ボッコちゃん
著者名:星新一(ほし しんいち)
出版社:新潮社
発売日:1971/5
ジャンル:SF、ファンタジー、ヒューマン
「ボッコちゃん」は人間の滑稽さや世の無常さといった社会風刺とユーモアを、SFやファンタジー、寓話といった空想舞台で描いたショートショートの作品集です。
著者の星新一さんは東京都出身の作家で、日本最初のSF同人誌「宇宙塵」の創刊に参画、ショートショートという分野を生み出し、SF作家の第一人者とされています。
本作品集には、「世にも奇妙な物語」や「週刊ストーリーランド」のテレビ番組で原作となった作品も含まれています。
本作品には表題作の他に、「おーい でてこーい」、「月の光」、「約束」、「ゆきとどいた生活」、「妖精」、「なぞの青年」といった計50編のショートショートが収録されています。
あらすじ
北の国のとある湖、季節は冬、厚く氷がはっている所へエス氏がやって来ました。彼は休日に魚釣りを楽しむため、湖の氷に小さな丸い穴をあけて、糸をたらします。しかし、なかなか魚が釣れません。面白くないとエス氏がつぶやいていたとき、何かがかかった手ごたえを感じます。引っぱりあげてみると、古いツボのようなものが針にひっかかっていました。
ツボを調べようとフタを開けたエス氏、すると、ツボの中から黒っぽい煙が立ちのぼり、そこに悪魔が現れました。
久しぶりに起こされた悪魔は何をしようかと迷い、どんなことができるのかと尋ねたエス氏に対して、なんでもできる、何をやってみせようかとエス氏に答えます。
エス氏はしばらく考えたあと、お金をくれないかと要求します。すると悪魔は1枚の金貨をどこからともなく用意してエス氏に差し出しました。
エス氏はお礼を言った後、もっとお金をくれるよう悪魔に要求します__
(「悪魔」より)
感想
50編もの良質なショートショートが楽しめる作品です。1編が数ページであり、些細な隙間時間でも読書を楽しめます。印象的な作品も多いです。昔テレビで見たような物語が実は星新一さんの作品が原作だったりします。1971年と半世紀近く前の作品と思えないほど色褪せない作品が多いです。
なぜ時代を感じさせないのか、SFやファンタジー、寓話的な世界、そして、固有名詞を極力使用しない点が挙げられると思います。しかし、何より印象に残る点は社会背景とは関係のない人間の魅力、良い面でも悪い面でも人間を描いている部分だと感じました。
個人的には表題作の「ボッコちゃん」、「月の光」、「約束」あたりが特に好みでしたが、全体的におもしろい作品が多かったです。
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