いです。ある日の食事中、絵梨子の姉の由紀子から電話がかかってきます。
同窓会のお知らせとみかんを送ったこと、竜太郎が職場の人と結婚したこと、そして、たまには帰ってきて母の遺影に挨拶でもすればと、由紀子は絵梨子に電話で伝えます。
絵梨子は自身が咎められているように感じ、雰囲気が険悪ななか、電話を切ります。絵梨子はタバコをふかしながら何かを考えます。
別の日、エンディングワークスの佐久間(さくま/似鳥美貴)を名乗る女性から絵梨子に電話がかかってきます。それは由紀子が交通事故にあったと知らせる内容でした。
絵梨子は急いで移動し、和歌山にあるJR下津駅で下車し、由紀子の家に向かいます。絵梨子はそこで長らく疎遠だった親戚、由紀子が泣き屋として働いていた会社の上司である佐久間さん、そして、シングルマザーだった由紀子が残したひとり息子の和馬(かずま/岡田篤哉)に出会います__
感想
焦燥感に見栄を張る女性が、近しい人の死と残された家族、「泣き屋」という仕事と向き合い前を向いていく作品です。
まったく事前情報がない状態で観賞したため、ポップな雰囲気の宣材とは反対のやや重たい作品であったことは予想外でした。
「泣き屋」という存在を知らなかったため、それを学べたことは有意義でしたし、主役の美麗な久保陽香さん、とてもしっかりした子供演じる岡田篤哉さん、物語を引き締める頼れる存在の似鳥美貴さんの3人の俳優が魅力的な作品でした。終わり方もよかったです。
気になった点は、「泣き屋」という仕事だけで成り立つのか、「泣き屋」で同業他社と競合するのかといった部分、そして、絵梨子の女優への矜持の部分でした。
葬儀の挨拶や和馬への食事のシーンから、絵梨子の見栄は決して外面をよく見せようとするプライドの高さではなく、女優であることを自他共に否定されるべきではないという虚栄心から見栄を張っているだけと観賞後は捉えています。
しかし、それは物語の顛末から受ける結果論の印象です。個人的には序盤から中盤にかけて絵梨子の根底にある女優への想いが明確だったほうが合ったのかなと思います。
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