映画 ~ 百万円と苦虫女 ~




百万円と苦虫女(ひゃくまんえんとにがむしおんな)
配給:日活
監督:タナダユキ
脚本:タナダユキ
出演:蒼井優、森山未來
公開日:2008/7
ジャンル:ヒューマン






「百万円と苦虫女」は、21歳の女性が百万円を貯める度に土地を転々とする様子を描いた作品です。とある事件を起こしたことで実家に居づらくなった女性の、様々な土地での様々な人との出会い、交流、離れたことで感じる家族の存在を訴えかけます。

監督・脚本は福岡県出身で、「モル」や「ふがいない僕は空を見た」等のタナダユキさんです。

主演は「リリイ・シュシュのすべて」や「害虫」、「花とアリス」を始めとして数多くの映画・テレビドラマの出演暦を持つ蒼井優さんです。

主人公が辿り着いた地方都市で、同じ職場で働くことになる大学生の役を、「世界の中心で、愛をさけぶ」や「怒り」等、こちらも数多くの出演作を持つ森山未來さんが演じています。



あらすじ


拘置所の一室、一人の女性が体育座りでうずくまっています。

“325番、出所だ”との声がかかり、女は顔を上げ、立ち上がります。そのまま看守に連れられ、女は門の外へ出ます。“すいませんでした”と女は言い残し、立ち去ります。

“しゃばか”と独り言を吐き出し、“しゃばだば しゃばだば~♪”と歌いながら高い塀の横を歩いています。女の名前は佐藤鈴子(さとう すずこ/蒼井優)、彼女が拘置所に入ることになったのは、働いていた飲食店での同僚との些細な会話がきっかけでした。


短大卒業後に、就職浪人となっていた鈴子はとある飲食店でウエイターとして働いていました。毎月2万円くらいを家に入れていますが、実家から離れたい思いもあるようです。

ある日、同僚のリコ(平岩紙)と雑談していると、彼女からルームシェアを提案されます。

一緒に不動産めぐりをして、駅から近いところを無事に見つけた二人、ところが、喫茶店で休憩していると、リコから突然、ルームシェアにはタケシというリコの彼氏と三人だと宣告されてしまいます。

鈴子はタケシと1回しか会ったことがありません。リコはタケシがいても気にしなくていいよと、勝手なことを言います。

家で新居用のカーテンを裁縫している鈴子、弟の拓也(たくや/齋藤隆成)が近づいてきて、せいぜい頑張ってよと皮肉を言い残します。鈴子はクソガキがと呟きます。


引越し当日、リコが遅いことを心配する鈴子、すると、タケシからリコと別れたから、彼女は来ない、家賃が払えないからルームシェアは二人で続けていくと、再び勝手なことを宣告されてしまいます。

タケシが出て行き、膝を抱えてうずくまる鈴子、外は雨降り模様です。そんな中、外から猫の鳴き声が聞こえてきます。庭を見ると子猫がダンボールにいれられ、捨てられていました。

新居では飼えないため、とりあえず子猫の餌を買いに、鈴子は外へ出かけます。道中、パソコンを持っていないため、どうやって飼い主を探そうかを考えています。

鈴子が戻ってくると、タケシも帰っていました。しかし、子猫の姿が見当たりません。タケシを問い詰めると、子猫を捨てたと言い捨てます。

急いで雨の中、外に探しに行く鈴子、そして見つけたのは、道路に横たわり冷たくなっていた子猫の姿でした。

鈴子はタケシがいない間に、タケシのものも含めて荷物をすべて処分して、そのまま出て行きました。


喫茶店でバイトする鈴子、すると、警官が来店してきて、鈴子は警察署まで彼らと同行することになります。

警察官の説明によると、鈴子が処分した荷物の中に、100万円が入っていたとタケシが主張しているということで、鈴子に器物損壊罪の容疑がかかっているということでした。

鈴子は、私は悪くないですと主張します。

突然、“SEXした?”とデリカシーのない質問をする警官、男女関係があれば痴話喧嘩として対処することも可能だと言います。しかし、鈴子はそれを認めるわけがありません。

結局、鈴子は器物損壊罪として罰金20万円の刑を受けることになります。


拘置所から実家に戻ってきた鈴子、夕食にはケーキが用意されていました。家族四人で乾杯します。

しかし、食事中、弟の拓也が怒ります。拓也は中学受験を控えており、鈴子のことが受験に響くと考えています。拓也は学校でいじめられているため、何としてでも受験に合格したいという強い想いがありました。

拓也の怒りをきっかけに、今度は夫婦間で言い争いが始まります。家庭内の不和が顕在化して、いたたまれなさと苛立ちから我慢できなくなった鈴子は、その場で100万円を貯めたら家を出て行くと宣言します。

拘置所にいたという噂が近所に広まるなか、新聞配達や清掃のバイトと懸命に働く鈴子、100万円を貯めて、海辺の町に移動し、海の家でアルバイトを始めることにします__



感想


不器用だったり、閉塞感を抱いていたり、身勝手だったりする人たちが登場して、出会いや別れを繰り返していく作品です。

冒頭に身勝手な人たちが登場して、中盤以降は素晴らしい人たちと出会って再出発していくという綺麗ごとなストーリーとはならないのが本作品の魅力だと思います。

もちろん、完璧なヒーローだったり、魅力的なドリームガールだったり、家族のように献身的に親切な人だったりが登場する作品も素敵だと思います。ただ、本作品のように、不器用だったり、相手に真意が伝わらなかったりしても、一瞬でも同じ気持ちを分かち合えたり、支えあえたりすることがいかに幸せなことか、それを再認識させてくれる作品でした。最後の台詞も印象的です。

欲を言えば、猫の顛末の描写は不要だったと思います。


自分探しみたいなことですか?

いや、むしろ探したくないんです。
どうやったって
自分の行動で自分は生きていかなきゃいけないですから

探さなくなって、嫌でもココにいますから
逃げてるんです



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