映画 ~ ガチ★星 ~




ガチ★星(がちぼし)
配給:マグネタイズ
監督:江口カン(えぐち かん)
脚本:金沢知樹(かなざわ ともき)
出演:安部賢一、福山翔大
公開日:2018/4
ジャンル:ヒューマン






「ガチ★星」は、プロ野球の職を失い、妻と息子が離れ、自堕落な生活を送る中年男性、彼が偶然をきっかけに競輪選手を目指す様子を描いたヒューマンドラマです。

監督は福岡県出身で、「めんたいぴりり」や「ザ・ファブル」も手がけた江口カンさんです。CMディレクターでもあり、カンヌ国際広告祭で3年連続の受賞を果たした実績もあります。

脚本は長崎県出身の金沢知樹さんです。フジテレビの恋愛バラエティ番組「あいのり」に出演されたり、「笑う犬の冒険」で構成作家をされたり、数々の舞台脚本を手がけたり、多岐にわたり活躍されています。

主演を務めるのは安部賢一さんです。「アンダー・ユア・ベッド」等、数多くの作品に出演されています。

主人公と競輪学校の同期となる期待の若手役を、「JK☆ROCK」や「翔んで埼玉」に出演されている福山翔大さんが演じています。

他にも、博多華丸さんや、モロ師岡さんといった個性的な俳優陣が出演されています。

本作品はテレビ西日本さんが制作したローカルドラマを映画用に再編し、上演されたものです。



あらすじ


季節は春、場所は日本競輪学校、コーチ(矢山周作/西原誠吾)の監督下、上半身裸でエアロバイクを必至に漕ぐ四十人程の生徒たちがいます。

“濱島!”とコーチが一人の男の前で名前を呼びかけます。そこには中年の生徒(濱島浩司/安部賢一)がいました。濱島は息も絶え絶えでコーチの呼びかけに応えることができません。

しかし、コーチは、“しんどければもがけ”と喝を入れながら、濱島の頭を小突きます。濱島は必至に自転車を漕ぎ続けます。

濱島の年齢はコーチよりも10歳上です。体力の限界に達した濱島は、その場で嘔吐してしまいます。


周囲の生徒と年齢が離れている濱島は、食堂でも独りです。部屋に戻ると同期の二人が騒いでいます。“うるさい”と部屋から追い出す濱島、追い出された二人は“おっさん”と陰口をたたいています。

同室の生徒の上杉(船崎良)は濱島とはそれほど壁がないようです。上杉は筆記試験のために机に向かって勉強中です。

濱島は上杉に対して“努力だけが結果に結びつくと”と以前に聞いた言葉を伝えます。



8年前、ソフトバンクホークス、ベンチ裏で煙草を燻らせている濱島、和田に代わって、ピッチャー濱島のアナウンスが球場内に流れます。


球場の駐車場、左ハンドルの車に乗り込む濱島、エンジンをかけると同時に、また濱島が打たれたとラジオ放送が流れてきます。

ラジオを消すと、球団職員が車のドアをノックしているのに気づきます。球団職員は話したいことがあると濱島の車に乗り込みます。


濱島の自宅、冷蔵庫を開けて、缶ビールを取り出す濱島、近くには、自分から辞めるとか馬鹿じゃないかと彼を問い詰める濱島の妻(濱島弥生/林田麻里)がいます。煙草を吸おうとする濱島、弥生はそれを取り上げます。

妻の行為に我慢ができなくなった濱島、お互いに険悪な状態になります。息子の康太(木村聖哉)はその様子を不安そうに見守っています。

濱島は仕事をとってくると言って出て行きます。しかし、向かった先はキャバクラでした。

キャバクラの帰り道の繁華街、濱島は、酒ばっか飲んでないで練習しろと通行人に絡まれます。一時は我慢した濱島ですが、反対方向に歩いていく通行人の背中を蹴り上げようと突っ込んでいきます。

警察沙汰となり駐在所にいる濱島、通行人は警察官に帰らされ、濱島は書類に署名しろ指示されます。ついでに、しれっとサインも要求されます。

心配した弥生が駐在所に駆けつけます。しかし、すぐに所内で夫婦喧嘩を始めてしまいます。警察官が間に入って何とか二人を止めようとする有様です。



ある日の日本競輪学校の朝練の一幕、誰かのいたずらによって目覚まし時計が動かず、集合時間に遅刻した濱島、コーチが連帯責任として腕立て100回と生徒たちに指示します。

そんなしごきに意味があるのかとコーチに進言する濱島、するとコーチは腕立て300回に変更だと、さらに内容をきつくします。

腕立てを終えた濱島たち、コース上には同期の生徒たちがトレーニングしています。その中の一人に濱島は注目します。それは白キャップであるにもかかわらず、別格の存在感を放つ久松(福山翔大)という生徒でした。(※競輪学校では、入学直後の試走会のタイムで帽子によるグループ分けが行われます。白キャップは最下位グループであり、濱島も白キャップです)

上杉からは、久松も濱島と同郷となる北九州出身だと聞かされ、濱島は彼に注目するようになります。

一方で、濱島は絡んできた同室の二人を呼び出して、恫喝します。(恐らく、目覚まし時計に細工したのはこの二人だろうと濱島も考えたと思われます)

しかし、あるとき、自室に戻るとコーチがいて、恫喝した件で謹慎室に呼び出され、次同じことをしたら退学だと注意され、濱島の居場所はどんどん狭くなっていきます。



1年前、康太を連れて弥生が離れた結果、濱島は実家で母親に金を無心しながら、居酒屋でバイトし、アルコールやパチンコをして暮らす自堕落な生活を続けていました。

離れて暮らしてはいますが、もうすぐ康太の誕生日です__



感想


過去の栄光からの失墜、そして自堕落に慣れてしまった中年男性が競輪選手としての再起をかける話です。

元プロ野球選手としてのプライドはあるが、自分より一回り以上齢の離れた若者に嘲笑され、練習でも劣る現状に苛立つ様子、そして、私生活でのクズな言動が執拗に描かれています。

再起をかける話ではあるのですが、そんなに簡単に誰もが頑張れるわけではない、クズな部分はなかなか変えられないという部分がこの作品をおもしろくしていると思います。

この「ダメさ」っぷりに関しては、監督のインタビュー記事でおもしろい話もあります。(⇒リアルサウンドさんの記事より)

後半は展開は速すぎる気もしますが、もともと主人公がアスリートであること、競輪には50代の現役選手が珍しくないことを考慮すれば、レース面は納得できる内容だと思います。しかし、お金はどうしていたのでしょうか。性格、職業、周囲の人間と、生活に関する重要な部分を丁寧に描いていただけに、その点だけ違和感を抱きました。






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