小説 ~ のぼうの城 ~




のぼうの城(のぼうのしろ)
著者名:和田竜(わだ りょう)
出版社:小学館
発売日:2007/11(2010/10)
ジャンル:歴史





「のぼうの城」は戦国時代、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉の命で関東の雄である北条家を攻める石田光成と、「のぼう様」と称される城代との籠城戦といった様子を描く歴史小説です。

著者は大阪府出身の和田竜さんです。他の著書に「村上海賊の娘」があります。2008年に本作品が直木賞候補作となています。

本作品は2012年に犬童一心さんと樋口真嗣さんの2人の監督、野村萬斎さん主演で映画化されています。



あらすじ


1590年(天正18年)の戦国時代、豊臣秀吉は天下統一を目前に控えていました。秀吉の側近として壮大で豪気な戦の様子を間近に見てきた石田三成は、自身も同じような戦がしたいと思いつつ、心の中に鬱々とした感情を抱いていました。それは、本能寺の変から8年が経過する間、三成が目立った武功をあげられなかったためです。

三成は決して能力が劣っていたわけではありません。むしろ、九州攻めのさい、兵糧の事務方として抜群の吏才を発揮していました。その種の技能を持つ武将は稀であったため、与えられる役割が事務方に偏っていたという側面があります。

しかし、そんな三成に大きな武功をあげる機会が訪れます。天下統一への最後の障壁、関東の雄、北条家を相手に大軍を投入しようとする秀吉、三成は2万の軍勢の総大将として、北条家の支城である忍城をすり潰せという下知が与えられたのです


北条家の配下にいる成田家、その成田家一の家老である正木丹波守利英(まさきたんばのかみとしひで)は忍城の城下町を騎馬で疾走していました。人を探し駆け回っているのです。目的の人物は成田長親(なりたながちか)、成田家当主である成田氏長(なりたうじなが)の従兄弟であり、丹波の幼いころからの友人です。

成田家では秀吉からの宣戦布告に対する北条家からの使者からに返答すべく、本丸に要人が集合することになっているのですが、長親の姿が見えないため、丹波が探し回ることになります。

長親は変わった男でした。百姓仕事の熱狂的な愛好家であり、その日も農作業を手伝うために城を出ていくような男でした。しかも、長親は百姓から無能な肉体労働者と称されるほど出来が悪く、それが善意でやっていることのため、百姓たちにとっても始末の悪い存在でした。忍領の大部分の人が長親のことを「のぼう様」と呼びます。「のぼう様」とは、でくの坊の略であり、それに申し訳ない程度に「様」がついただけです。


秀吉の侵攻に対して、成田氏長にはある策がありました。しかし、石田三成と成田長親という2人の特徴的な武将の存在により、戦局は想像せぬ方向に動いていこうとします__



感想


「成田記」といった多くの文献を参考に史実をエンターテインメントとして描いた戦国小説です。

軍力に圧倒的な差がありながら奮闘する様子は、判官びいきな気質な人にとって楽しめる作品になっていると思います。

一方で、「のぼう様」と称される主人公に関しては、尊敬も共感もできず残念な印象でした。何を考えているのかわからないというのが魅力なのかもしれませんが、城代としての選択や行動に疑問を抱きます。敵方となる石田三成のほうが考え方に一貫性がある分、個人的には印象がいいです。









 

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