彼女が死んだ夜(かのじょがしんだよる)
著者名:西澤保彦(にしざわ やすひこ)
出版社:角川書店
発売日:1996/8 (2000/5)
ジャンル:サスペンス
「彼女が死んだ夜」は箱入り娘が遭遇した死体遺棄事件の解決に挑む大学生4人組を描いた青春サスペンス小説です。
著者の西澤保彦さんは高知県出身の作家で、SF要素を含んだミステリー作品をはじめとして多くの著作があります。本作品は著者の代表的な推理小説シリーズの一つである「タック&タカチシリーズ(匠千暁シリーズ)」の作品であり、時系列上は最初の作品となります。
あらすじ
四国の安槻市、地元の国立大学の安槻大学のメンバーによる壮行会が開催されています。参加メンバーは二回生の五人、匠千暁(たくみ ちあき/タック)、高瀬千帆(たかせ ちほ/タカチ)、浜口美緒(はまぐち みお/ハコちゃん)、岩田雅文(いわた まさふみ/ガンタ)、羽迫由紀子(はさこ ゆきこ/ウサコ)、そして三回生の宮下(みやした)さん、そして何度も休学や留年を繰り返している先輩、辺見祐輔(へんみ ゆうすけ/ボアン先輩)です。主役であるハコちゃんが夏休みを利用してアメリカに留学するとのことで急遽、開催された会です。ハコちゃんは翌日の七月十六日から日本を発ち、八月末までフロリダで過ごす予定です。レイチェルという春まで大学に在籍していた短期留学生のもとにホームステイします。ハコちゃんはとてもテンションが高いです。なぜならその留学を勝ち取るために相応の苦労をかけたためです。
ハコちゃんはその愛称のとおり、前時代的な箱入り娘です。課せられた門限は午後6時、共に教鞭を振るう両親の一人娘とあって、束縛と監視の下に日々を過ごしていました。そんな彼女が勝ち取った留学を祝う会、急遽親戚に不幸があったとういうことで、ハコちゃんの両親がその日不在だったこともあり、門限を気にせずハコちゃんも出席できました。
そんなハコちゃんの初めての夜遊び、普段は見せないテンションの彼女でしたが、午後十時半過ぎ、明日の朝が早いということで、彼女は帰宅します。
午後十一時を少し回った頃、ハコちゃんは家に帰宅しますが、即座に胸騒ぎを覚えます。アルコールがいい感じに脳にも回っているにもかかわらず抱いた違和感、彼女は今日、出かける際に戸締りをしただろうか、取り返しのつかないことをしでかしたのではないだろうか、そんな思いがよぎります。
リビング兼ダイニングに移動したハコちゃん、悪い予感が現実のものとなっています。目に飛び込んできたのは宙を舞うカーテンと大きく開いていたガラス戸でした。さらに、続けざまに彼女の目に驚くべきものが映ります。ソファの傍ら、彼女の旅行用のトランクの近くに見たこともない女が倒れていたのです__
感想
地方都市のお酒好きな大学生がひょんなことから仲間と事件を解決していく作品です。シリーズもので時系列上はこの作品が1番最初の作品ということで、他の作品が未読でもまったく問題ありませんでした。
いい意味で大学生の緩いノリや軽いやり取りで展開していく話は軽快に読み進められます。推理小説であると同時に、青春小説の要素も楽しめます。
ただし、ギミックは少し突飛過ぎ、強引過ぎる気がしました。エピローグのせいで何でもあり、都合良すぎの印象が強調されてしまい、それまでの余韻を吹き飛ばしているように思います。
また、話の展開上、死体遺棄に協力することになるのは構わないのですが、大学生の軽いノリでの飲酒運転にはどうも嫌悪感を抱いてしまいます。お酒の力で突拍子もない発想から事件解決の糸口を掴むという点はおもしろいのですが、もったいない印象です。
気にすること、ないですよ。
正論を述べる人は、洒落の判らない面白くない人間だと疎まれがちだけど、
誰かがやらなくちゃいけない役目なんだから
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