映画 ~ マザー! ~




マザー!
原題:mother!
配給:パラマウント
監督:ダーレン・アロノフスキー(Darren Aronofsky)
脚本:ダーレン・アロノフスキー
出演:ジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)、ハビエル・バルデム(Javier Ángel Encinas Bardem)
公開日: 2017/9
ジャンル:サスペンス、ホラー、ヒューマン




「mother!」は人里離れた郊外で生活を営む、作家の男性と、家事と家の修繕をしている女性の夫婦のもとに、作家のファンを自称する不審な男性が現れ、夫がその男を客人として招き入れたことから生じるヒューマンサスペンス映画です。

「ブラック・スワン」や「π」等のダーレン・アロノフスキーさんが監督です。

主演は「X-MEN」や「ハンガー・ゲーム」等のアメリカ出身のジェニファー・ローレンスさんと、「それでも恋するバルセロナ」や「007 スカイフォール」等のスペイン出身のハビエル・バルデムさんです。

本作品は2018年1月に日本で公開される予定だったのですが、2017年11月にパラマウントの意向により公開中止となったいわくつきの作品です。



あらすじ

業火の中、顔の皮膚の一部が焼け爛れ、涙を流す一人の女性(ジェニファー・ローレンス/母親)、一方で、廃墟のような建屋の中で、クリスタルのようなものを手にしている男性(ハビエル・バルデム/彼)、すると廃墟だった家がたちまちにきれいな状態へと修復されていきます。


ベッドで目を覚ます母親、階段を降りて、部屋を一通りまわって玄関へ、扉を開けて外を眺めていると、そこは人里離れた郊外の一軒家でした。

突然家のほうから気配を感じます、彼が姿を現して“驚かせないで”と母親は言います。

二人は年の差が離れた夫婦のようです。母親は家のことに従事し、彼は作家として書斎にこもって執筆活動に励んでいるようです。

母親は部屋の壁を修復していて、ペンキを塗ったり、絵を描いたりしています。
ふと何かに思いあたったように母親が壁に手を当て目を閉じると、何かが見えてきます。

それは心臓のようなものであり、家の鼓動を感じています。

意識を戻す母親、書斎を覗いてみると作家である彼が作品作りに行き詰まり、悩んでいるようです。

母親は彼のために食事を用意します。その食事を完璧だと褒める彼、母親はあなたが忙しそうだから、そして自らがやりたいことであるからと答えます。


夜、彼が机で作業し、母親がソファで一服していると、玄関から物音がします。

二人が玄関に向かうと、整形外科医と名乗る中年の男性が、民宿かと勘違いしたと言って来訪してきます。

母親は突然の来客のために紅茶の準備をしますが、何か不穏な空気を感じ取ったのか、不意に呼吸が荒くなってしまい、マグカップを落とし、視界を歪ませます。

呼吸を整えて落ち着こうとする母親、沸騰するやかんの音が台所に鳴り響いています。

男はアルコールまで携帯する様で、すっかりくつろいでいました。突然の訪問者に彼は乗り気でしたが、母親は困惑します。

男はついには勝手にタバコを吸い始めようとする始末です。

男の寝床を準備するために、家の地下にシーツを取りに向かう母親、暗闇に覆われた壁から何かを感じます。

ベッドメイキングをしている母親、彼の書斎から、彼と男の談笑が聞こえてきます。
男は作家である彼の著書を読んだことがあるということで話が盛り上がっていました。

部屋においてあるクリスタルに目を奪われる男、彼はそれが特別なものであることを男に説明します。

過去に火事によって全てを失い、創作意欲までも喪失してしまったという彼、しかし、灰の中に残っていたのがそのクリスタルであるということです。

そのクリスタルの幸運によって、彼は母親と出会い、創作意欲が戻り、こうして素晴らしい家で過ごせる、何から何まで母親のおかげであると彼は説明します。


翌朝、相変わらず傍若無人な男性は居座ったままです。さらに、男の妻と名乗る女が家を訪ねてきて__



感想


日本では公開が中止されたほどいわくつきの作品、突然現れた来訪者が傍若無人な振る舞いをしたかと思うと、それがどんどん増えてきて、そして大切な家と家族に害をもたらすという、この点だけではある種の名作「ファニーゲーム」を彷彿とさせる不快感に襲われてしまいます。

「ドント・ブリーズ」のように突然の来訪者に痛烈なカウンターでも喰らわしてくれれば爽快なのですが、この作品はなかなかそういうわけにはいきません。

「ファニーゲーム」とのホストとしての違いといえば、「彼」という役名の夫の立ち振る舞い方です。彼はたまに憤怒する場面もありましたが、基本的に客人には寛容です。何でも分け与えよう、何でも許してあげようという、妻(役名は「母親」)目線から見たら離婚事由も甚だしいレベルです。

これは見ていて違和感を覚えます。そして、それ以外にも違和感や疑問を覚えるシーンがこの作品では散見されます。

そして、こういった寛容な彼と、家や家族を大切に思う母親、そして好き勝手に崇めたり奪ったりする多数の客人、疑問を抱く演出や行動こそがこの作品の重要な部分であり、大きなテーマを内包した魅力的な作品となっています。

しかし、大儀があれば何でも許されるわけではなく、不快なものは不快であるため、ここら辺で好き嫌いが大きく分かれると思います。

私はこのテーマに関する予備知識はかなり乏しいほうですが、それでもテーマを考慮して思い返せばいい作品だなと思います。

ただ、結局、母親が服用していた黄色い粉は謎のままです。


What hurts me the most is that I wasn't enough.

It's not your fault.
Nothing is ever enough.
I couldn't create if it was.
And I have to. That's what I do.
That's what I am.




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