小説 ~ 死者のための音楽 ~




死者のための音楽(ししゃのためのおんがく)
著者名:山白朝子(やましろ あさこ)
出版社:メディアファクトリー
発売日:2007/11(2011/12)
ジャンル:ファンタジー、ホラー





「死者のための音楽」は不思議な登場人物たちが織り成す、妖しく残酷で優しい光景を描いた短編集です。

著者の山白朝子さんは2005年に怪談専門誌「幽」でデビューした作家です。その正体は著名な作家であり、覆面プロジェクトとしてホラー要素のある作品を本名義で発表されています。

本作品には表題作を含む、「長い旅のはじまり」、「井戸を下りる」、「黄金工場」、「未完の像」、「鬼物語」、「鳥とファフロッキーズ現象について」の計7編の短編作品が収録されています。



あらすじ

ある寺の和尚は一人の少女と出会いました。日照りと病で大勢の人々の命が奪われていた時期でした。少女との出会いは静かな夜のことでした。

少女は下腹部に小刀が突き刺さった状態で、赤い雫を垂らしながら和尚に助けを求めてきました。父様(ととさま)と少女の2人で旅をしていたところ、物盗りに襲われたのです。

和尚はすぐ医者を呼びました。医者はすぐに少女を手当てしました。そして、村人たちが少女の父親を捜しに行き、無残な姿になった父親を発見しました。

事件の影響か、少女の記憶は曖昧になっていました。自身の名前も思い出せていないようです。和尚は少女を、お宮と呼ぶことになります。

お宮は父様のことは覚えていました。2人でいろいろな場所を旅していました。父様はお坊さんではなかったのですが、行く先々で、ありがたいお経を人々に読んでいたようです。


少女が来て3ヶ月経ったとき、お宮が妊娠していることがわかります。産婆が看たところ、確かにお宮は妊娠していました。しかし、産婆が言うのには、お宮の体は無垢であり、経験がないということです__

(『長い旅のはじまり』より)



感想


怪談よりもファンタジー色が強いと感じた短編集です。

もともと本名義が好きな作家さんであり、本作品も楽しめました。「ZOO」に近い作品です。幻想譚でも読みやすいのは語り部が視てる世界と心の声がわかりやすいからだと思います。

個人的には「鳥とファフロッキーズ現象について」が1番好きです。良くも悪くも著者の本作品以外の作品と雰囲気が似ています。そのため、作者の他の作品に多く触れた後では、少しパンチ力不足も感じてしまいます。








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