映画 ~ ウィンターズ・ボーン ~




ウィンターズ・ボーン
原題:Winter's Bone
配給:ロードサイド・アトラクションズ(ブロードメディア・スタジオ)
監督:デブラ・グラニック(Debra Granik)
脚本:デブラ・グラニック、アン・ロゼリーニ(Anne Rosellini)
出演:ジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)、ジョン・ホークス(John Hawkes)
公開日: 2010/6(2011/10)
ジャンル:ヒューマン、サスペンス




「ウィンターズ・ボーン」はアメリカの山奥の村で一家の中心として生活する17歳の女性が、田舎の閉鎖的な慣習による妨害を受けながらも、家を守るために、行方不明となった父親を懸命に捜索する様子を描いたヒューマンサスペンス映画です。

監督はデブラ・グラニックさん、脚本はデブラ・グラニックさんとアン・ロゼリーニさんの共同脚本です。二人は本作品以外にもドラマ映画「リーヴ・ノー・トレース」を手がけています。

主人公に「ハンガー・ゲーム」、「マザー!」等のジェニファー・ローレンスさん、2011年に本作品で第83回アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされています。

主人公の叔父役に「アメリカン・ギャングスター」や、海外ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」や「LOST」へのゲスト出演暦を持つジョン・ホークスさん、こちらも2011年に本作品で第83回アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされています。

本作品はアメリカのミズーリ州を舞台に、「ヒルビリー」と呼ばれる19世紀半ばにアメリカに移住してきたスコットランド民族の閉鎖的な慣習に焦点が当てられています。

第83回アカデミー賞では、上記の主演女優賞、助演男優賞以外に、作品賞と脚色賞にもノミネートされています。



あらすじ

冬の山奥、山小屋の前でトランポリンで遊んでいる二人の子供、スケートボードで遊んだり、洗濯を手伝ったりしています。

ミズリー州の州歌である「ミズーリ・ワルツ」がBGMで流れています。この歌は19世紀半ば以降にアメリカへ移民してきたスコットランド農民たちの民謡です。

これはヒルビリーと呼ばれるアメリカの田舎に住む白人の生活を描いた物語です。


心を病んでいる母親の代わりに台所で朝食を用意している17歳の長女(リー・ドリー/ジェニファー・ローレンス)、まだ幼い弟や妹の世話も引き受けています。

散歩をする三人は学校へ、リーは弟妹を送り届けます。その帰り、彼女は偶然、銃を持って行進している生徒たちを見つけ、その様子を眺めます。彼女は貧困な家庭を助けるために軍隊を志願することも検討しているため、その様子が少し気になるようです。


家に戻った後、ソーニャという近所に住んでいる恰幅の良い女性のもとに馬を連れて来るリー、リーの家には馬の餌となる干草を買うお金もすでになく、ジンジャーと名づけられたその馬を引き取ってくれないかとソーニャにお願いします。

その後、家の庭先で巻き割りをしているリー、すると警察の車がやってきます。

車から出てきた警官はお母さんに話があるとリーに伝えます。しかし、調子の良くない母が警官の応対などとてもできる状態ではないと、リーが代わりに用件を聞くことになります。

警官の用件はリーの父親が行方不明になっているということでした。リーの父親は薬の密造をしていた容疑で保釈中のようです。しかし、もし、来週の裁判に姿を見せなかった場合に保釈金の担保となっているリーの住む家とその周辺の森の所有権を失うことになると、警官はリーに告げて去っていきます。

リーの家は貧困に窮している状態です。しかし、何とか家を守るために、その身一つで父親を探そうとするリー、彼女は手がかりを求めて周辺に住む親戚をあたろうとします。

しかし、閉鎖的で独自の掟や慣習を持つ村の中で、リーは様々な妨害、嫌がらせを受けていくこととなります__



感想


アメリカ社会の民族や文化を扱った社会派の作品です。

社会ドラマといえば人種による差別を扱った作品、テロや犯罪を扱った作品等、様々な種類のものがありますが、本作品はアメリカの独自の掟を持つ片田舎の貧困白人層の生活を扱った比較的珍しい作品だと思います。

この作品は2010年に公開された作品ですが、ITの発展、国際化の進展によって貧富の差がアメリカでも拡大していったこと、それに警報を鳴らす形で2016年にドナルドトランプ大統領が立候補し、貧困白人層の支持を得て当選したことを考慮すると、この作品の持つ社会的な意味は大きいと思います。

山奥の冬の厳しい寒さを感じる寒色系ばかりの映像に、厳しい環境にさらされる17歳の少女の存在は見ていて気が滅入る感じがします。しかし、インターネットもない、物も金も豊かにない、学校もない、時間は余っている、そういった環境が彼女たちにとっては当たり前のことなのかもしれないともこの作品を見ていると感じます。そして、そういった不便さと対比する形で、兄弟間の微笑ましいやり取りの場面が描かれることで、幸せや豊かさといった部分が何なのか、そのコントラストが強く印象に残ります。


本作品の主人公を演じきったジェニファー・ローレンスさんの魅力はすごいと思います。この作品撮影時の年齢等の影響もあるでしょうが、きついアイメイクをしないほうが個人的にはずっと魅力的に思います。


兄弟3人が庭先にいたときに弾いていた楽器は、バンジョーと呼ばれるアフリカの特徴を取り入れたアメリカの楽器のようです。初めて見たようなそうでないような不思議な楽器です。





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