映画 ~ 光 ~



光(ひかり)
配給:ファントム・フィルム
監督:大森立嗣(おおもり たつし)
脚本:大森立嗣
出演:井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミ
公開日:2017/11
ジャンル:ヒューマン、サスペンス




「光」は、離島出身で過去に罪を犯したことのある妻子を持つ男と、離島時代の恋人だった女、離島時代に弟のような存在であった男、その三人の邂逅により、男の妻を巻き込んだ、四人の狂気を描いたサスペンス作品です。

2011年4月に公開された映画「まほろ駅前多田便利軒」以来の三浦しをんさん原作、大森立嗣さん監督のタッグ作品となります。

大森立嗣監督は東京都出身であり、俳優の大森南朋さんの実兄です。



あらすじ


美浜島、海と椿と樹木しかない島、静寂な森、道路には椿の赤い花が散乱しています。

人気のない田舎町、虫が騒々しい夏、一人の青年(ノブユキ)と少年(タスク)が森の中にある見晴らし台に向かいます。
見晴らし台には老人がいて、ノブユキは性行為のためのゴムを老人から購入します。


森の中を一人で駆け抜けているノブユキ、鳥居の前で立ち止まり、境内へと続く階段をゆっくりと登っていきます。
人の気配を感じたほうを見ると、男とノブユキの恋人である女(ミカ)が性行為をしています。

それを呆然と眺めるノブユキと、ノブユキに気づき表情を変えずに「助けて」と口を動かしたミカ、ノブユキは二人の行為をとめます。

ミカのほうから誘ったという中年、食い違う二人の主張、「殺して」とノブユキに頼むミカ、「何言ってんだよ」と叫ぶ中年、何かを逡巡した後、中年に襲い掛かるノブユキ、その様子を眺めているミカがいます。

ノブユキは中年を殺します。死体を放置して二人で降りる境内の階段、ミカは途中で膝を抱えて泣き出します。ノブユキはミカの右足の親指にむしゃぶりつきます。

そして、死んだ男のそばにはタスクが写真を撮っています。


海岸にいるノブユキとミカは見晴らし台で会う約束をします。

タスクは父親から日常的に暴力を振るわれているようです。ミカはタスクの傷をぬぐいながら「いつかあの親父に殺されちゃう」と言います。

三人が見晴らし台にいると、突如地震が発生し、そして大きな津波が島を飲み込みます。


25年後_

団地で暮らす家族、娘を幼稚園に届ける女(橋本マナミ)、送迎の後には一人、電車に乗ってどこかの安アパートに行きます。

アパートには男(瑛太)がいて、部屋で情事を交わします。

浮気をしている妻の夫(井浦新)は美浜島で津波の被害にあったノブユキです。
ノブユキは成長して立派な職と家庭を持っています。
ツバキという名前の娘がいて、その娘を自由に育てたい方針ですが、妻は上品に育てていきたい思いがあるため、家庭の会話がどこかかみ合いません。

浮気をしている妻の相手は美浜島で津波の被害にあったタスクです。
タスクは、ノブユキを強請るために、彼の妻に近づいているようです。



感想


三浦しをんさんが描く狂気を映像化した作品です。

瑛太さんが演じるタスクの幼稚であるがゆえの狂気や、井浦新さんが演じるノブユキの内面から垣間見える狂気などは魅入るものがあります。

そしてそんな狂気が目立つこの作品のタイトルが「光」であることも印象的です。

少し前はこういった狂気を扱う作品は、どこか暗かったり、色温度が高い寒色系がひたすら続くことが多いイメージだったのですが、この作品の少し前に公開されていた「ユリゴコロ」や、この作品で娘のツバキがまぶしい光を背景に狂乱して踊っている様子など、逆に多量の光で非日常的な演出をしている作品が増えてきているのかなとも思いました。

冒頭やタイトル表示時のけたたましいテクノミュージックは個人的に印象に残っていて、むしろ中盤から後半にかけてもっとあってもよかったと思っています。駄目な人には駄目なのでしょうが。


ただ、全体的に各人物の印象が薄っぺらくなっている気がします。

私はこの作品の原作を読んでいるわけではないのですが、この作品と似た、暗くドロドロした人間関係がある小説「私が語りはじめた彼は」と比較すると、やはり三浦しをんさんの文章描写があればこそ、各人物の印象がより活きるのではと思いました。

映画という尺の問題がある以上、ここらへんは難しいのかなと思います。





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