小説 ~ アンドロイドは電気羊の夢を見るか? ~




アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(あんどろいどはでんきひつじのゆめをみるか)
原題:Do Androids Dream of Electric Sheep?
著者名:フィリップ・K・ディック(Philip Kindred Dick)
訳者:浅倉久志(あさくら ひさし)
出版社:早川書房
発売日:1969 (原題発表 1968)
ジャンル:SF





「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は、世界大戦後の死の灰で覆われた地球を舞台にしたSF小説です。妻と生活する賞金稼ぎの男性が、貴重な存在となったペットを購入するために、お尋ね者扱いとなっているアンドロイドを追いかける様子を描いたSF作品です。

著者のフィリップ・K・ディックさんはアメリカ出身で、他の著書に「高い城の男」や「流れよ我が涙、と警官は言った」といった多数の作品があります。「トータル・リコール」や「マイノリティ・リポート」といった映画の原作も多く、本作品も「ブレードランナー」のタイトルで映画化されています。

訳者の浅倉久志さんは大阪府出身で、本作品の他に、カート・ヴォネガットさんの「タイタンの妖女」や、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアさんの「輝くもの天より墜ち」等、数多くの翻訳を担当されています。



あらすじ

今となってはなぜ起こったのか、誰が勝利したのかさえも覚えていない最終世界大戦、それは人に選択を求めました。天国に行くか、植民惑星に行くか、地球に残るか、です。

放射性降下物が充満する地表、死の灰、最初はフクロウが消えていきました。次には小鳥でした。その頃には人類は異変に気づいていました。大戦が終結する頃には、生きた動物はとても貴重な存在になっていました。

太陽を仰ぎ見ることができなくなった人たちは異なる星への移住を迫られます。そこで、戦争兵器のひとつから人間型ロボットが作られました。異星環境下でも作業できる有機的アンドロイドです。国連法によって、すべての移民に無料でアンドロイドが一体貸与されることとなり、下僕のアンドロイドを連れて多くの人が移住して行きました。

しかし、何千何万との人たちは地球に残ることを選択しました。あまねく灰が与える影響は人類とて例外ではありません。威力こそ当初より衰えていますが、灰による汚染は日々蓄積されていきます。被爆防止のために外出時には鉛の股袋を着用しています。

そして、地球に残った人類は二種類に分類されることとなります。死の灰の影響を受けた人間を特殊者(スペシャル)と称し、影響を受けていない人間を適格者(レギュラー)としています。


サンフランシスコ警察に勤める職員、リック・デッカードは適格者です。高層集合住宅(コナプト)に妻のイーランと二人と暮らしています。その日の朝も妻と口論していました。リックはその理由を何となく察しています。

屋上のドーム牧場に移動したリック、そこには同じコナプトの住人であるビル・バーバーがいました。ビルは自身の飼育している馬が妊娠したとリックに伝えます。ビルが馬を二頭持つことになるのに、自分が一頭も持てないのは不平等だとリックは伝えます。リックは羊を飼っているじゃないかとビルに伝えます。

リックは羊に近づき、本物の羊毛の下にあった制御機構の隠しパネルをビルに見せました。リックが飼育している羊は電子羊でした。この世界には動物を飼わない人間を不道徳で同情心がないとみなす傾向にあります。まるで犯罪者のように。

リックは以前はグルーチョと名づけた本物の羊を飼育していました。義父が移住するさいに形見として残していった羊です。しかし、ある日、破傷風が原因でグルーチョは息をひきとってしまいました。

いろいろ思案した結果、リックは模造動物を手配することにしました。本物と同じような外見をしていて、本物と同じように時間や面倒を厭わずに世話をしています。しかし、どこか何かが違います。


リックの目下の目標は本物の生きた動物を飼育することです。しかし、公務員のリックにはそんなお金はありません。リックは、違法に地球に在中するアンドロイドを処分する賞金稼ぎの仕事をしているため、どこかの植民惑星からアンドロイドが5人程カリフォルニアに隠れ場所を求めやってくることを期待します。

すると、上司から、8体のアンドロイドが逃亡してきているとの連絡が入ります__



感想


お勧めのSF作品でよく目にする作品です。半世紀以上前の作品でありながら、世界大戦後の荒廃した地球の近未来を舞台としているため、古臭さは感じません。

また、海外の他のSF作品と比較してエンターテインメント性が高いと思います。小難しい理論が出たり、時系列をうやむやにしたり、後付のような伏線がでたりしません。独自の固有名詞こそ出現しますが、他人への共感、愛情、哀愁といった感情や、普通の人間とは何かといった根源的な部分をテーマにしているため、物語に入っていきやすいです。

いくら科学技術の発展に伴い情報処理能力が飛躍的に上昇したといっても、並列演算や機械学習の分野で人と機械の区別がつかなくなるというのはまだまだ先の未来の話だと改めて感じました。

他作品も含めて、アンドロイドやクローンに関する真贋のつけ方はいろいろありそうです。いつか論理的で感情に乏しい人間に対して、アンドロイドと誤解して殺害してしまいました、なんて事件も未来に発生するかもしれません。








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