舞台 ~ 女王の戦略 ~




公演:女王の戦略
脚本・演出:広瀬格
企画:ピウス企画
公演期間:2019年3月13日(水) ~2019年3月17日(日)
公演会場:シアターグリーン BIG TREE THEATER





ピウス企画さん製作の舞台「女王の戦略」を観劇してきました。

※若干のネタバレ有、個人的感想強め、記憶があやふな部分がある点をご了承願います。







概要


2016年6月に、いしだ壱成さんや松崎史也さんのキャストで上演された実績のある本作品、今回再演となります。


以下、ピウス企画公式ブログ様からの引用です。


あらすじ

斉藤和馬は目の前で妻、桐子を誘拐される。
犯人が要求した身代金は4億円だった。
和馬は必死で用意した1億円を持って引き渡し場所へ向かう。
廃墟にしか見えないビルの地下室。
地下室には和馬と同じように大きな鞄を抱えた人物が3人いた。
彼ら全員が大切な人を誘拐された被害者だった。
混乱する4人に誘拐犯からの指示がある。

「4億円で人質を解放する。お前達で用意した金を奪い合え」

被害者たちが身代金を奪い合うという最悪なゲームの始まりだった。
彼らには1丁ずつ拳銃が与えられる。込められた弾丸は1発だけ。
どうするべきか悩む和馬の携帯に桐子からの着信がある。
恐怖に震える声で助けを求める桐子。和馬は妻が殺されるのだと確信する。

なんとしても妻を助けなければ。

そして4人の被害者たちによる身代金の奪い合いが行われる。
だがそれは始まりにすぎなかった。


出演者(CAST)


畑中智行(キャラメルボックス)
永井幸子(ブルドッキングヘッドロック)
増田裕生
髙木俊
伊藤えみ
鐘ヶ江洸
MiKi
三上俊
倉貫匡弘
水崎綾

加藤靖久(AND ENDLESS)

篠原功(演劇集団SINK)





ストーリー等の補足、感想


・展開にハラハラする生死をかけたサスペンスです。事件に巻き込まれた「カード」と呼ばれる被害者、その様子を眺めて楽しむゲームの「主催者」と「プレーヤー」、そして被害者の家族である「刑事」、3つの場面が交錯しながら物語が進んでいきます。

・舞台のタイトルとあらすじがまったくリンクしない件、観劇前から気になっていましたが、物語の早い段階でそういうことだったのか、と驚きました。

・畑中智行さんが演じる主人公の斉藤和馬は40歳のビル管理会社に勤める会社員、約1年前に幼馴染の永井幸子さんが演じる萩原桐子と結婚しています。なお、桐子は再婚で、前の旦那は亡くなっているようです(観劇中は特段に意識していませんでしたが、今改めて思い返すと意味深です)。

・畑中さんの温和な雰囲気、篠原さんの屈強で情に厚い部分、倉貫さんの狂信っぷり、増田さんの知的な立ち振る舞い、等々、被害者4人の演者をはじめとして、配役の妙といいますか、本公演は演じる人が皆、印象的でした。

・特に小説家の新田篤を演じた増田裕生さんは強烈に印象が残っています。役のヘアスタイルの影響もあるでしょうが、野島伸司さん脚本のドラマに出演する三上博史さんを思い出させるような、知的で計算高いところもありながら、情も持ち合わせる重厚な雰囲気がとても素敵でした。

・新田篤さんは映画「バトル・ロワイアル」の不良である黒長博や、テレビアニメ「Angel Beats!」の藤巻の声優、人狼TLPTに参戦だったりと、本当に数多くの作品で活躍されている方であり、本公演で拝見できてよかったです。

・水崎綾さんはロスト花嫁以来の出演作観劇だったのですが、また物事の顛末をおもしろおかしく高みの見物をする役ということで、私の中では舞台上での怖い女性イメージが定着しつつあります。終焉後のチェキはとても優しい方でした。舞台上では怖い女性イメージが定着しつつあります。

・物販で台本があるのはサスペンス作品だと非常に嬉しかったりします。そして、台本を見るとより詳細なゲームの解説が確認できたりします。

・その解説は水崎綾さんが演じる野崎鈴花が担当しています。普段の野崎鈴花とプレイヤーとしての野崎鈴花はぜんぜん違うとのこと、でもどちらも本物の野崎鈴花だということです。

・作中の金銭移動に関するやり取りは少しモヤモヤしました。クジによって2回実施された「カード」間のくじ引きゲーム、そして交渉によるやり取りはわかりやすかったです。
 しかし、「プレイヤー」間の情報開示請求で1千万円のやりとりをした点は、後の展開への布石にしても少し強引だった印象です。不自然に感じるほど絶妙すぎる金額の推移だったことが気になりました。ゲーム上の身代金額の設定金額が、5千万~2億円と説明していたため、もっと差額がはっきりしていたほうが進行はわかりやすかった気がします。

・張り詰めた空気感を維持しつつ、いい意味で笑いどころもいくつかあります。突発的なギャグやボケというわけではなく、人間味のある共感しやすい笑いどころだった点が、緊張しつつもクスッとできるものでした。

・そう簡単に銃の引き金を引ける人間はいない、刑事が優秀だった、等、理解はできるのですが、それでも、物語が偶発性に頼りすぎではないかという疑問は少し抱きました。

・「カード」への銃の受け渡しは個別に金庫に入れて、携帯に解除用の情報(QRコードでも、数字でも)を渡す方法でいいのではないでしょうか。登場人物の性格を最初に紹介する意味では、中央のケースにまとめて置いてある方法でも有用だと思いましたが、最終盤の展開はさすがに突っ込まざるを得ない気がします。

・タイトルの話に戻りますが、個人的には物語の絵を描いていたのが女王のパターンも観たいなと思いました。むしろ、今回のパターンではタイトルにふさわしい立ち回りを女王がしていた印象は残っていません(和馬を覚醒させる、ということが唯一の目的であればそうでもないのですが……)。女王が主導で今回の絵を描いていた人が協力者であれば偶発性もより排除できたのではと思います。

・舞台でのサスペンスは複雑すぎると観ている側が置いてかれてしまい、単純すぎると面白みがないという難しいジレンマがあると思います。そんな状況でも本作品はキャラクター、テンポ(起承転結)、プロット、細かい部分の演出と、観ていてワクワクしたりドキドキしたりする場面が複数あり、他の作品も観劇したいなと思いました。




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