切り裂き魔ゴーレム(きりさきまゴーレム)
原題:The Limehouse Golem
配給:ライオンズゲート(アットエンタテインメント)
監督:フアン・カルロス・メディナ(Juan Carlos Medina)
脚本:ジェーン・ゴールドマン(Jane Goldman)
出演:ビル・ナイ(Bill Nighy)、オリヴィア・クック(Olivia Cooke)
公開日:2017/9(2018/2)
ジャンル:サスペンス
「切り裂き魔ゴーレム」は、近世のロンドンで大衆の注目を浴びる連続殺人事件が発生し、ベテラン刑事の捜査と、別の事件で夫殺しの容疑をかけられた人気女優の証言によって事件の真相に迫っていくサスペンス映画です。
監督は「ペインレス」のアメリカ出身フアン・カルロス・メディナさんです。
脚本は「キック・アス」や「X-MEN」のイングランド出身であるジェーン・ゴールドマンさんです。
主人公のベテラン刑事を演じたのは「ラブ・アクチュアリー」のビル・ナイさんです。夫殺しの嫌疑を向けられた人気女優役を「レディ・プレイヤー1」のオリヴィア・クックさんが演じています。
ピーター・アクロイドさんが1994年に発表した同名小説を原作としています。
あらすじ
喧騒と拍手が混じる大衆演劇上、舞台は1880年のイギリス・ロンドン、とある演目が開始されます。リジーという名の女性役を演じているのはダン・リーノ(ダグラス・ブース)、その劇団の人気者です。ブロンドのカツラをかぶって女装をしているダン・リーノが涙を流しています。リジーには夫殺害の容疑がかけられています。しかし、世間の関心はライムハウスで発生している連続殺人事件でした__
大衆演劇の人気女優だったクリー夫人(リジー/オリヴィア・クック)、ある晩、彼女が夫の部屋に向かったところ、夫のジョン・クリー(サム・リード)がベッドで仰向けで死んでいるのを発見しました。
警察がクリー家にやって来ます。死因は毒物によるもの、遺書はないが書類をあらかじめ燃やしてすべて処分していることから自殺だろうと、警官がリジーに伝えます。加えて、警官がリジーの大ファンであることも伝えます。
そこへクリー家で女中として働いているアヴァリーン(マリア・バルベルデ)が、台所でこんなものを見つけたとやって来ます。それは毒の残留物がはいった容器でした。
さらに、寝酒はいつもアヴァリーンではなく、リジーが用意していたこと、昨晩は夫婦間の喧嘩が激しかったと、アヴァリーンはリジーが不利となる証言を重ねます。
その証言を受けて、警察はリジーに対して、ロンドン警視庁まで来てくださいと同行を求めます。
大衆演劇の人気者でみんなに愛されていたリジー、しかし、人々の関心は恐るべき「ライムハウスのゴーレム」に向かっていました。ゴーレムはリジーの逮捕前日にも犯行を重ねていたのです。ロンドンは彼の話題で持ちきりとなります。
移動中の警察の馬車、二人の男性がゴーレム事件に関する話をしています。男の一人はロバーツ警視正(ピーター・サリバン)、もともとゴーレム事件を担当していたようですが、手に負えなくなったため、誰かに事件を引き継がせようとして責任を放棄する節があります。そして、その事件を任されようとしているのが、場所のもう一人の男性、キルデア警部補(ビル・ナイ)です。
二人は馬車の中で事件の詳細を確認しています。被害者は五人、店を経営しているジェラード夫妻とその二人の子供とメイドです。
現場はラトクリフ街道の29番地かとキルデアが尋ねます。そこは、かつてジョン・ウィリアムズの殺人現場だった場所です。ジョン・ウィリアムズは70年前の1811年におこなわれたイギリスで有名な連続殺人です。
キルデアが現場に到着し、ロバーツはそのまま去っていきます。現場周辺から現場まで野次馬がいて無茶苦茶な状態です。殺害現場の状況を確認しようとするキルデア、同行している警察がこんなにもひどいのは初めてだと言います。
殺害現場の壁には文章が記載されていました。“傍観者であれ―― 加害者と同等の血を流させることになる”、キルデアは一緒にいた警察官にラクタンティウスの言葉だと説明します。悪事を防げぬものは犯人と同罪だと、犯人の残したメッセージとキルデアは推測します。
クリー殺害事件に若い警官(ダニエル・メイズ)がキルデアを補佐することになります。その若い警官はライムハウスに詳しいということで抜擢されました。また、若い警官はキルデアが優秀なことも知っていました。キルデアは結婚をしていないため、男好きなのではないかという噂がありますが、その噂がなければ、キルデアはロバーツより出世していたという意見もあります。
二人は警察の一室で事件の手がかりを捜査しています。ゴーレムが事件を起こしている道理を探しているとキルデアは主張します。最初の被害者二人は娼婦でした。被害者に共通点はないが、何か意味があるはずだと、犯人の視点で考えようとします。
若い警官はキルデアにこれまで軽犯罪課を担当していて、今回の事件を担当することになったことに関して尋ねます。キルデアは、今回のはスケープゴートとして担当しただけで、事件が終わったら元の軽犯罪課に戻されると、署はロバーツにリスクを負わせない方針であると説明します。
それを話しているうちに、キルデアは、壁に記載されていた文章の傍観者とは、警察ではなく民衆だと気づき、図書館まで散歩しないかと若い刑事を誘います。
図書館に向かう目的は、民衆を対象としている同様の指摘をトマス・ド・クインシーが著書のなかでしているとキルデアは知っていたからです。キルデアは20年前に著者が亡くなっているその著書「芸術としての殺人について」の貸出記録を確認するためでした。
図書室にあった著書を確認すると、そこには落書きが書かれていました。“娼婦を殺してやる”、“ゴーレム”、“迷宮”、“1880年9月9日”、“ナイフで彼女を切り裂いた”、“1880年9月23日”、等、犯人が書いたと思われる特徴的な落書きを発見します。
貸出記録を問い合わせたキルデアでしたが、その著書は持ち出し禁止の読書室の著書のため、貸出記録はないということでした。
しかし、読書室での閲覧者として、4人の男性が記録に残っていました。
人気舞台役者のダン・リーノ、哲学者のカール・マルクス、、作家のジョージ・ギッシング、そしてすでに死んでいる劇作家のジョン・クリーです__
感想
19世紀後半のロンドン、大衆の興味を惹きつける連続殺人事件を扱ったサスペンス作品です。
近世の衣装や美術、不穏な印象を与えるレトロな映像、大衆演劇という華やかな舞台に立つ登場人物たち、雰囲気も楽しめる作品です。
当時の社会的風習や文化を感じられる一方で、男女間の痴情のもつれ、パワハラ、セクハラ、そして、バイトテロなど些細な小事と思えるほどの悪質な承認欲求と、時代関係なく人間を容赦なく描写している点も好きでした。
犯人探しのサスペンスを楽しむというより、作中で大衆が劇中劇を楽しんでいるように、一癖も二癖もある登場人物たちが織り成す物語を観劇している気分で見ると楽しめると思いました。
なお、ゴーレム要素などまったくないように思われます。そして、邦題よりも原題のほうが好きです。
またの登場!
Here we again!
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