闇が落ちる前に、もう一度(やみがおちるまえに、もういちど)
著者名:山本弘(やまもと ひろし)
出版社:角川書店
発売日:2004/8(2007/8)
ジャンル:SF
「闇が落ちる前に、もう一度」は崩壊してゆく日常を科学技術や超常現象、哲学といった要素を含めて描いた表題作を含むSF短編集です。
著者の山本弘さんは京都府出身の作家で、他の著書に「ソード・ワールド」シリーズや「アイの物語」があります。
本作品には表題作を含む、「屋上にいるもの」、「時分割の地獄」、「夜の顔」、「審判の日」の計5編の短編作品が収録されています。
本作品は単行本版「審判の日」をベースに文庫版で追加・改題された作品です。
あらすじ
大学の調査でモンゴルに10日前に発った彼女の萌衣(もい)へ送るための1通のメールがあります。それは彼氏である僕が用意したものです。すべてが手遅れになる前に。2ヶ月前は変わらない日常を過ごしていたはずでした。学食で萌衣が突然モンゴルに行くといったとき、4週間も会えないのは長いけれども、永遠の別れではないと思えたはずでした。
ただ、この10日間、僕はまったく萌衣と連絡がとれていません。国際電話の番号も聞いたはずだったのに、メモが見つかりません。いや、本当に聞いたのかも今となっては記憶が曖昧です。
連絡がとれなかったのは僕が忙しかったせいもあります。物理学で宇宙論を専攻する僕が研究と実験に没頭していたことが原因です。
しかし、その実験で明らかになったことは、僕がもう2度と萌衣に会えないんじゃないかということです。いや、ひょっとすると、そもそも__
(「闇が落ちる前に、もう一度」)
感想
ホラーや哲学の要素も大きいSF短編集です。いくつかの理論が並べられた小難しい話が出てくる作品もありますが、短編で全体的に読みやすい作品です。
SF短編といえば星新一さんが第一人者ですが、社会に対する批判的な物事の見方は本作品も似ています。本作品はより近代的な技術や理論と俗人的な登場人物がプラスαで活かされているように思います。
設定が都合よく感じられますが、短編だから気に障るほどではないと思いました。SF作品ですが、ワクワクというより、ドキドキを感じられる作品です。
表題作の「闇が落ちる前に、もう一度」とAIを扱った「時分割の地獄」が好きです。
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