汚れなき情事(けがれなきじょうじ)
原題:Cracks
配給:スタジオカナル
監督:ジョーダン・スコット(Jordan Scott)
脚本:ジョーダン・スコット、ベン・コート(Ben Court)、キャロライン・エルピー(Caroline Ip)
出演:エヴァ・グリーン(Eva Green)、ジュノー・テンプル(Juno Temple)、マリア・バルベルデ(María Valverde)
公開日: 2009/12
ジャンル:学園、ヒューマン
「汚れなき情事」は、イギリスの森や湖がある自然豊かな全寮制の女子学校を舞台に、カリスマ的人気教師とリーダー格をはじめとする生徒たち、そこに優秀な転校生が入り込むことで引き起こされた出来事を描いたノワール学園映画です。
監督と脚本を担当したのはイギリス出身のジョーダン・スコットさんです。映画「ブレードランナー」や「エイリアン」の監督として著名なリドリー・スコットさんの長女です。
主人公の教師役を、フランス出身で、「007 カジノ・ロワイヤル」、「ダーク・シャドウ」等のエヴァ・グリーンさんが演じています。リーダー格の生徒役を、イギリス出身で、「トランストリップ」等に出演されているジュノー・テンプルさんが、転校生役を、スペイン出身で、「メリッサ・P ~青い蕾~」等に出演されているマリア・バルベルデさんが演じています。
本作品はシーラ・ケーラーさんの同名小説を改作したものとなっています。
あらすじ
1934年、イングランドのスタンリー島、湖畔の近くにある校舎、そこには全寮制の寄宿女子学校「聖マチルダ学園」があります。
湖畔に浮かぶ小型の手漕ぎボートに教師と生徒がいます。教師(ミス・G/エヴァ・グリーン)は煙草を燻らせながらたそがれています。生徒(ダイ/ジュノー・テンプル)は教師から借りた本の感想を伝えています。その本は学校では禁止されているものです。二人は禁止なんて馬鹿げていると考えています。好奇心を持つのは大切だと。
ミス・Gは競泳のダイビングチームの指導者をしています。綺麗で生徒への理解も深いミス・Gは学校内で複数の生徒から羨望のまなざしを集めています。
ダイビングチームの生徒たちは、チームの一員の目印として、ウエストあたりに赤いリボンをつけています。
ダイはチームのリーダーです。上級生として時に下級生に厳しく接することもありますが、チームはダイを中心に行動します。
食事の時間、ミス・Gからスペインから転校生が来るとチームに伝えられます。転校生はカトリック教徒の良家の立派なお嬢さんということです。
食事後、チームは屋内でトランポリンを利用してダイビングの練習をしています。トランポリンは古く、施設内には暖房もないため、チームは決して恵まれた環境で練習をしているわけではありません。
しかし、ミス・Gは希望・大志こそが人生に大事だと、そのカリスマ性によって生徒を指導し、生徒からの信頼も厚いです。
そんなチームに、転校生としてフィアマ(マリア・バルベルデ)が加わります。フィアマは病気のため呼吸の補充具を肌身離さずに必要としていますが、外見は美しく、知性や教養もあり、また、ダイビングに関しても秀でていました。
しかし、フィアマにとってはその学園での生活は一時的なものであり、規律や協調性を重んじるリーダーのダイとはどこかそりが合いません。フィアマは孤立しそうになります。
ミス・Gは優秀で孤立しようとするフィアマを気にかけますが、それは一方では特別扱いするように周囲から捉えられます。実際にミス・Gはフィアマを特別視していました。
ミス・Gの伝える知識や体験談もフィアマにとっては退屈なものでした。それはミス・Gが生徒たちに秘密にしていることに起因します__
感想
寄宿学校という閉鎖空間を描いた作品です。閉鎖的ながらも完結していた空間に転校生が亀裂を与えます。
決して転校生が悪いことをしているわけではないのですが、井の中で暮らす蛙にとっては大海の存在を知ってしまったことが不幸だったのかもしれませんし、希望だったのかもしれませんし、そこが作品の妙だと思います。大海ではなく、湖に浮かぶボートの場面からはじまった部分も意味深に感じます。
主役となる三人がそれぞれ魅力的だった点もよかったです。エヴァ・グリーンさんは制服姿の登場人物が大半の本作品の中でそのファッションや煙草をふかす姿がとても魅力的です。マリア・バルベルデさんは優秀な様と確固たる意思に毅然とした態度が印象的です。そして、ジュノー・テンプルさんの作中での表情、特に揺らぎを感じる表現が良かったです。他の出演作品も観賞してみたいなと思いました。
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