小説 ~ 家康、江戸を建てる ~




家康、江戸を建てる(いえやす、えどをたてる)
著者名:門井慶喜(かどい よしのぶ)
出版社:祥伝社
発売日:2016/2(2018/11)
ジャンル:時代





「家康、江戸を建てる」は、当時は湿地ばかりで窮乏な地域だった江戸を、徳川政権の礎としてどのようにして築き上げたか、その様子を描いた歴史時代小説です。

著者の門井慶喜さんは群馬県出身の作家で、他の著書に、2018年に直木賞を受賞した「銀河鉄道の父」や、「パラドックス実践 雄弁学園の教師たち」といった作品があります。

本作品は2016年の直木賞候補作品です。2019年のお正月にNHK BSで、佐々木蔵之介さんと柄本佑さんが主演でテレビドラマ化されています。



あらすじ

1590年(天正十八年)、小田原城を眼下に石垣山の山頂に二人の武将がいます。一人は豊臣秀吉、もう一人は徳川家康です。当時の日本一の大名と、次点の大名です。

小田原征伐で北条家も軍門下にする目前の秀吉は、家康にとある話を持ちかけます。それは、北条家の旧領の関東8ヶ国の二百四十石を家康に差し上げるというもの、そして代わりに駿河や三河、信濃といった現在所領している国を差し出せという内容でした。

家康の家臣たちは口を揃えて反対しました。家康の力を弱体化させるための、功に報いると見せかけた偽りの報償であることが明白だったためです。

しかし、当の家康はその国替えを受け入れる意向を示します。関東には未来(のぞみ)があると。家臣は殿が乱心していると確信していました。家康はそのとき49歳です。入部先に選んだ江戸城に初めて足を踏み入れたときには本人すら乱心したのかもしれないと思ったほどです。


そんな灰色の湿地帯が広がる江戸を大阪のようにしたいと家康は家臣たちに伝えます。その途方もない言葉に、家臣たちは泣き笑いのような顔を浮かべます。

そして、江戸の地ならしのために家康は一人の男、伊奈忠次(いな ただつぐ)に白羽の矢を立てます。何の武功も持たない伊奈に対して、家康は江戸の街を築く基礎づくりを命じます。

早速、北から何本もの川が流れ込んで泥地になっている江戸の地盤に対する築堤の造作に関して、家康は伊奈に問いかけます。

すると、伊奈は堤など無用だと答えます。根本的な解決のために、北の広大な原野に対処するのが先決だと答えます。そして、誰よりも雄大な意見を述べます。川そのものを曲げるのだと__



感想


日本の首都である東京の礎とも言える江戸に関して描いた小説です。歴史小説ですが、武将による乱や謀略、武家の矜持に焦点を当てたものではなく、当時は湿地帯で魅力の乏しかった江戸がどのように発展していったのか、その産業や経済のインフラを整備、建てていく様子を描いた作品です。

歴史に疎いため、どこまで史実と一致しているかはわかりませんが、大掛かりな街づくりに取り組む職人の気質、意地は時代関係なく楽しめる内容だと思います。江戸版の職業ドキュメンタリーです。

ビジネス書に近いところがある分、登場人物の印象が全体的に薄く感じられていた中で、秀忠の印象がよかったです。










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