浄土(じょうど)
著者名:町田康(まちだ こう)
出版社:講談社
発売日:2005/6(2008/6)
ジャンル:ヒューマン
「浄土」は、奇抜な登場人物、奇抜な世界で織り成される人間模様を、独特の文体や構成で描いた短編集です。
著者の町田康さんは大阪府出身で、作家だけでなくミュージシャンや俳優としても活躍されています。2000年に芥川賞を受賞した「きれぎれ」や、2018年に映画化された「パンク侍、斬られて候」といった作品の著者です。
本作品は、「犬死」、「どぶさらえ」、「あぱぱ踊り」、「本音街」、「ギャオスの話」、「一言主の神」、「自分の群像」の7編から成る短編集です。
あらすじ
ここ1年で対人関係のトラブルが頻発するようになった小説家の男がいます。
深い仲でもない男からは、承知できない仕事を持ちかけられ、断ると方々で恩知らずと言いふらされたり、知らない女からは、まるで知り合いであるかのように勝手にインタビューの場をセッティングされ、関係者に謝罪するはめになったり、挙句には、家の勝手口のドアを大工が逆に取り付け、盗人に家財を盗まれたりと、散々です。
そんな小説家のもとに、文庫のゲラを持った編集者の豚田笑子がやってきます。近頃ろくなことがないと零していた小説家に対して、彼女は神秘的な能力を持つというジョワンナ先生を紹介します。
ジョワンナ先生は、相手の顔を見たり、生年月日や名前の書かれた紙を見るだけで、その人の現在過去未来に関する像が見え、具体的なアドバイスをしてくれるとのことです。豚田笑子も、会うや否や仕事内容や家庭環境、悩みを言い当て、どのように対応すべきか示唆したということです。
内心では即座にジョワンナ先生に会いにいきたい小説家でしたが、論理的で頭脳明晰な男に見せたい、対外的にはそのような迷信話に飛びつかない男でいたい、そんな虚栄心を持っていたため、悩んでいる振りをします。
すると豚田笑子は取り付く間もなく帰ってしまいました。
以降、小説家はジョワンナ先生のことが頭から離れなくなってしまいます__
(「犬死」より)
感想
他の作家とは一線を成す衝撃的(笑劇的)な作品の印象を受けました。
とても個性的だけどどこか共感できる登場人物、一瞬目を疑ってしまうが印象に残る名前や複合語といった言葉、そして、予想のできるはずのない展開、どれか一つでも欠けていたら意味不明な小説だけで終わってしまうのですが、それらがすべて重なることで独創的な楽しい作品となっています。
大衆作品と呼ぶには独特すぎ、一方で純文学と堅苦しく嵌めることもできません。短編だからこそおもしろく読み続けられたと思う一方で、物語という面では深く刻まれる印象ではなかったため、長編作品も読んでみたいと思います。
個人的に1番気に入っているのは「ギャオスの話」の怪獣話です。
「ビバ! カッパ!」
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