今夜、すべてのバーで(こんやすべてのばーで)
著者名:中島らも(なかじま らも)
出版社:講談社
発売日:1991/3(1994/3)
ジャンル:ヒューマン
「今夜、すべてのバーで」はアルコール中毒で入院することになった男を描いた小説です。
著者は兵庫県出身の中島らも さんです。他の著書に「お父さんのバックドロップ」や「寝ずの番」があります。
本作品は1991年に吉川英治文学新人賞を受賞しています。
あらすじ
売文稼業で事務所を構える小島容(いたる)は度重なる飲酒の影響で、とうとう沈黙の臓器が悲鳴をあげ、入院することになります。担当医の赤河医師に憎まれ口を叩かれながらも、同じ病室の綾瀬(あやせ)少年や、アルコール依存の福来(ふくらい)をはじめとする病院関係者との新しい出会いから自身の状況を見つめなおします。
新しい出会いと平行して、唯一の事務所の社員である天道寺さやか に容は小言を言われたり、時に、さやかの兄である旧友の天道寺不二雄との出来事を思い出します__
感想
アルコールに依存する人間を描いた作品です。著者の経験談のような話もあり、どちらかと言えば平淡に進んでいく展開ですが、専門的な知識とユーモアのある会話のバランスがよく、素敵な作品だと思います。
自分はまだ飲めるのだと安心させるためにアルコールの知識を深く身につけていく様子はとても人間くさいと感じました。シアナマイドといった抗酒剤の存在も私は知りませんでした。
主人公もそこそこに無茶な性格をしているように感じましたが、それを上回る登場人物が数人登場するため、相対的に主人公が常識人に見えてしまうという絶妙なバランスをとっているように思います。テーマと見せ方で満足できる作品でした。
「なのに、なんで子供のうちに死ななくちゃならんのだ。
つまらない勉強ばっかりさせられて、
嘘っぱちの行儀や礼儀を教えられて。
大人にならずに死ぬなんて、つまらんじゃないか。」
(P.259) ※ネタバレ反転
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