ポルトの恋人たち 時の記憶(ぽるとのこいびとたち ときのきおく)
英題:LOVERS ON BORDERS
配給:パラダイス・カフェフィルムズ
監督:舩橋淳(ふなはし あつし)
脚本:舩橋淳、村越繁(むらこし しげる)
出演:柄本佑(えもと たすく)、中野裕太(なかのゆうた)、アナ・モレイラ(Ana Moreira)
公開日: 2018/11
ジャンル:ヒューマン、恋愛、ドラマ
「ポルトの恋人たち 時の記憶」は、18世紀のリスボンと21世紀の日本、大震災と津波が街を襲ったそれぞれの国を舞台に、国境や階級といった社会問題、男女の愛憎劇を描いた映画です。アメリカ、日本、ポルトガルの合作です。
監督は大阪府出身で、「ビッグ・リバー」やドキュメンタリー映画「フタバから遠く離れて」等の舩橋淳さんです。
脚本は船橋監督と、東京都出身で、「桜並木の満開の下に」やテレビアニメ「賭ケグルイ」や「シドニアの騎士」でも脚本を務めた村越繁さんの共同脚本です。
本作品はポルトガル編と日本編の2部で、さらに、主演の三人が一人二役を演じるという構成をとっています。
ポルトガル編でインドから連れてこられた日本人の役を、映画「きみの鳥はうたえる」やテレビドラマ「コック警部の晩餐会」等、数多くのテレビドラマ、映画の出演作をもつ東京都出身の柄本佑さんが演じています。
もう一人の日本人役を、映画「新宿スワン」やテレビドラマ「仮面ライダーキバ」等、数多くの映画、ドラマ、舞台に出演されている福岡県出身の中野裕太さんが演じています。中野裕太さんはもともと英語、フランス語、イタリア語と使いこなせるマルチリンガルであり、本作品を通してポルトガル語も学んでいます。アメリカ、日本、ポルトガルと複数の国のスタッフがかかわる本作品の中では俳優としてだけでなく、スタッフ間のコミュニケーションをとりなす役としても活躍されていたとの記事を見ました。
ポルトガル編の女中役を、「Os Mutantes」や「熱波」等に出演され、数多くの映画賞を受賞されているポルトガルのリスボン出身のアナ・モレイラさんが演じています。
あらすじ
1755年、ポルトガル、M9.0の巨大地震と津波がリスボンを襲い街を壊滅させました。その2年後、リスボンの一領主であるガスパール(アントニオ・ドゥランエス)が、故郷の復興のためインドから複数の奴隷と一緒に帰国します。
その中には、宗次(榎本佑)と四郎(中野裕太)の名の日本人奴隷の末裔が二人いました。
二人が到着したリスボンの震災の惨状に、“とんでもないところに来ちまったな”と話します。瓦礫の山の中を多くの人が作業しています。
屋敷への移動中も家畜のように扱われる奴隷たち、すると突然、一人の黒人奴隷が反抗します。執事をはじめとする複数の男たちに取り押さえられる奴隷、ガスパールはその様子を眺めています。
屋敷に到着した一向、そこでは数名の女中が主人を出迎えていました。一人の女中マリアナ(アナ・モレイラ)、と目が合う宗次、これが二人の最初の出会いでした。
到着後すぐに、屋敷の入口の外に皆を集めるガスパール、周囲の目の中、先ほど反抗した奴隷の腕を拘束し、上半身裸の状態で鞭打ちを始めます。
容赦のなく幾度も身体へ鞭を当てるガスパール、響く悲鳴、目を伏せる他の奴隷と女中、背中に次々と深い傷が刻まれ、ついには奴隷が痙攣しだします。
事がようやく終わり、鞭で打たれ続けた奴隷は息を引き取りました。奴隷用の一室で宗次を含む残った奴隷たちは悲しみに暮れます。
そこにマリアナがやって来て、赤い花を遺体に供えます。一方で、執事は遺体をゴミ呼ばわりし、捨ててくるよう奴隷たちに命じます。
マリアナが庭で仕事をしていたとき、その姿がガスパールの目に留まります。執事に彼女の詳細を尋ねるガスパール、どうやらマリアナはもともと農家の娘で、大震災で両親を失いこの屋敷にやってきたということです。
奴隷たちの食事の時間、食事を届けるのはマリアナの仕事です。各々食事を受け取る奴隷たち。宗次がが突然、マリアナの右手をとり手のひらに何かを掴ませました。
マリアナが中身を確認したところ、何かの種のようです。椿の実を植えて欲しいと、宗次はマリアナにお願いします。奴隷たちはいつかお金を貯めて自由になったときに、1本ずつ椿を植えると誓い合っていたのです。宗次がマリアナに渡したのは、亡くなった奴隷の分でした。宗次は花を供えてくれたことを感謝していると彼女に伝えます。
一方で、ガスパールは日本人を目の敵にしているようです。それは、彼の先祖であるミゲル・デ・カルバーニョが宣教師として日本に行ったとき、生きたまま火あぶりにされた過去の恨みによるものでした。
宗次とマリアナは徐々に仲を深めていきます。宗次は持っていたアクセサリーをマリアナにプレゼントします。マリアナは宗次をポルトガルの夜の岬に連れて行きます。
マリアナはそこに独りでいることが好きでした。海の向こうには違う場所があって、自分がなりたいものになれると、そんな特別な場所で二人は共に過ごします。過酷な運命が待ち受ける中で__
感想
ポルトガルと日本の二部構成となっている珍しい作品です。典型的な登場人物やありきたりなストーリー、映画やドラマを観賞していて既視感を覚える場面がありますが、それをうまく利用した作品となっています。
二部構成であることで、一方では日本人であるという理由だけで虐げられていたものが、場面が変わると日本人が外国籍の人を一方的に排除していたり、一人二役を用いることで、一方では被害者だった演者が、もう一方で加害者となったり、おもしろい試みが見られます。
カーストや国籍による差別、不況といった社会問題とも向き合った作品です。その一方で、尺の都合からか愛を深めていく様子の描写が少ないため、愛憎劇の部分に軽い印象は否めません。
1番気になったのは、なぜ本作品中の重要なアイテムのひとつが「椿」だったかという点です。最後のシーンにも(恐らく)影響を与えている植物だと思うのですが、映画「光」の冒頭で道路に散乱していたシーンのように、椿は花びらではなく花ごと散る、ある意味で生々しい植物です。最後のシーンにふさわしい植物だったかは疑問です。
似ている「山茶花」では駄目だったのでしょうか。色も形も椿と似ている山茶花は、花びらが1枚1枚散る点、「ひたむきさ」や「永遠の愛」を花言葉として持つ点から、山茶花のほうが個人的にしっくりくる気がします。
やはり日本の植物といえば「椿」の印象が強いのでしょうか。何か理由があるのなら、教えて欲しいと思います。
ファドは歌とギターが一心同体なの
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