映画 ~ 横道世之介 ~




横道世之介(よこみち よのすけ)
配給:ショウゲート
監督:沖田修一(おきた しゅういち)
脚本:沖田修一、前田司郎(まえだ しろう)
出演:高良健吾(こうら けんご)、吉高由里子(よしたか ゆりこ)
公開日:2013/2
ジャンル:ヒューマン





「横道世之介」は長崎から上京してきた人の良い大学生の周囲の人々の出会いと交流を描いた作品です。

テレビドラマ「火花」や、乃木坂46さんの「地球が丸いなら」のMV等、数々の映像作品を手がける沖田修一さんが監督です。

脚本は東京都出身で、戯曲「生きてるものはいないのか」、テレビドラマ「漂流ネットカフェ」の他、小説家としても活躍されている前田司郎さんと、監督である沖田修一さんの共同脚本です。

長崎から上京する人の良い大学生役を、熊本県(九州)出身で、映画「白夜行」や「アンダー・ユア・ベッド」等、数多くのドラマや映画に出演されている高良健吾さんが演じています。高良さんは、本作品で2014年にブルーリボン賞の主演男優賞を受賞されています。

よく笑うお嬢様役を、東京都出身で、「蛇にピアス」や「ユリゴコロ」等、こちらも数多くの映画、ドラマ、CMに出演されている吉高由里子さんが演じています。

他にも、池松壮亮さん、伊藤歩さん、綾野剛さん、朝倉あき さん、黒川芽以さん、ムロツヨシさん、井浦新さん、等々、豪華な出演者となっています。

「悪人」や「怒り」といった作品の著者である小説家の吉田修一さんの作品が原作です。

また、本作品は2013年度の公開作品を対象とした、第56回ブルーリボン賞で作品賞を受賞しています。


あらすじ


二つのリュックをかついで新宿駅から出てくる男、横道世之介(よこみち よのすけ/高良健吾)は大学進学のために長崎から上京してきました。路上でのアイドルのライブを眺めたり、都会の風景を楽しみながら新居へと向かいます。

前が畑のアパート、何もない新居となる一室、新しい環境に思わず床に寝そべる世之介、すると突然、目覚まし時計の音が鳴り響きます。

最初は自分の目覚まし時計かと思いリュックを調べる世之介でしたが、音は隣の部屋から聞こえているようです。外に出て、けたたましい音を鳴らし続ける隣の部屋のドアの前に立ちます。そのドアには、「目ザマシうるさい」と張り紙が貼られていました。

すると、さらに隣の205号室の窓から小暮(江口のりこ)と名乗る女性の住人が顔を出してきます。長崎から越してきたと世之介は自己紹介します。隣の部屋では、目覚ましがズッと鳴っていることを小暮から聞きます。

そして、“シチューを温めていたから、食べていく?”と小暮が世之介に尋ねます。世之介が“いただきます”、と答えると、“え、本当に?”と小暮は答えます。都会でのやり取りは難しそうです。



法政大学の入学式、学長の挨拶の中、世之介は隣にいた男子学生に絡まれます。その学生は倉持(池松壮亮)と名乗ります。同じ経済学部であり、早稲田を受験して落ちたことも共通する二人は仲良くなります。

講義室の一室、ノートを開いていた世之介、隣にいた可愛い女子生徒から声をかけられます。阿久津唯(朝倉あき)と自己紹介された世之介が自身の名前を伝えると、落語家さんみたいな名前だね、と言われ、サークル見学を一緒に回ろうと誘われます。

多くのサークルが勧誘に精を出す中、二人は倉持と合流します。倉持は空気が読めないのか、初対面にもかかわらず、阿久津のメイクを馬鹿にします。阿久津は泣き出してしまいます。気まずい空気な三人、しかし、空気を読まないサンバ軍団が彼らを取り囲み、さらに場の収集がつかなくなります。

その後、三人はサンバサークルに加入しました。早速、合宿があり広大な牧場で三人はサンバの練習に精を出しています。

その夜、風呂場で世之介と倉持の二人、倉持から意外な事実が知らされます。


これは、世之介と出会った様々な人たちとの物語です__



感想


一人の田舎から上京してきた人の良い大学生の日常を中心に、人との出会いに焦点を当てた作品です。

時代は1980年代後半、何気ないやり取りが暖かい気持ちにさせてくれます。起伏の大きい劇的な展開を期待する作品ではありません。一つ一つの小さな出来事の積み重ね、人生の転機で側に誰かがいたこと、他人に感化され、ふとしたと時に思い出す幸せだったかもしれない一場面、それが何人かの目線で描かれています。一人ひとり人生は異なれども、決して独りで作られた人生ではなく、どれもが愛おしい人生であると思わせてくれます。

主演の二人をはじめとして、登場人物も魅力的でした。特に、誘い笑いを引き起こすレベルで爛漫な吉高由里子さんと、半ば強引に友達にされ、一定の距離を保ちながらも何だかんだ仲良く見える綾野剛さんさんのキャラクターは印象に残ります。

ただし、冒頭のアイドルライブをはじめ、ワンシーンがちょっと長いなと感じる場面が数点ありました。ただでさえ2時間30分を超える作品であり、消化不良な登場人物(従兄弟や同じ時期に上京した友人等)もいるなかで、マッタリではなく、グダグダな印象を持ってしまうのは残念でした。

この作品は尺の限られた映画ではなく、40~50分×4~6話のドラマ構成として、各話でスポットを当てる人物×世之介、のオムニバス作品としたほうが個人的にはより楽しめたように思います。





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