肩胛骨は翼のなごり(けんこうこつはつばさのなごり)
原題:Skellig
著者名:デイヴィッド・アーモンド(David Almond)
訳者:山田順子(やまだ じゅんこ)
出版社:東京創元社
発売日:2009/1 (原題発表 2000)
ジャンル:ヒューマン
「肩胛骨は翼のなごり」は、心臓に病気を持つ赤ちゃんの妹を心配する一人の少年と、少年の引越先の家のガレージでほこりまみれで佇んでいた不思議な男との交流を描いた児童書です。
著者のデイヴィッド・アーモンドさんはイングランド出身で、2010年に国際的な児童文学賞である国際アンデルセン賞を受賞しています。
訳者の山田順子さんは福岡県出身、他の訳書にスティーヴン・キングさんの「スタンド・バイ・ミー―秋の目覚め」等があります。
本作品は2019年に「スケリグ」のタイトルで舞台化もされています。
あらすじ
学生のマイケルは新しい家に両親と一緒に引っ越してきました。最近、妹の赤ちゃんが生まれたばかりです。しかし、赤ちゃんは体が小さく、心臓がよくありません。新しい家の隣にはミナという少女が住んでいます。マイケルは学校にバスで通っています。転校するか両親に訊かれましたが、友達と離れたくなかったため、同じ学校に通うことにしました。
引っ越した直後の冬が終わりかけている日曜日の午後、マイケルは不思議な出会いを経験します。
家の庭にある今にも壊れそうなガレージ、それは山積みされた茶箱の後ろで、塵とほこりにまみれて横たわっていました。
そこには男がいました。黒いスーツ、蒼白い顔、ほこりまみれで蜘蛛の巣だらけ、髪や肩にはアオバエの死骸が散らばっている男です。
懐中電灯の光に照らされた男がマイケルに問いかけます、“なにが望みだ”と。何年も声帯を利用していないのか、その声はしわがれていました。マイケルの心臓が忙しく脈打ちます。
男はさらにマイケルに問いかけます、“なにが望みかと訊いたんだ”__
感想
素敵な児童文学書です。成長過程にある少年の家族や友人に対する実直で無垢な感情と行動に心が温かくなります。
不可思議な出会いはダークな雰囲気を漂わせつつも、読後の清涼感が素晴らしい作品です。少年少女が主人公であることで、いかに自身が先入観を持っているのかを感じられます。
原題とまったく異なる邦題ですが、これはとてもいい方向に流れた例だと思います。児童書だからケンコウコツは漢字にしないほうがいいと安直には思うのですが、何か意図があったのでしょうか。
過酷な状況下でも懸命に生きることに誠実な子供が主人公の作品は素敵な話が多く、本作品もお勧めできる作品でした。
「肩胛骨って、なんのためにあるんですか、先生?」
(P.50)
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