小説 ~ 白い部屋で月の歌を ~




白い部屋で月の歌を(しろいへやでつきのうたを)
著者名:朱川湊人(しゅかわ みなと)
出版社:角川書店
発売日:2003/11
ジャンル:ホラー





「白い部屋で月の歌を」は霊能力者のアシスタントが遭遇する転機を描いた表題作を含む、2編の短編が含まれたホラー作品です。

著者は大阪府出身、「都市伝説セピア」や箱庭旅団シリーズの朱川湊人さんです。

本作品には表題作と、「鉄柱(クロガネノミハシラ)」の短編作品が2編収録されています。



あらすじ


除霊師のシシィ姫羅木(ひめらぎ)先生のアシスタントを務めるジュン、彼の仕事は憑坐(よりまし)です。

ジュンには霊媒師が引き離した霊魂を一時的に隔離する器のような能力を持っています。霊魂を入れるとき「白い部屋」という特殊な空間が彼の中に現れます。「白い部屋」のなかでは霊魂がジュンを罵ったり、暴れまわったりします。彼は霊魂の記憶や執念の影響を身近に受けてしまいます。

「白い部屋」に入った霊魂を最終的に先生が除霊してくれます。先生は除霊の分野で著名であり、ジュンはこれまで何度も、幾人もの霊を「白い部屋」に迎え入れていました。営業担当のリョウも含めた3人で除霊の仕事経験を重ねています。ジュンはリョウにあまりいい意印象を抱いていません。

ジュンは除霊後、怨霊となった霊魂たちが過去に経験した悲惨な出来事を悪夢で見ることが多々あります。仕事は決して楽なものではありません。しかし、彼は先生を信頼しています。彼はその特殊な能力を持っているためか、1人で歩き回ることがきません。指先も自由に動かすことができませんでした。除霊のさいに客から無遠慮な視線をもらうこともよくあります。先生のサポートを得ながら彼は日々の生活を送っています。

ある日、街中で殺傷事件が発生します。その事件の被害者の少女は一命を取り留めたものの植物人間のような状態になってしまいました。事件のショックから霊魂が現場に取り残されたらしく、先生のもとに依頼が舞い込みます。先生はその除霊がとても難しいものになるだろうと仕事を請けるか悩みますが__


(『白い部屋で月の歌を』より)



感想


ホラー作品に分類される作品ですが、人間の欲や価値観、死生観、生き様の描き方を含めた世界観が好みに合った作品でした。短編というのがよかったです。

特に2作品目の「鉄柱(クロガネノミハシラ)」のような、独特な文化・風習と特異な倫理を日常生活に融合させようとする形がはまりました。物語の展開が予想できても読後感が充実している作品には満足できます。

不倫要素がご都合主義のように感じた点は残念でした。また、それによって終盤の展開が、ある人のあてつけのような印象も持たせてしまうため、作品の狙いなのかもしれないのかもしれませんが、少し違和感が残ってしまいます。







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