小説 ~ どちらでもいい ~




どちらでもいい
原題:C’est égal
著者名:アゴタ・クリストフ(Agota Kristof)
訳者:堀茂樹(ほり しげき)
出版社:早川書房
発売日:2006/9 (2008/5)
ジャンル:ヒューマン





「どちらでもいい」は、虚無感、諦念、喪失といった感情や、社会風刺、社会不適合といった憐憫を描いたショートショートの作品集です。

著者のアゴタ・クリストフさんはハンガリー出身で、他の著書にデビュー作の「悪童日記」、その続編となる「ふたりの証拠」、「第三の嘘」等の作品があります。

訳者の堀茂樹さんは滋賀県出身で、1992年に上記の「悪童日記」と「ふたりの証拠」の訳者としてBABEL国際翻訳大賞新人賞を受賞されています。

本作品には表題作の他に、「斧」、「ある労働者の死」、「作家」、「郵便受け」、「田園」、「ホームディナー」等、計25編(文庫版は26編)の短編が収録されています。



あらすじ

主人がとても重大な事故にあったと呼ばれたドクター、2階の寝室に案内された彼が見たのは、ベッド横の絨毯の上にいる主人でした。頭には斧がめりこんでいます。

夫人が言うには、眠りこけたままベッドから落ちたということです。ちょうど斧の上に__

(「斧」より)



公務員の職から引退した男性、友達付き合いもなく、女性との付き合いも皆無だった彼、世間から身を退いて大作家となっている彼、しかし、誰も彼が偉大な小説を生み出していることを知りません。

それもそのはず、彼はまだ何も書いていないのですから__

(「作家」より)



感想


いかに人が孤独な存在で人生が何なのかを淡々とした文章で訴えてくるショートショート作品集です。

他者とは価値観が異なる、社会とは相容れない、登場人物と世界がいかに異なるか、明確な境界線を浮かび上がらせ、諦念や絶望が体を蝕んでいくような感覚を味わえます。

しかし、ネガティブな内容でありながら、不思議と読後の印象が悪いわけではないのは、作者の文章のおかげなのかもしれません。ショートショートで簡潔に読めるという特徴もあるかもしれません。

一方で、ショートショートであるために、単体として衝撃を受けるほどの作品はなかったため、長編作品も読んでみたいなと思います。










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