小説 ~ 聖少女 ~




聖少女(せいしょうじょ)
著者名:倉橋由美子(くらはし ゆみこ)
出版社:新潮社
発売日:1965(1981)
ジャンル:恋愛





「聖少女」は記憶喪失の少女とその婚約者を名乗る男が経験したとされる歪な愛の形貌を描く物語です。

著者は高知県出身の倉橋由美子さんです。他の著書に「パルタイ」や「アマノン国往還記」があります。



あらすじ

ぼくと未紀が出会ったのは秋の土曜の夕暮れ時でした。数年前の話になります。虎ノ門の路上の近くでした。ぼくが仲間と運転中の車で金勘定をしているときの出来事です。車の近くに突然現れたのが未紀でした。

何故か車に乗せようとしたぼくと、何故か車に乗り込んだ未紀、その後、横浜まで遊びに行き、未紀は朝には消えていました。

その日以降、ぼくと未紀は異なる人生の軌道を歩んでいました。しかし、未紀が車で事故を起こしてから状況が変わります。未紀はその事故で記憶喪失になっていました。

ぼくはその夏、カリフォルニア大学に留学する予定で、アメタイからのヴィザの許可を待つ身でした。連絡が来るまで、ぼくは毎日病院に向かい、未紀の恢復の歩みに立ち会っていました。

そんな時、ぼくは未紀から相談を受けます。それはとあるノートに関する相談でした。記憶を失う前の、死んでしまった未紀が書いていたというノート、そこにはパパを異性として愛していると書かれていました__



感想


1965年に発表された作品ですが、禁忌とされるような愛の怪しさや、探究心、心の底にある感情を求める様は時代関係なく通ずるものがあり、古いから読みにくいという印象は薄かったです。

アメタイといった単語だったり、会話文がカタカナになったりする部分には抵抗を感じました。特にカタカナの乱発は読中に挫折しようかと感じたほどです。

言葉の選び方が独特であり、1度の読書だけでは把握しきれていない事柄もあるような気がして読後感は決してよくありませんが、不思議な余韻を残す作品でした。

「パパ活」が子育て活動だったり、援助活動だったり、時代によって意味合いが変わったりしますが、「パパ」という言葉に背徳感を覚えさせる強い印象を与える構成が素晴らしいと思います。










 

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