映画 ~ 未来世紀ブラジル ~




未来世紀ブラジル(みらいせいきぶらじる)
原題:Brazil
英題:In the Fade
配給:20世紀フォックス/ユニバーサル・ピクチャーズ
監督:テリー・ギリアム(Terry Gilliam)
脚本:テリー・ギリアム、チャールズ・マッケオン(Charles McKeown)、トム・ストッパード(Tom Stoppard)
出演:ジョナサン・プライス(Jonathan Pryce)、キム・グライスト(Kimberley Bret Greist)、ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)
公開日:1985/2(1986/10)
ジャンル:SF、サスペンス




「未来世紀ブラジル」は、情報統制とそれに反対する爆弾テロの脅威下にある20世紀のどこかの社会、ある冤罪事件と夢で見た理想の女性を追いかける情報省に勤める男を描いたSFサスペンス映画です。

監督は「フィッシャー・キング」や「ブラザーズ・グリム」のテリー・ギリアムさんです。

脚本は三名による共同脚本です。監督も務めたテリー・ギリアムさん、「バロン」でもテリー・ギリアムさんと共同脚本を務めた俳優でもあるチャールズ・マッケオンさん、そして、「恋に落ちたシェイクスピア」のトム・ストッパードさんです。

主人公の情報局に勤める役人役を演じたのは「キャリントン」や「エビータ」のジョナサン・プライスさんです。主人公の夢に出てくる女性とそっくりなヒロイン役を「刑事グラハム/凍りついた欲望ナショナル・トレジャー」のキム・グライストさん、そして、主人公と関わることになる非合法の修理屋役を「ゴッドファーザー PART II」や「レイジング・ブル」のロバート・デ・ニーロさんが務めています。



あらすじ

20世紀のどこかの話、午後8時49分、ブラウン管のテレビに映っているのは「セントラル・サービス」という修理業者のコマーシャル、街のショーウィンドウに置いてある複数のテレビ、突然、爆発が起こり、それらが吹っ飛びます。

他のテレビでは、情報省のヘルプマン次官(ピーター・ヴォーン)の爆弾テロの増加に関するインタビューが流れています。

情報組織が巨大化しすぎて、それにかかる費用がGNPの7%まで押し上げていることがテロの原因ではないかとインタビューアは指摘します。ヘルプマン次官はそれに対して、情報剥奪の手数料制度を設けたから問題ないと答弁しています。

その放送が流れている一室、白衣を着て仕事をしている情報省記録局の役人、サム・ラウリー(ジョナサン・プライス)、部屋に侵入した蝿を叩き落そうとしています。叩き落された蝿はタイプライターに落ちていきました。それが原因で、とある書類でタイプミスが発生します。


クリスマスツリーが飾られ、母親が優しく娘に絵本を読み聞かせている幸せそうな4人家族がいます。階上には別の世帯の女性、ジル(キム・グライスト)が暮らしています。

ジルはテレビを見ながらバスタブでくつろいでいましたが、突然、謎の訪問者が来たようです。

すると突然、階下の家族に複数の侵入者が現れます。窓ガラスを破ったり、戸を壊したり、果ては天井に穴を開けたりするなど、その手口は強引です。

進入したのは情報省剥奪局の人間たちで、その家族の主人であるバトルをテロ容疑者として拘束していきます。

呆然とする残された家族たち、ジルが穴から階下の家族を心配しています。


記録局の一室、局長のカーツマン(イアン・ホルム)がサムの行方を職員に尋ねています。

その頃、サムは寝坊して夢を見ていました。翼を広げて空を飛んでいるサム、向かっている先はサムの名を呼ぶ声、その先には神秘的な美女がいます。サムは美女のそばに行き、空中でキスをします。

そこで、局長からの電話で起こされます。時刻はすでに11時をまわっており、目覚まし時計がいつの間にか壊れているようです。

急いで支度をするサム、この世界では、自動でバスにお湯がはられ、トーストも準備されます。


“真実は自由をもたらす”との大きな彫刻が中央にそびえ立つ記録局、サムが入場しようとすると、古くからの友人であるジャック(マイケル・ペイリン)とすれ違い、雑談を交わします。サムは何か不穏なものを感じているようです。

カーツマン局長がサムを呼び出した理由は、バトルの誤認逮捕の件でした。サムがコンピューターを調べると、“バ”トルと“タ”トルをタイプミスしていることがわかり、サムは後始末をつけることにします。

カーツマン局長はサムを頼りにしており、サムが出世したら困ると彼に伝えます。出世欲のないサムは心配不要だと答えますが、局長はサムに対して、昇進したと伝え、サムは慌てて持っていたコーヒーをこぼしてしまいます。

母親(キャサリン・ヘルモンド)の差し金だと判断したサムは、文句を言うため母親のもとを訪ねます。母は怪しい施術で顔の皺をとるというマッサージの最中でした。

出世の件で剥奪局へと向かおうとするサム、すると、そこで隣人であるバトルの家族のために、抗議に来ていたジルを見かけます。

ジルの容姿はサムが夢で見る美女に瓜二つだったため、サムは慌てて彼女を追いかけようとします__



感想


滑稽な主人公の夢、荒唐無稽な世界観と、序盤は観賞していて不安を覚えてしまうレベルです。しかし、その滑稽さと荒唐無稽さこそが、風刺・皮肉を含むブリティッシュ・ジョーク満載の本作品をエンターテインメントとして作品にしてしまっている点が凄いことだと感じました。

国という権力の下であれば過ちさえも認めないという姿勢、クリスマスの夜に街にいるサンタクロースにクレジットカードが欲しいと答える子供、何かをするためには書類がなければ始まらないという組織、その無駄に嫌気がさした結果として反社会的になってしまう男、若さを追い求め無茶苦茶なことも厭わない高齢者、そして、夢で見た美女しか映らない愛を求める馬鹿な男、荒唐無稽な異世界でありながら、現実の社会の不穏な部分を見せられている気がします。

1939年に作成され世界的にヒットした名曲「ブラジルの水彩画」が使用されているから作品のタイトルに「ブラジル」がついたり、昔のヒーロー物の敵のような鎧武者が主人公の夢に登場したり、何とも自由な映画だと思います。

コメディ作品でも本格SF作品でもなく、ブラックユーモアとシニカルな笑いを提供してくれ、つい苦笑いをしてしまうという点では突出している印象を受けます。そして、それを映画に求めているかどうかで好みが大きく分かれることになると思います。



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