映画 ~ 名前 ~




名前(なまえ)
配給:アルゴ・ピクチャーズ
監督:戸田彬弘(とだ あきひろ)
脚本:守口悠介(もりぐち ゆうすけ)
出演:津田寛治、駒井蓮
公開日:2018/6
ジャンル:ヒューマン





「名前」は何故か様々な名前の人物を演じわける中年男性と、何故かその男性に付きまとう女子高生との交流を描いた作品です。

監督は奈良県出身で、「横たわる彼女」等の監督作品を持つ、チーズfilm代表、チーズtheater主催の戸田彬弘さんです。

脚本は神奈川県出身で、テレビドラマ「世にも奇妙な物語」の一作で和田アキ子さんが主演した「ハイ・ヌーン」等の脚本作品を持つ、守口悠介さんです。

偽りの経歴と名前を複数使い分け自堕落な生活を送る中年男性役を、福井県出身で「模倣犯」や「ソナチネ」等、数多くのドラマや映画に出演されている津田寛治さんが演じています。
そして、突然現れ男に付きまとう女子高生役を、青森県出身で大塚製薬のポカリスエットやJR西日本のCM、「町田くんの世界」等に出演されている駒井蓮さんが演じています。

他にも、松本穂香さんや波岡一喜さん、筒井真理子さんといった方が出演されています。

「向日葵の咲かない夏」や直木賞の「月と蟹」といった作品の著者である小説家の道尾秀介さんが原案の作品です。道尾秀介さんは音楽ユニットDEN(デン)の一員として、本作品のテーマソング「光」も手がけています。

また、本作品中には、清水邦夫さんの「楽屋 -流れ去るものはやがてなつかしきー」の劇中劇が演じられています。


あらすじ


何台も通る車を背に、何かを決意したように動き出すサラリーマンの男(中村正男/津田寛治)、小さく“ただいま”と呟いて家の玄関に入ります。

突然、ピンク色のゴムボールが飛んできます。男はそれを受け止めます。女の子が近づいてきたため、男はボールを女の子に返します。

ゆっくりとリビングに向かう男、すると後ろから、“コートをお預かりしましょうか”とセールスマン(川瀬陽太)に声をかけられます。そこはモデルハウスで、男は見学に来たようです。

“家族は何人ですかね?”と問われ、“3人ですかね”と男は答えます。ご記入くださいと渡された書類に、男は「鈴木太郎 43歳」と記入します__



ボートの先端部から見える風景、モーツァルトのトルコ行進曲のハミングが聞こえています__



夜の街、ヨシカワさんと呼ばれている中村正男、彼には男(池田良)と女(内田理央)の二人の飲み仲間がいるようです。女から別の店で飲みましょうと誘われますが、明日大きい仕事があるからと断ります。


家にいる中村正男、下着姿の女(木嶋のりこ)が一緒にいます。その女からはイシイさんと呼ばれています。女にゴミ出しを頼む中村正男、女が“もう来ないほうがいいんだよね”、と言うと、“うん、好きにしていいよ”と中村正男は答えます。女は怒って家を出ていきます。

中村正男が出て行く女を眺めていたところ、家の周囲に何か気配を感じます。


翌朝、車に乗って出かけようとする中村正男を、近所の大家(田村泰二郎)が呼び止めます。裏のゴミがひどいと中村正男は注意されます。大家さんには本名で呼ばれています。

結局、ゴミを片付けてシャワーを浴びて出勤することにした中村正男、通勤の運転中も煙草をふかすヘビースモーカーのようです。


中村正男はクボユキヒコという名前で、ペットボトルの分別作業の仕事をしています。その日、工場長(波岡一喜)から給料を手渡しされます。しかし、中村正男が給料の入った封筒を受け取ろうとすると工場長が手を離そうとしません。すると、工場長から、同僚からの密告があって、桜川総合病院にクボという人は入院されていないと聞いたと言われます。中村正男は、妻が病院に入院していると嘘をついて、仕事に就き、給料等で便宜を図っていたようです。

工場長から裏切られたと問い詰められる中村正男、するとそこに同僚が近づいてきて、クボさんに来客だと言います。

中村正男、工場長、そして同僚と入口に向かうと、一人の制服姿の女子高校生(駒井蓮)が待っていました。“はじめまして、父がお世話になっています、クボミナコです”、と自己紹介する女子高生、周囲の人たちは驚きます。そして、中村正男も内心驚いているようです。

母が転院した病院に行こうと女子高生に引っぱられて、中村正男は工場長から給料を受け取り、相合傘をしてその場から離れます。


車中、クボユキヒコ、ヨシカワ、イシイと、中村正男の使っている名前をすべて把握している謎の女子高生、そして、女子高生のナビによって到着した先は、中村正男の家でした。“お前なんで俺の家知ってんだよ”、と中村正男は尋ねます。


謎の女子高生は葉山笑子(はやま えみこ)と名前を伝えます__



感想


ちょっとしたミステリーから始まるストーリーラインで見事に引き込まれました。道尾さんの作品は「向日葵の咲かない夏」、「光の箱」、「カラスの親指」、「片眼の猿」と読んできましたが、ジャンルは異なれども、人の絆や縁の大切さを押し売り感なく受け止められる印象があり、本作品も楽しく観賞できました。

冷静に思い起こすと、大の大人が謎の女子高生と行動を共にするという点、物事のタイミングや物事を知りすぎている点といった部分には違和感を抱きますが、主演の二人の軽くて明るいコミュニケーションや心情的に共感できるといった部分で、期待を大きく上回りました。

津田寛治さんのチョイ悪なところやくたびれた雰囲気や、頼れる部分が垣間見える部分は印象的でした。加えて、駒井蓮さんのおじさんや同級生、母親との接し方の違いや、全体的な透明感がす素敵でした。「世界でいちばん長い写真」で印象に残った松本穂香さんと配役が逆のバージョンを見てみたい気もしますが、本作品の主演二人の組み合わせは、とても記憶に残る配役だったと思います。



いいかぁ
大人ってのはなぁ
みんな正直だけでは生きていけないの

ねえ

ときには見栄とか体裁とか
そういったいろんな装いが必要なんだよ



コメント