小説 ~ ワルボロ ~




ワルボロ
著者名:ゲッツ板谷(げっつ いたや)
出版社:幻冬舎
発売日:2005/9(2007/7)
ジャンル:青春





「ワルボロ」は多くの不良がたむろする1970年代の東京立川を舞台に、見栄や暴力が飛び交う喧嘩生活を仲間と一緒に過ごすことに情熱を傾ける中学生を描いた青春不良小説です。

著者のゲッツ板谷さんは東京都出身の作家で、10代の頃には暴走族や反社会的勢力予備軍として活動していたこともあり、本作品は著者の自叙伝的な要素も含んだ小説です。他の著書に「ベトナム乱暴紀行」や本作品の続編となる「メタボロ」や「ズタボロ」があります。

本作品は2007年に隅田靖さん監督、松田翔太さん主演で映画化、花岡暁生さん作画で週刊ヤングジャンプで漫画化もされています。



あらすじ

1970年代後半の東京都立川市、2000年代こそ駅前には有名百貨店が立ち並び、モノレールも走り抜ける小ジャレた「街」ですが、当時は夕方6時以降ともなると、女性や子供が一人で歩く場所ではなく、駅前のロータリーで族車が走り、薬物をきめてる輩がふらつき、週末には競輪の集団が改札から押し寄せる「町」でした。

立川3中の板谷宏一(コーちゃん)は中2までは目立たない存在でした。とある呪縛に悩まされる母親の影響で小学校2年生の頃から塾に通い、勉強一筋で成績は目をみはるものがありました。

コーちゃんには幼馴染がいました。ヤッコと呼ばれる彼は小学生の頃はスポーツ万能でいつも笑顔を浮かべていました。しかし、中学生になってから不良になり、コーちゃんと疎遠になってしまいました。ヤッコは中1の2学期に別クラスの不良を校舎の3階から蹴り飛ばしたということで、校内でヤッコにたてつく生徒はいませんでした。

そして、コーちゃんには気になる異性がいました。同じクラスの山田規久子です。彼女は勉強、スポーツと達者で、さらに外見も美人です。ただし、山田は計算した上であえて地味な存在に徹し、勉強に集中するための環境に身をおいていました。立川という町を脱出するための助走期間として中学時代を過ごすことにしているようです。コーちゃんは山田のことが大好きです。

ある日、コーちゃんの人生を180度変えるビックバンが発生します。現国の授業中、斜め後ろの席のヤッコから紙クズを投げられ続けていたコーちゃんが何投目かに振り返ると、ちょうど右目に直撃してしまい、思わずコーちゃんはヤッコに対して暴言を吐いてしまいます。

ヤッコはすぐに鬼の形相になり立ち上がりコーちゃんに詰め寄ると、チョーパン(頭突き)をかまします。痛さとショックで泣きそうになるコーちゃんでしたが、隣の席にいる大好きな山田が見ているということを意識し、涙をせきとめたかと思うと、次にはコーちゃんがヤッコに対してチョーパンをかますという暴挙にでます。

そのままチョーパンのかましあいを続ける二人、コーちゃんが気づいたときにはヤッコが床の上で大量に出血しながら大の字になっていました。その日、コーちゃんの人生は変わりました。



その日を境にコーちゃんとヤッコは昔のように仲良くなりました。二人は3中の錦組という不良グループに属しています。錦組はヤッコを大将とする6人組の集団です。二人の他に、図体は大きいがびびりの小田嶋、組織の参謀的なキャーム、細くて小柄で父親と二人で暮らしているメギちゃん、呂律が独特なドッチンの六人で構成されています。

3中には錦組とは別の不良グループ、羽衣組があります。ヤブを大将として、高田とマサハルというメンバーを含め約30人ほどで構成されていて、錦組とよく対立しています。

そして、立川には1中から9中まであるのですが、もっとも荒れているのが2中であり、また、6中にはフィーバーと名乗る化け物みたいに強い奴がいると噂されています。

立川市の中での勢力争い、それはコーちゃんが選んだ避けられないワルくてボロくなる道でした__



感想


中学生不良の友情と暴力という青春とノワールのいい部分が楽しめる作品です。高校生が主人公の不良少年漫画の中学生小説版と考えるとわかりやすいと思います。

文庫版で500ページ近くあり、そこそこの文章量がありますが、登場人物のやんちゃな勢いに押されて勢いよく読破できました。若いからこそできる馬鹿騒ぎを思い出される作中の仲間とのやり取りも笑えました。

登場人物が多いにもかかわらず誰だっけ?とならなかった部分も印象的です。喧嘩の頻度と体への負担がいくら何でも盛りすぎじゃないかと思う部分と立川の印象が悪くなった部分(逆にどこか親近感がわくというか、よくなった感じもありますが)が気になりました。



通常、ガキが立てた誓いなど、
頭の中に滾々(こんこん)と湧いてくる水溶液でみるみる薄まっていくものである。

が、あの時のオフクロの残像は、
その水溶液を油のように弾き続けた。



(P.14)



 

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