映画 ~ 第9地区 ~




第9地区(だいきゅうちく)
原題:District 9
配給:トライスター・ピクチャーズ※ソニー・ピクチャーズ/MGM(ワーナー・ブラザース/ギャガ)
監督:ニール・ブロムカンプ(Neill Blomkamp)
脚本:ニール・ブロムカンプ、テリー・タッチェル(Terri Tatchell)
出演:シャールト・コプリー(Sharlto Copley)
公開日: 2009/8(2010/4)
ジャンル:SF




「第9地区」は遭難した大勢のエイリアンが南アフリカのヨハネスブルクで人類と共生することになった結果生じた、異種間の差別や人権、社会風刺や紛争を描いたSF映画です。

監督と脚本を担当したのは南アフリカ共和国出身のニール・ブロムカンプさんです。映画監督としてだけでなく、ドラマ「ダークエンジェル」のリードアニメーターや、ナイキのCM監督など、多方面で活躍されています。

カナダ出身のテリー・タッチェルさんも共同で脚本を担当しています。映画「チャッピー」でもニール・ブロムカンプさんとタッグを組んでいます。

主人公のエイリアン対策組織の社員役をシャールト・コプリーさんが演じています。「エリジウム」や「チャッピー」といったニール・ブロムカンプ監督の他作品にも出演されています。

本作品は2010年に、第82回アカデミー賞において作品賞をはじめとする計4部門にノミネートされました。



あらすじ


とあるドキュメント番組のワンシーン、どこかの会社のフロア内でインタビューに答える男性がいます。

彼の名前はヴィカス・ファン・デ・メルヴェ(シャールト・コプリー)、MNUのエイリアン課に勤める職員です。彼はエイリアン課の職務を説明し始めます。

1982年、宇宙船が突如としてヨハネスブルクの都市の真上に現れ、誰もが驚きました。

宇宙船の扉は閉ざされ誰も入れない状態でした。しかし、宇宙船が出現して3ヶ月、人類は船体に穴を開け侵入を試みました。

エイリアンとの接見は目前でした。世界中が注目するなか作業員が突入すると、そこには甲殻のような表皮を持つ、“エビ”に似た人型のエイリアンがたくさんいました。そして、エイリアンたちは病気と栄養失調で衰弱した状態でした。エイリアンはその容姿から“エビ”と人類から呼ばれます。

南アフリカ政府は対応を迫れます。政府は莫大な費用をかけ、膨大な数の“エビ”を特定の居住区に移住させました。宇宙船は動かず、“エビ”たちはもう帰れないだろうという判断です。

人類は“エビ”との居住区を明確に区分するようにしました。街には“エビ”の姿をかたどった侵入禁止の標識などが見られるようになります。

そして、その地区はたちまちスラム化してしまいました。その地区は“第9地区”と呼ばれ、同時に秘密の多い場所と言われるようになります。

基本的に人類は近寄らない第9地区でしたが、例外的に“エビ”と共生をしている人類がいました。ナイジェリアのギャング集団です。彼らは“エビ”の好物のキャットフードを法外な価値で取引したり、賭博場を開いたりしてそこでの生活を謳歌しています。

また、第9地区からは人間の武器や、“エビ”が持ってきたと思われる見たことのない兵器が発見されることもあり、人々の不安は徐々に高まっていきました。

遂には、一部の人類による“エビ”への排斥運動の機運が高まります。奴らを殺せと、奴らは消えろと、暴動も発生するようになります。

政府は第9地区の移設と治安強化の対応を迫られます。そこに白羽の矢が立ったのが多国籍企業のMNUでした。MNUは“エビ”の強制立ち退きを委託されます。具体的には約180万体にも及ぶ“エビ”たちをヨハネスブルクから200km近く離れた地域へ立ち退きさせるという内容でした。

“エビ”たちが相手だとしても、MNUは世界連合(UIO)の規定を遵守するようです。24時間前に立ち退きの文書通告書が必要だということでMNUは行動を開始します。

その責任者がヴィカスでした。彼の嫁はMNUの重役の娘です。ヴィカスはMNUが隠しているもうひとつの目的とともに第9地区へと出向きます。

傭兵軍隊を引き連れ陽気で楽観的なヴィカスでしたが、とある“エビ”の家宅捜査中の出来事により、自身の身に想像しがたい厄災が降りかかることとなります__



感想


エイリアンが地球に襲来したと思いきや、南アフリカを舞台に人類がエイリアンを迫害するという珍しい作品です。

主人公が属する組織の企業利権や、ナイジェリアのギャング、いかなる場合も規定を遵守する役所仕事、人種による差別や紛争と、様々な社会風刺を含んでいる一方で、SF感が満載の架空の武器、戦闘用ロボット、敵の敵は味方と、どこか少年漫画のような部分も含んでいて、楽しい作品だと思います。

都合よすぎと思うシーンも多々ありますが、スピーディな怒涛の展開のエンターテインメントを楽しめます。そして、それと並行して、主人公を中心としたアンチヒーローな人類の存在、平和と反対の方向を望んでしまう社会の存在といったものを視聴者に訴えかけてきます。軽いような重いような、絶妙なバランスを保つ新鮮な作品です。

クリストファーはあの後、どのような選択をとるのか。視聴者に委ねられたのだと思いますが、仮に続編があれば、その顛末を見届けたいなと思います。






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