映画 ~ 生きてるだけで、愛。 ~




生きてるだけで、愛。(いきてるだけであい)
配給:クロックワークス
監督:関根光才(せきね こうさい)
脚本:関根光才
出演:趣里、菅田将暉
公開日:2018/11
ジャンル:ヒューマン、恋愛






「生きてるだけで、愛。」は、躁鬱が激しい自堕落な25歳の女性と、ゴシップ雑誌担当の男性編集者との同棲生活、そこに突然元カノが乱入してきたことによる変化を描いた自己形成映画、恋愛映画です。

監督・脚本は東京都出身で、映画作品だけでなく、コマーシャルやミュージックビデオの映像ディレクターとしても数々の作品を創り出している関根光才さんです。

主演は「リバース」や「ブラックペアン」のテレビドラマ等、数多くの映画・テレビドラマの出演されている趣里さんです。本作品で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しています。

同棲している男性編集者役を、テレビドラマ「仮面ライダーW」や映画「共喰い」等の他、テレビコマーシャルや歌手としても活躍されている菅田将暉さんが演じています。

他にも、男性編集者の元カノ役を仲里依紗さん、主人公が通う喫茶店で働く店員役を織田梨沙さんが演じています。

本谷有希子さんの小説が原作となっています(小説の記事⇒)。



あらすじ


雑然とした部屋で毛布に包まっている女、寧子(やすこ/趣里)、彼女は躁うつ病を患っている自称メンヘラーです。

思い起こすと、彼女の母親もそうだったのかもしれません。彼女が育った家では停電になると裸の女性が踊っていました。最近になって、そのことをお姉ちゃんに尋ねたら、“何言っているの?それ、お母さんだよ”と、寧子は知りました。

そんな母親の奇行に負けず劣らず、彼女も女子高生の頃、何となく学校生活がかったるいという理由で体中の毛を剃ろうとしたことがあります。


扉をノックする音が聞こえます。“起きてる?”と声が聞こえます。

“うるさい、起こすな”と寧子は答えます。近くにあった雑誌をドアに投げつけます。そして、彼女はスマホをいじります。<男のため息って眠れなくうっとおしさがあるよね>、とお姉ちゃんに愚痴をこぼしています。

飯を買ってくると言い残して男は外へ出かけていきます。

女はタバコを吸おうとします。しかし、箱の中身は空っぽでした。男にタバコとコーラを買ってきて欲しいとスマホからメッセージを飛ばします。

そのメッセージを自販機の前で受け取った男(津奈木/つなき/菅田将暉)、彼は目の前の自販機でコーラを買います。自販機を前にしてため息をつく津奈木、その自販機の中心には大きなひびがあります。


そのひびは二人が出会ったときについたものでした。

道端には酔っている寧子、数人の女性が寧子を介抱しています。津奈木は寧子を送っていきますと彼女たちに伝えます。

二次会楽しんでくださいと女性たちと別れた津奈木、寧子は一人でふらふらと歩いていきます。慌てて寧子の後を追いかけます。

寧子は繁華街の夜道で突然大声を出したり、道に座り込んだりしています。寧子は津奈木を見ると、誰?と尋ねます。

津奈木は自己紹介を始めます。週刊サタデーナイトというゴシップ雑誌に勤めていると彼女に伝えます。なぜそこに勤めているのかを寧子は彼に尋ねます。津奈木は物書きになりたかったと伝えます。“つまんない人生を送っていますね、もし、私があなただったらつまんなすぎて今すぐ死ねますよ”、と寧子は彼に伝えます。

今度は津奈木が寧子に職業を尋ねます。“無職です”、と寧子は答えます。

寧子が自販機の前で立ち止まります。手元がおぼつかない彼女に代わって、津奈木がお金を自販機に投入してあげます。足元がふらついている寧子は、自販機にヘッドバッドをかまします。自販機にはひびが入ってしまいました。

寧子の頭からは血が出ています。寧湖はそれをまったく気にしません。津奈木はさすがに心配します。すると、こういうときに突然走りたくなると言って、寧子は突然走り出します。一瞬の出来事に唖然とする津奈木、慌てて彼女を追いかけます。そして、二人で夜の街中を走り抜けます__


宇津木が買い物から戻ってきました。寧子はついに自分の部屋から出てきます。

コーラを飲もうとしますが、津奈木がキャップを固く締めていたため、寧子の力では開けることができません。コーラを硬く閉めすぎるのをやめて欲しいと寧子は津奈木に言います。しかし、津奈木は食事の準備で離れていたため、聞こえておらず、弁当の話をし始めます。寧子は少し不機嫌になり、再度、コーラのキャップの件を津奈木に怒ります。津奈木は謝ります。

そして、寒いのにどうして手袋をしなかったのかと寧子は続けて津奈木を問い詰めます。その手袋は寧子が津奈木にあげたものでした。津奈木は再び謝ります。しかし、寧子は今すぐそれを身に着けろと津奈木に言います。津奈木は手袋を着けます。そして、パンツを脱いで着替え出します。

寧子はその様子を見てますます機嫌が悪くなっていき、二人の間の空気も悪くなっていきます__



感想


原作の富嶽三十六景のザッパーン!の話がなかったり(でもエンディングテーマのタイトルはそれに関連する「1/5000」だったり)、原作では寧子の津奈木を除いた唯一の社会との繋がり(はけ口)はネット掲示板だけだったのが、映画では姉が登場していたり、一部違和感を抱いたシーンもありましたが、映画は映画で充分に楽しめました。

特に、津奈木のドラマにスポットをあてている点が良かったです。津奈木の人物像が深まることで中盤から終盤のシーンを一層楽しめたように思います。あと、津奈木が寧子に対して、“わかりたかったよ”というシーン、原作では“もっと”という副詞はなく、こういった違いがとても楽しめます。

また、元カノと対面した際の何ともいえない空気感を画で感じられる点も映像の魅力だと感じました。

様々な色や大きさの街灯りで彩られた夜道を二人でいるシーンも印象的でした。

些細な出来事がきっかけで相手と分かり合えないと感じたり、たった一瞬でも相手と分かり合えたことを幸せに感じたり、ごちゃごちゃした感情の中にいる主人公だからこそ共感できる面がある、いい作品だと思います。


俺はさ
お前のこと
本当は もっとちゃんと
分かりたかったよ



コメント