花の下にて春死なむ(はなのもとにてはるしなむ)
著者名:北森鴻(きたもり こう)
出版社:講談社
発売日:1998/11(2001/12)
ジャンル:ミステリー
「花の下にて春死なむ」はビアバー<香菜里屋(かなりや)>に集う常連客がかかわる謎を、店のマスターの助言により解明していく様子を描いた短編推理小説です。
著者は山口県出身、「狂乱廿四孝」や蓮丈那智フィールドファイルシリーズの北森鴻さんです。
本作品には表題作を含む、「家族写真」、「終の棲み家」、「殺人者の赤い手」、「七皿は多すぎる」、「魚の交わり」の計6編の短編作品が収録されています。
あらすじ
新玉川線の三軒茶屋駅から少し離れたところにあるビアバー<香菜里屋(かなりや)>、そこは何人もの常連客が集う隠れたスポットです。その店には4種類の度数が異なるビールがおいてあり、マスターの工藤哲也(くどう てつや)が客に合わせたビールを提供してくれます。
4月、常連客の1人、飯島七緒(いいじま ななお)は葬儀帰りにその店に立ち寄りました。故人の名は片岡正、七緒も所属していた自由律俳句では片岡草魚の名で知られた存在でした。
草魚は4月頭に埼玉県にある小さな木造アパートで亡くなっていました。死因に事件性はなかったのですが、片岡草魚には身寄りがなく、片岡正という名前が本名かどうかすらわかりません。
仲がよかった七緒は、草魚の遺品である彼の句帳を受け取っていました。七緒は密かに彼の生まれ故郷に心当たりをつけていました。工藤の助言もあり、彼女は草魚のことを故郷に帰してあげたいと考えるようになります__
(『花の下にて春死なむ』より)
感想
人生の転機で訪れた謎とその背景を、バーのマスターの助言とともに解き明かしていく様子を描いた短編集です。犯人は誰だ、トリックは何だ、といった仰々しいものではなく、マスターが安楽椅子探偵の形態で客人をサポートします。
喜怒哀楽といった情緒が色濃く物語に反映されていると感じた点がよかったです。一部の物語で強引さを感じてしまう点が気になりました。無理やり続編を作りました、と感じてしまった点が残念です。バーらしく、料理の描写も特徴的ですが、登場人物がそれを口に入れたときの反応の描写が少ないため、食欲をそそるという印象が残りません。
エンタメやトリックといった要素ではなく、情緒や情景を重視した作品です。インパクトに欠けますが、読後感は悪くありません。
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