小説 ~ 神様ゲーム ~




神様ゲーム(かみさまげーむ)
著者名:麻耶雄嵩(まや ゆたか)
出版社:講談社
発売日:2005/7
ジャンル:サスペンス





「神様ゲーム」は近所の連続野良猫殺害事件を解決したい少年探偵団に属する小学生が、神様を自称する同級生との神様ゲームを始めたことから事件が進展していくミステリー作品です。

著者の麻耶雄嵩さんは三重県出身の作家で、他の著書に、2011年に日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を受賞した「隻眼の少女」や、2017年にテレビドラマ化された「貴族探偵」等があります。

本作品は講談社の子供向け推理小説レーベルとなる「講談社ミステリーランド」に属する作品です(しかし、子供に勧められるかと問われると微妙です)。



あらすじ

7月17日、芳雄(よしお)は家で10歳の誕生日を迎えました。刑事の父さんと華奢な母さんが見守るなか、芳雄はケーキの上にある火のついた10本のロウソクに向かって息を吹きかけます。

芳雄の誕生日をロウソクが祝っているように、次々とロウソクがその灯火を消していくなか、1番奥にあった赤いロウソクの火が1本だけ残りました。

1度にすべてのロウソクの火が消せなかった芳雄に“だらしないぞ”と笑いながら声をかける父さん、“そういえば去年も1本だけ残ってたわね”と困った表情の母さん、芳雄は去年だけではなく、その前の年もロウソクが1本だけ残っているのを覚えていました。ひょっとしたら、覚えていないだけで、その前も同じだったのではないかと芳雄は考えています。

その悔しく理不尽な出来事に芳雄は本当はまだ自分が10歳を迎えていないのではないかと考えてしまうほどです。それが運命なのかもしれないと。

芳雄が消沈していると、父さんが誕生日プレゼントをくれました。普段家を空けていることが多い父さんの用意するプレゼントが不安な芳雄でしたが、封を開けるとそこには彼が欲しかったダビレンジャーのロボが入っていました。ダビレンジャーは毎週テレビ放送している戦隊物の子供たちに人気の番組です。芳樹はロウソクが1本残ってしまったけど、とてもハッピーな気持ちになりました。

ケーキを食べ終えたころ、芳雄は父さんに連続野良猫殺害事件のことを尋ねます。芳雄の住む神降(かみふり)市では5月頃から市内の野良猫が何者かに残酷に殺されるという事件が発生していました。家では父さんの仕事に関する話はしないというルールがあるのですが、芳雄にとってこの事件に関しては例外でした。なぜなら、芳雄のクラスメイトである山添(やまぞえ)ミチルの可愛がっていた猫が4匹目の犠牲者だったからです。ミチルは3年前に東京から転校してきて、色白で笑ったときの八重歯が印象的な女の子で、芳雄が密かに想いを寄せている相手です。

父さんは別の事件を担当していましたが、芳雄の熱意に応えられるよう、同僚に頑張るよう伝えておくと約束してくれ、その日の誕生会は終わりました。


芳雄の学校生活は親友との行動と、ある団体との行動が大半を占めています。親友の岩淵英樹(いわぶち ひでき)は芳雄と同じダビレンジャーが好きな友達であり、とある出来事をきっかけに二人は親友の契りを交わしています。また、芳樹は浜田探偵団という浜田町に住んでいる生徒同士が集まって行動する団体にも参加しています。団員はリーダー格の孝志(たかし)、活発な性格の聡美(さとみ)、おとなしめで家が本屋を営んでいる俊也(としや)、そして芳雄とミチルです。英樹も団員になりたがっているのですが、浜田町に住んでいないため、孝志から加入を断られています。


ある日の掃除時間、芳雄は同じ班員である鈴木太郎(すずき たろう)と二人きりでトイレ掃除をすることになります。黙ってトイレ掃除を続けることがつまらないと思った芳雄は太郎に声をかけます。太郎は半月前に転校してきたばかりの生徒であり、無口で地味で目立たない存在です。

“どこから転校してきたんだい”と当たり障りのない会話を投げかけた芳雄でしたが、どうにも太郎の返答がどこかおかしいことに気づきます。太郎は自分のことを全知全能の神様と言っているのです。転校前の学校で流行っていた遊びなのかと思った芳雄は、太郎にいろいろな質問をぶつけます。そして、芳雄が自分に関することを尋ねたさい、太郎の口から、芳雄の父さんと母さんは芳雄の本当の両親ではないということを聞かされます__



感想


主人公の事件を解決しようとする探偵役が小学生、そして、その探偵をサポートするのが全知全能の少しいじわるな神様という作品です。

物語の語り部、主人公が小学生という点、文庫ページ数も200ページ程度という点から、とても読みやすい作品となっています。

また、読者に委ねられている展開があり、それがフェアかアンフェアかどちらに感じるかで作品の印象が変わると思います。毎年誕生日のローソクの火が1本残ってしまうといった不可思議な現象や、神降市といった物語の背景・設定を物語の序盤から明示している点で、私はフェアに感じられたため受け入れやすく、楽しめました。

解釈が様々にできる点もよかったです。私は主人公の推理が正しく、ある人が生き残ってしまったことこそが天誅なのかなというのが個人的に最も納得できます。

主人公の“もうひとりいるんだろ”に対する神様の回答“そうだよ”のやり取りさえなければ、主人公も天誅の対象となったのかとも思いました。それくらい残酷な結末と私は考えています。“ひとり”という言葉がなければ、広義の共犯者という理由で主人公を天誅の対象とする解釈も可能だと思っています。主人公の行動が違っていれば被害者は事件を避けることができたでしょうし、なにより神様はいじわるなのですから。






 

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