映画 ~サカサマのパテマ ~




サカサマのパテマ
配給:アスミック・エース
監督:吉浦康裕(よしうら やすひろ)
脚本:吉浦康裕
出演(声優):藤井ゆきよ、岡本信彦
公開日:2013/11
ジャンル:SF、ファンタジー





「サカサマのパテマ」は異なる重力が作用する世界でそれぞれ暮らしている男子学生と女子探検家のSFファンタジーアニメ映画です。空の見えない地下のような居住区域で、集落の長の一人娘として暮らしていた探険家の少女、彼女が禁止区域と呼ばれる区域まで足を踏み入れたことで、重力が反対に作用する世界の住人と出会い、はじまる物語です。

監督・脚本・原作は北海道の生まれ、福岡県出身で、「イヴの時間」の作品も手がけた吉浦康裕さんです。

主人公のパテマ役を、「アイドルマスター ミリオンライブ!」の所恵美や、「君の膵臓をたべたい」で恭子を務めた藤井ゆきよ さんが演じています。

ヒーローのエイジ役を、「ワールドトリガー」の嵐山准や、「暗殺教室」の赤羽業を務めた岡本信彦さんが演じています。

他にも、パテマの良き相棒役に大畑伸太郎さん、エイジのクラスメイト役に内田真礼さんが出演されています。



あらすじ


画面にはカメラを通して見える映像、右上には「67.07.23 12:31:15」、16、17……とカウントアップされていく時間、遠くには山々が、眼下には街が広がっています。ラテン語のような音声が流れ、映像が途切れます__


薄闇の視界に見える一人の男(イザムラ)、“我々とお前は違う存在だ”、“なぜあんなことを、目的は?”としゃべるイザムラ、そして言い放ちます、<罪人の末裔>と、視界はそこで途切れます__


ガスマスクをつけ、手に懐中電灯を持って探検するパテマ、彼女は地底人の長を務める、好奇心旺盛な女の子です。

この世界にはイザムラが統治するアイガという国の世界と、パテマが住む地底世界の二つの世界が存在しています。

地底の危険区域と呼ばれる場所を探検するパテマ、たどり着いたのは天井が高く、底が見えない円柱型の、途切れたフェンス橋がかかっている大きな部屋でした。

そこで目にした光の粒子がたくさん舞う幻想的な風景にパテマは感動します。あたりを見渡していると、遠くに梯子があるのを発見しました。その日の探検に満足したパテマは来た道を帰ります。

他の住人たちは下の階層にある保管庫でいろいろ見つけたようです、真空パック、新しい種、パテマはそれを聞いて、来期はプラントを増やせそうだとみんなに伝えます。

パテマはその足で、長代理であるジィのもとに向かいます。

パテマが自分の部屋に帰るとジィと男の子(ポルタ)が部屋にいました。勝手に女の子の部屋に入ったことをパテマが注意すると、逆に危険区域に行ったことを注意されます。

パテマはもっといろんなことを知りたいと主張します、それは長のご息女の言葉としてふさわしくないとジィは反論します。ラゴスならそんなこと言わなかったとパテマは食ってかかります。

二人の険悪なやり取りにいたたまれなくなったポルタが、危険区域はコウモリ人間の化け物が出るからパテマのことが心配なんだと場をとりなします。

二人はパテマの部屋から出て行きます。帰りにジィが独り言のようにポルタに向かって、連絡が途絶えて何年たつ、ラゴスはどこかでもうのたれ死んでいるだろうと言います。

ラゴスとはパテマが憧れている冒険家です。パテマは部屋でベッドに仰向けになりながら、ラゴスのことを思い出します。

パテマの部屋を訪ねて来たラゴス、パテマはずっと一緒にいようよと伝えますが、ラゴスは、こことは違う世界を知りたい、そんな世界と分かり合いたいと言います。

パテマのご機嫌をとるために、ラゴスはプレゼントだと、赤い砂の砂時計のキーホルダーをパテマに渡します。ただ、パテマは似たものをたくさんもらっているため、それほど機嫌が直りません。

そこで、ラゴスはとっておきのプレゼントをパテマに渡します。これが世界だよ、とパテマが渡されたのは1枚の外の世界の写真でした。


昔の思い出に浸ったパテマは、充分待ったよね、と呟きます。



一方のアイガの国の一室、たくさんの人がいて、何かの設計図にみなが注目しています。イザムラは中心で不適な笑みをこぼしています。その設計図には「SAKASAMA BEING REPORT」と書いてあります。


アイガの国のとある夜、侵入禁止のフェンスが立つ芝生の丘で、一人の青年、エイジが仰向けになっています。


地底の世界ではパテマがまた危険区域へ探検に出かけています。こないだ見つけた天井が高く、床の底が見えない円柱形の大部屋まで行き、梯子に近づき、1度、深呼吸をします。

しかし、周囲から物音が聞こえてきます。あたりを警戒するパテマ、1度帰ろうかなと、来た道を引き返そうとします。すると、パテマの目に、赤い目のコウモリのような姿の人間が現れます。

コウモリ人間から二つの足が伸びているのですが、それは床ではなく、天井と接しています。パテマは襲撃されて、フェンスの橋の途切れた際まで追い込まれます。

絶体絶命のパテマでしたが、なぜかコウモリ人間はそれ以上追って来ず、そのまま退散していきました。

ピンチを脱して気を抜くパテマ、すると、もたれかかった手すりが外れて、その勢いのままパテマは奈落の底に落ちていってしまいます__



多くの人が見守る中、空へと飛び上がる黄色い物体、その物体には人が一人乗っていて、手を振っています、それはエイジの記憶にある思い出です。

思い出に浸っていたエイジでしたが、フェンスから物音がしたのに気づきます。エイジがフェンスのほうに注目すると、マスクが引っかかっています。怪訝に思うエイジ、すると突然、フェンスの向こう側に、上下逆さまの格好をした女の子、パテマが現れます。

パテマとエイジはお互いに目を見開き、驚きます__



感想


重力が異なる二つの世界というSFファンタジーとボーイ・ミーツ・ガールのロマンスをアニメで描いた気軽に楽しめる作品です。

上下逆さまの登場人物が共存する空想世界、アニメだからこそ表現できる設定と映像が魅力的です(「アップサイドダウン 重力の恋人」のタイトルの実写映画もあるのですが……)。

個人的に特に気になったのが2点あります。

まず1点目は、大掛かりなプラネタリウム的な謎の装置の存在です。空を眺めることがアイガ国にとって望ましくないことというのであれば、どうしてあのような仕組みにしているのか理解できません。

2点目は日常生活が見えなさ過ぎたことです。水や空気とかどうなっているのでしょうか、川や海はどうなっているのでしょうか、日常生活が見えないために、ボーイ・ミーツ・ガールの魅力が薄くなっていると感じました。


おもしろい世界観に加えて、価値観の異なる人同士の対立、和解、共存といった社会性もある一方で、登場人物や設定に消化不良が残る、何とも評価が難しい作品です。

お前 結構 お姫様だな



コメント