映画 ~ 半世界 ~




半世界(はんせかい)
配給:キノフィルムズ
監督:阪本順治(さかもと じゅんじ)
脚本:阪本順治
出演:稲垣吾郎(いながき ごろう)、長谷川博己(はせがわ ひろき)
公開日:2019/2
ジャンル:ヒューマン





「半世界」は地方を舞台にした、炭焼き職人と旧来の友人、家族の世界を描いた作品です。

監督・脚本は大阪府出身で、「新・仁義なき戦い」や「亡国のイージス」等の監督作品を持つ阪本順治さんです。

父から引き継いだ炭焼き業を経営する男性役を、東京都出身でテレビドラマ「ソムリエ」や映画「催眠」等、数多くのドラマや映画に出演されている稲垣吾郎さんが演じています。

自衛隊の職を辞して故郷に帰ってきた主人公の友人役を、東京都出身で映画「シン・ゴジラ」や連続テレビ小説「まんぷく」等、こちらも数多くの作品に出演されている長谷川博己さんが演じています。

他にも、池脇千鶴さん、渋川清彦さん、石橋蓮司さんといった方が出演されています。

本作品は第31回東京国際映画祭のコンペティション部門で観客賞を受賞しています。また、キノブックス文庫より小説化もされています。

本作品のタイトル「半世界」は従軍ジャーナリストの小石清さんの写真展からつけられています。その写真展には戦時下の現地住民の写真が多数収められていたとのことです。


あらすじ


地方で炭職人として高村製炭所を営む高村紘(コウ/稲垣吾郎)は運転中に懐かしい顔を見かけて声をかけます。自衛隊として北海道に赴任していた沖山瑛介(エイスケ/長谷川博己)が8年ぶりに帰ってきました。

コウとエイスケは学生時代からの友人です。8年前にエイスケの母親が亡くなって以来、放置されていた家にエイスケはしばらく住むようです。

コウには妻の初乃(ハツノ/池脇千鶴)と、中学生の息子の明(アキラ/杉田雷麟)の家族がいます。

コウは共通の友人である岩井光彦(ミツヒコ/渋川清彦)も呼んで三人で会おうと提案します。ミツヒコは三人の関係を三人で二等辺三角形とよく形容していました。

ミツヒコは中古車販売店「岩井モーターズ」を父親(石橋蓮司)と一緒に切り盛りしています。



翌日、三人はボロボロの状態だったエイスケの実家を片付けます。

エイスケが学生時代に柔道大会で準優勝の記念にもらった胸章が大切に保管されていることを発見します。エイスケは嗚咽を漏らします。二人はその様子を離れたところから見守っていました。


その夜、エイスケの家の雨戸が古くなっていて寒くて寝れないだろうからお父さんに頼んで欲しいと、コウはハツノに頼みます。

その後、ハツノはアキラの進路の件で、高校に行かせるよね?と念押しします。コウは父親から製炭業を引き継ぎ、現在はほぼ一人で重労働をこなしています。バブル時は何人も従業員がいましたが、不況のあおりを受け、最近も取引量が減少していて苦しい状況です。

さらに、ハツノはアキラの変な噂を聞いたとコウに伝えます。学校で良くない友達と一緒にいて、いじめられているのではないかとハツノは疑っています。アキラは反抗期か父親が嫌いなのか、コウも仕事で大変なこともあり、真正面から向き合えていません__



感想


閉塞感が漂う舞台、急に現れる日常を変える登場人物、ここだけ切り取れば平凡な邦画かもしれません。しかし、製炭業という職人の生業、家庭という場での三角関係、久しぶりに会った友人との三角関係、各々の行動や台詞が丁寧に描かれ、とても印象深い作品でした。

特に閉塞感を吹き飛ばすエイスケの友人のために行動するシーンの爽快感と、コウの台詞でもあり映画のタイトルでもある世界というテーマ、この二点が好きです。

時に助け合ったり、時には衝突しあったり、仕事でも人間関係でも、どんな世界であっても日々の積み重ねが大切だと思わせてくれます。そして、何かを契機にして世界が変わったら、そこからまた別の積み重ねが始まっていきます。しかし、それはまったくの別世界というわけではなく、それまでの世界が影響しあった世界だということを再認識させてくれます。

長谷川博己さんはとても格好よく、池脇千鶴さんはよき妻でありよき母親でした。池脇千鶴さんは「ジョゼと虎と魚たち」や「リップスティック」からはじまり、「凶悪」や「そこのみにて光輝く」、本作品ととても幅広く演じながらもどれも印象深い人物となっているのが驚嘆です。



こっちも世界なんだよ



コメント