イン・ザ・プール(いんざぷーる)
著者名:奥田英朗(おくだ ひでお)
出版社:文藝春秋
発売日:2002/5(2006/3)
ジャンル:ヒューマン
「イン・ザ・プール」は悩みを抱えた患者たちが、奇怪な精神科医と出会い生じる出来事を描いた短編集です。
著者の奥田英朗さんは岐阜県出身の作家で、他の著書に「最悪」や本作品を含む精神科医・伊良部シリーズがあります。
本作品には表題作を含む、「勃ちっ放し」、「コンパニオン」、「フレンズ」、「いてもたっても」の計5編の短編作品が収録されています。
本作品は2005年に三木聡監督で映画化されています。
あらすじ
出版社に勤務する大森和雄は1ヶ月ほど前から内臓が落ち着かない感覚に悩まされていました。ひどいときには突然下痢が襲ってきて、家から駅までにパンツを汚してしまうこともあり、妻から憐憫の目で見られることもありました。同僚には人事考課に影響が出ることを懸念して相談できていません。そんな和雄が救いを求めて向かった先は伊良部総合病院でした。最初は内科を訪ねた和雄でしたが、そこの若い医師の対応は冷淡でした。連日の通院の後に和雄に放たれた言葉は、1度神経科にかかってみては、というものでした。気乗りしない和雄でしたが、意を決して、その病院の地下にある神経科へと向かいます。
「いらっしゃーい」と甲高い声で和雄を迎え入れる声、そこには40代前半と思われる太った医師の伊良部と、部屋の隅で週刊誌を読んでいて和雄には目もくれない茶髪の若い看護師であるマユミがいました。
症状を説明する和雄、しかし、伊良部の態度はどこか軽薄で、和雄は何度か眉間にしわを寄せます。荒唐無稽な話を提案したかと思うと、次にはいきなり患者に注射を打とうとする始末です。
別の病院を探そうかと思った和雄でしたが、伊良部の提案の中で唯一心に残ったものがありました。それは運動をしてみたらというものでした。太った伊良部にこそ運動が必要なのではないかと思う和雄でしたが、帰宅後すぐに妻に近所に泳げる場所があるかを尋ねます__
感想
軽快(軽薄)なキャラクターが主役の短編ということで、とても読みやすい作品だと思います。
精神科医ということで重厚なものを期待すると肩透かしをくらいますが、気分が沈みかけているときに読むと気持ちを楽にしてくれるかもしれません(逆に世の中はこんな気楽じゃないと深く沈んでいく可能性もありますが)。
主人公の伊良部のキャラクターがよく、そのビジネスパートナーの立場にいるマユミも個性的です。実際にこんな主治医がいたら嫌ですが、コミカルな人として近くにいたら楽しいのかもしれません。
続編も読了済みなのですが、期間をおいて再読しても楽しめる作品だと思います。
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