プシュケの涙(ぷしゅけのなみだ)
著者名:柴村仁(しばむら じん)
出版社:講談社(※初出は アスキー・メディアワークス)
発売日:2014/10(2009/1)
ジャンル:学園、ミステリー
「プシュケの涙」は夏休みの学校で発生した女子生徒の飛び降り事件、目撃者の男子生徒と、女子生徒と同じ美術部に所属する風変わりの男子生徒が事件の真相を追う様子を描いた小説です。
著者は柴村仁さんで、他の著書に本作品を含む「由良シリーズ」や、電撃ゲーム小説大賞金賞を受賞した「我が家のお稲荷さま。」があります。
本作品は電撃文庫、メディアワークス文庫、講談社文庫と様々なレーベルで刊行されている人気作品となっています。
あらすじ
暑さが厳しい7月の終わり、夏休みで人気がない校舎の一室、3年3組の教室には補習の授業を受ける8人の生徒と1人の教師がいました。1番後ろの窓側の席で補習を受けている生徒、榎戸川(えどがわ)はうだるような暑さのなか、開け放たれた窓から外の様子を眺めていました。
3階にある教室は眺めがよく、教師の念仏のような声や蝉の喚きが聞こえていました。そんな折、事件が発生します。
最初にギャアッという声を教室に響かせたのは、榎戸川の前の席で補習を受けていたクラスメイトの旭(あさひ)でした。
他の生徒と教師の注目を集める中、旭は窓を指差します。教師がそのただならぬ様子につられて窓の外の下を覗くと、仰向けに倒れる女子生徒がいました。
榎戸川と旭の2人はクラスメイトである吉野彼方(よしの かなた)が落ちていく様子を目撃していたのです__
8月の終わり、夏休みは継続中ですが9月初旬の文化祭準備のために、榎戸川が電車で登校しようとします。
駅のホームに向かう途中、榎戸川は突然、同じ制服を着た見知らぬ男子生徒の由良(ゆら)から声をかけられます。初対面にもかかわらず、由良は榎戸川に一緒に学校へ行こうと言います。
由良は性格や行動が常人離れしていることから周囲からは宇宙人と称されています。由良は頭がよく旧帝大の合格も余裕だと言われていますが、美術部に所属し、進路は近所の美大を志望しているようです。また、文化祭で有志が開催する「美男美女コンテスト」に毎回推薦されるほど端麗ですが、本人は出場を頑なに辞退しています。
その由良が榎戸川に声をかけてきた理由、それは吉野の飛び降り事件を調べるためでした。由良は確信していました。吉野が自殺なんてするはずはないと__
感想
限られた文章量の中で人物間の関連や特徴がわかりやすく描かれている点で読みやすく、構成に一ひねりある点で一気読みできた作品でした。
花とチョウチョにスポットが当たっている点も良かったです。自然界には青色少ないと言われている花から、羽化する青い翅のチョウチョ(レテノールモルフォ)へとモデルが変遷した部分には特別な意図を感じました。
ミステリー的な要素と、ある登場人物が演出のために不自然なほど不幸な状況に貶められている印象を受けた点が個人的にはあまり合いませんでした。
シリーズ化されているということですが、本作品がきれいに完結されていると感じたため、どんな話が次作以降で描かれているのかは気になります。
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