公演:十二番目の天使(じゅうにばんめのてんし)
台本:笹部博司(ささべ ひろし)
演出:鵜山仁(うやま ひとし)
製作:東宝
公演期間:2019年3月16日(土) ~2019年4月29日(月)
公演会場:北國新聞 赤羽ホール ※金沢公演
舞台「十二番目の天使」が金沢で公演されるということで観劇してきました。
※若干のネタバレ有、個人的感想強め、記憶があやふな部分がある点をご了承願います。
概要
以下、東宝オフィシャルサイト演劇ステージ様からの引用です。
イントロダクション
全世界で著作が3600万部以上読まれている作家オグ・マンディーノの代表作、「十二番目の天使」。
全米ベストセラー小説であり世界中で愛されている感動作の、待望の初舞台化が実現しました。
大切な人達との出逢いが生きる勇気を与えてくれる―切なくも優しい心温まる物語を、豪華キャスト陣でお送り致します。
あらすじ
ビジネスで大きな成功を収め、故郷に戻ったジョンは幸せの絶頂にあった。
人々に英雄として迎えられ、新生活を始めようとした矢先、妻のサリーと息子のリックを交通事故で失う。
ジョンが二人のいない世界に絶望し、人生に幕を下ろそうとしたとき、幼馴染のビルが訪ねてくる。
ビルは地元のリトルリーグのチーム監督を引き受けてくれるよう、ジョンに頼みに来たのだった。
そのチーム、エンジェルスの監督を引き受けることにしたジョンは、ティモシーという少年と出会う。
十二番目のメンバーとしてチームに選ばれた彼は体が小さく、運動神経も悪かったが、決してあきらめることなく人一倍練習に励んでいた。
そんなティモシーにリックの姿を重ねたジョンは、チームの練習とは別に、ティモシーに個人練習をつけることを提案する。
ティモシーの努力に触発されるように、エンジェルスはリーグで快進撃を続け、決勝戦に駒を進める。
ティモシーが抱える、ある重大な秘密を誰も知らないまま―
出演者(CAST)
井上芳雄
栗山千明
六角精児
木野花
辻萬長
大西統眞 溝口元太
城野立樹 吉田陽登
ストーリー等の補足、感想
・地方公演も複数ある今回の舞台、金沢公演は「北國新聞 赤羽ホール」で上演されました。私にとっては久しぶりの赤羽ホールでした。
・赤羽ホールの設計はガラスを多用した建築で著名な淺石優(あさいし まさる)さんが担当されています。
・東京公演の会場「シアタークリエ」が約600席なのに対して、「赤羽ホール」は約500席です。
・アメリカのリトルリーグを舞台にしているため、ロビーには野球の用語がわからない人のために大きなボードが用意されていて驚きました。
・原作者のオグ・マンディーノさんは「世界中で最も多くの読者をもつ自己啓発書作家」と称される世界のベストセラー作家であり、本作品はその著者が描くスポーツと人間ドラマを扱った作品です。
・上演中に複数出てくる格言や、仲間と一緒に努力して勝利を目指す姿勢、本作品は少年スポーツ漫画に自己啓発の要素を加えた印象です。
・「ミュージカル界のプリンス」と称され、知念里奈さんの夫でもある井上芳雄さんをはじめとして、「キル・ビル」、「バトル・ロワイアル」の栗山千明さん、相棒シリーズでおなじみの六角精児さん、「愛しのアイリーン」や金鳥ゴンのCMで有名な木野花さん、数多くの大河ドラマや時代劇の出演作を持つ辻萬長さん、と本当に豪華な出演者が少数精鋭で出演されている舞台です。
・子役はダブルキャストで、金沢公演では大西統眞さんと城野立樹さんのコンビでした。大西統眞さんは2018年10月に放送された、石川県小松市を舞台にした石川発地域ドラマ「いよっ!弁慶」に出演されていました。1年前には、その歌舞伎稽古で金沢に通っており、本公演で久しぶりに金沢に来訪されたようです。
・井上芳雄さん演じるジョンが本作品の主人公です。彼は幸せの絶頂にいました。膝の怪我により大リーグでの活躍は断念しましたが、ニュージャージー州の人口5千人程の街、ボーランドにおいて、ボーランドの誇りと称され、街の期待を背負っていました。コンピュータ会社の社長としてビジネスに成功した姿で20年ぶりに街に戻ってきました。素敵な妻と息子を伴ってです。
・しかし、ジョンは幸せの絶頂から不幸のどん底に叩き落されます。妻のサリーと息子のリックを事故で失ってしまったためです。5月のことでした。
・会社からは4ヶ月の特別休暇を与えられたジョンですが、もはや生きる意味がないと失意の中を過ごします。そんなジョンに救いの手を差し伸べる機会をもたらしたのは、ジョンの親友で幼馴染の、六角精児さんが演じるビルでした。
・そして、心臓が悪いビルに代わって「エンジェルス」というリトルリーグのチームの監督業を依頼されたジョンの目の前に現れたのが、大西統眞さん演じるティモシーでした。
・ハンス・クリスチャン・アンデルセンさんの格言であったり、アイルランドの古い花屋での話であったり、劇中で引用される話がいくつかありました。
・登場人物間の台詞の他に、独白だったり、説明だったり、そして野球というスポーツを扱う動作、どこまで舞台で表現するのか難しい作品だったと思います。
・球場がスクリーンに投影されます。ジョンとビルが昔のポジションだったショートとセカンドの立ち位置で昔話をしている演出は好きです。
・試合の様子に関しては、ジョンかペギーが周囲の様子も含めて回想する形がメインでした。演者の動作を最低限に留め、台詞で臨場感を出す演出だったように思います。また、スクリーンを使った演出もあり、実際にバッドがボールを打つ瞬間を動画で投影している場面もありました。
・スクリーンへの投影に関して、1点だけ気になったことがあります。墓地の場面があるのですが、十字架が11個ほど演者より遥か上空に投影されていた部分です。演者と同じ高さでいいような気がしました。まるでSF作品で、そこから異性物が出てくるような違和感を感じました(観劇したのが4月10日で使徒(しと)の日だった影響もあるかもしれません)。
・劇中で使用されたグローブは目を引きました。それを大切に抱いて眠る子供の存在が想像できるようでした。
・実年齢には差がありますが、劇中では同い年の役を演じた井上さんと六角さん、それをネタに客席では笑いが起こっていました。
・栗山さんはとても綺麗な方でした。フライヤーで見られる赤ベースに白い葉をあしらったワンピース姿ではなく、サリー役のときはエメラルドグリーンのドレス風の衣装、ペギー役のときはジーンズのラフな衣装とわかれていましたが、どちらも素敵な雰囲気でした。
・失意の中にいるジョンは何かと屁理屈ばかりで前を向こうとしていませんでした。そんなジョンを夢の中で優しく受け入れ、彼を諭そうとするサリーはとても印象的でした。
・六角さんは良き友人役がはまっていました。アメリカが原作の作品からか、スケールが大きくフットワークが軽い立ち振る舞い、海外ドラマの吹き替えのような台詞の言い回しが作品に馴染んでいたと思います。
・ジョンの父とティモシーの医者、ジョンの母と家政婦、それぞれ一人二役を演じた辻さんと木野さん、優しく、時に厳しく、どうやって前に進んでいけばいいのかのヒントをくれます。安心感抜群の二人でした。
・ジョンはいかんせん台詞が長い、多い、長い。演じた井上さんの偉大さに驚嘆します。
・本作品はミュージカルではありませんが、「白いボール 青い空へ」の歌を劇中に聞けます。特に、“涙がこぼれていく”のフレーズを絶妙な笑顔で歌い上げていた井上さん、喪失と再出発を扱う本作品で、あの場面を魅せられるのは感涙ものでした。
・何より、前向きに生きる子役の演技を舞台上で観られるというのが、本作品の素晴らしい体験だと思います。
・エースで4番のトッドを演じた城野さん、ティモシーのドンくさい部分を他の生徒が嘲笑するのを咎めたり、仲間のティモシーがエラーをしてもドンマイと励ましたり(自身が投手として孤軍奮闘している中でのエラーにもかかわらずです)、とても魅力的なキャラクターであり、それを爽やかに演じられていました。
・話が横道に逸れますが、1チーム12人制で12人全員が必ず試合に出場しなければならない、負けたら終わりのトーナメントではなく次もあるリーグ戦、といったレギュレーションは青少年のことを考慮すると、非常に優れたシステムだと思いました。
・足元が覚束ない、最初のバッティングフォームは無茶苦茶、性格は快活でいつも前向き、でもエラーをしたら反省する、と非常に難しい役どころ、ティモシーを演じきった大西さん、“諦めるな”というフレーズが強く響くのは、単に言葉が繰り返されるからというだけではなく、ティモシーという人物の台詞や動作があってこそのものだと感じました。
・原作、台本、演者、スタッフと非常に豪華な中で製作された今回の舞台、それが金沢で公演され、赤羽ホールで観劇できたことはとても清福な体験でした。
・赤羽ホールの設計はガラスを多用した建築で著名な淺石優(あさいし まさる)さんが担当されています。
・東京公演の会場「シアタークリエ」が約600席なのに対して、「赤羽ホール」は約500席です。
・アメリカのリトルリーグを舞台にしているため、ロビーには野球の用語がわからない人のために大きなボードが用意されていて驚きました。
・原作者のオグ・マンディーノさんは「世界中で最も多くの読者をもつ自己啓発書作家」と称される世界のベストセラー作家であり、本作品はその著者が描くスポーツと人間ドラマを扱った作品です。
・上演中に複数出てくる格言や、仲間と一緒に努力して勝利を目指す姿勢、本作品は少年スポーツ漫画に自己啓発の要素を加えた印象です。
・「ミュージカル界のプリンス」と称され、知念里奈さんの夫でもある井上芳雄さんをはじめとして、「キル・ビル」、「バトル・ロワイアル」の栗山千明さん、相棒シリーズでおなじみの六角精児さん、「愛しのアイリーン」や金鳥ゴンのCMで有名な木野花さん、数多くの大河ドラマや時代劇の出演作を持つ辻萬長さん、と本当に豪華な出演者が少数精鋭で出演されている舞台です。
・子役はダブルキャストで、金沢公演では大西統眞さんと城野立樹さんのコンビでした。大西統眞さんは2018年10月に放送された、石川県小松市を舞台にした石川発地域ドラマ「いよっ!弁慶」に出演されていました。1年前には、その歌舞伎稽古で金沢に通っており、本公演で久しぶりに金沢に来訪されたようです。
・井上芳雄さん演じるジョンが本作品の主人公です。彼は幸せの絶頂にいました。膝の怪我により大リーグでの活躍は断念しましたが、ニュージャージー州の人口5千人程の街、ボーランドにおいて、ボーランドの誇りと称され、街の期待を背負っていました。コンピュータ会社の社長としてビジネスに成功した姿で20年ぶりに街に戻ってきました。素敵な妻と息子を伴ってです。
・しかし、ジョンは幸せの絶頂から不幸のどん底に叩き落されます。妻のサリーと息子のリックを事故で失ってしまったためです。5月のことでした。
・会社からは4ヶ月の特別休暇を与えられたジョンですが、もはや生きる意味がないと失意の中を過ごします。そんなジョンに救いの手を差し伸べる機会をもたらしたのは、ジョンの親友で幼馴染の、六角精児さんが演じるビルでした。
・そして、心臓が悪いビルに代わって「エンジェルス」というリトルリーグのチームの監督業を依頼されたジョンの目の前に現れたのが、大西統眞さん演じるティモシーでした。
・ハンス・クリスチャン・アンデルセンさんの格言であったり、アイルランドの古い花屋での話であったり、劇中で引用される話がいくつかありました。
・登場人物間の台詞の他に、独白だったり、説明だったり、そして野球というスポーツを扱う動作、どこまで舞台で表現するのか難しい作品だったと思います。
・球場がスクリーンに投影されます。ジョンとビルが昔のポジションだったショートとセカンドの立ち位置で昔話をしている演出は好きです。
・試合の様子に関しては、ジョンかペギーが周囲の様子も含めて回想する形がメインでした。演者の動作を最低限に留め、台詞で臨場感を出す演出だったように思います。また、スクリーンを使った演出もあり、実際にバッドがボールを打つ瞬間を動画で投影している場面もありました。
・スクリーンへの投影に関して、1点だけ気になったことがあります。墓地の場面があるのですが、十字架が11個ほど演者より遥か上空に投影されていた部分です。演者と同じ高さでいいような気がしました。まるでSF作品で、そこから異性物が出てくるような違和感を感じました(観劇したのが4月10日で使徒(しと)の日だった影響もあるかもしれません)。
・劇中で使用されたグローブは目を引きました。それを大切に抱いて眠る子供の存在が想像できるようでした。
・実年齢には差がありますが、劇中では同い年の役を演じた井上さんと六角さん、それをネタに客席では笑いが起こっていました。
・栗山さんはとても綺麗な方でした。フライヤーで見られる赤ベースに白い葉をあしらったワンピース姿ではなく、サリー役のときはエメラルドグリーンのドレス風の衣装、ペギー役のときはジーンズのラフな衣装とわかれていましたが、どちらも素敵な雰囲気でした。
・失意の中にいるジョンは何かと屁理屈ばかりで前を向こうとしていませんでした。そんなジョンを夢の中で優しく受け入れ、彼を諭そうとするサリーはとても印象的でした。
・六角さんは良き友人役がはまっていました。アメリカが原作の作品からか、スケールが大きくフットワークが軽い立ち振る舞い、海外ドラマの吹き替えのような台詞の言い回しが作品に馴染んでいたと思います。
・ジョンの父とティモシーの医者、ジョンの母と家政婦、それぞれ一人二役を演じた辻さんと木野さん、優しく、時に厳しく、どうやって前に進んでいけばいいのかのヒントをくれます。安心感抜群の二人でした。
・ジョンはいかんせん台詞が長い、多い、長い。演じた井上さんの偉大さに驚嘆します。
・本作品はミュージカルではありませんが、「白いボール 青い空へ」の歌を劇中に聞けます。特に、“涙がこぼれていく”のフレーズを絶妙な笑顔で歌い上げていた井上さん、喪失と再出発を扱う本作品で、あの場面を魅せられるのは感涙ものでした。
・何より、前向きに生きる子役の演技を舞台上で観られるというのが、本作品の素晴らしい体験だと思います。
・エースで4番のトッドを演じた城野さん、ティモシーのドンくさい部分を他の生徒が嘲笑するのを咎めたり、仲間のティモシーがエラーをしてもドンマイと励ましたり(自身が投手として孤軍奮闘している中でのエラーにもかかわらずです)、とても魅力的なキャラクターであり、それを爽やかに演じられていました。
・話が横道に逸れますが、1チーム12人制で12人全員が必ず試合に出場しなければならない、負けたら終わりのトーナメントではなく次もあるリーグ戦、といったレギュレーションは青少年のことを考慮すると、非常に優れたシステムだと思いました。
・足元が覚束ない、最初のバッティングフォームは無茶苦茶、性格は快活でいつも前向き、でもエラーをしたら反省する、と非常に難しい役どころ、ティモシーを演じきった大西さん、“諦めるな”というフレーズが強く響くのは、単に言葉が繰り返されるからというだけではなく、ティモシーという人物の台詞や動作があってこそのものだと感じました。
・原作、台本、演者、スタッフと非常に豪華な中で製作された今回の舞台、それが金沢で公演され、赤羽ホールで観劇できたことはとても清福な体験でした。
あきらめるな!あきらめるな!
絶対!絶対!あきらめるな!
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