映画 ~ 私が、生きる肌 ~




私が、生きる肌
原題:La piel que habito
英題:The Skin I Live In
配給:ワーナー・ブラザース(ブロードメディア・スタジオ)
監督:ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodóvar)
脚本:ペドロ・アルモドバル、アグスティン・アルモドバル(Agustín Almodóvar)
出演:アントニオ・バンデラス(Antonio Banderas)、エレナ・アナヤ(Elena Anaya)
公開日: 2011/5(2012/5)
ジャンル:ヒューマン、サスペンス




「私が、生きる肌」は著名な形成外科医が、数年かけて開発した人工皮膚を利用して亡き妻の代役を監禁し、生活と研究を共に進めていく倫理と愛憎の様子を描いたヒューマンサスペンス映画です。

監督はスペインの巨匠、スペインの映画賞だけでなく海外の数々の映画賞の受賞経験をもつペドロ・アルモドバルさん、脚本はペドロ・アルモドバルさんと弟であるアグスティン・アルモドバルさんの共同脚本です。

主人公の形成外科医にアルモドバル作品の常連であり、アルモドバルの美神(ミューズ)との異名を持つアントニオ・バンデラスさん、形成外科医に監禁される役を「ヴァン・ヘルシング」や「機械じかけの小児病棟」といった作品に出演されているエレナ・アナヤさんが演じています。

主演のエレナ・アナヤさんは本作品でスペイン版アカデミー賞といわれるゴヤ賞の最優秀主演女優賞を2012年に受賞されています。

本作品はティエリ・ジョンケさんの小説「蜘蛛の微笑」を原作としています。



あらすじ

肌色のボディースーツを着てソファーで柔軟をしている一人の女性(ベラ・クルス/エレナ・アナヤ)、彼女の部屋がある大きな邸宅では家政婦のマリリア(マリサ・パレデス)が働いています。

ベラの部屋には監視カメラが存在し、その行動が邸内で確認できるようになっています。他にも様々な模型や薬品、動物の皮が確認できる研究室のような部屋もあります。

この大邸宅の所有者は、天才形成外科医ロベル・レガル(アントニオ・バンデラス)です。


彼は世界的に著名な外科医であり、形成外科に関する講演も行っていて、「顔はその人自身です」と主張しています。

ある日、ロベルが帰宅すると、ベラが血を流して裸でベッドの上で倒れていました。すぐに手術室に運び込むロベル、いっそ窒息死させて欲しいと懇願するベラ、彼女はこの生活が“いつまで続くのか”と“もう終わらせたい”とロベルに懇願します。一方で、彼のほうは彼女の様子を見て、“とても柔らかい皮膚だ”と彼女の願いを受け入れません。


ロベルは研究に精を出します。ある朝、食卓でマリリアから動物の血を渡されるロベル、早速それを手術室へと運び、何かを調合します。手術台には首のない人体模型のようなもの、その周囲には様々な種類の虫を培養しているようにも見えます。

ロベルが研究しているのは、“ガル”という数年かかって開発した人工皮膚です。虫刺されに強い耐性を持つ自然の防護壁の役割を果たします。それがあれば、マラリア蚊も平気ということです。

すでに哺乳類への移植実験の段階にあり、ヌードマウスを使った実験では驚異的な成果をあげていて、人に使うことも可能であるということです。しかし、倫理的な側面もあり、実際には人間への使用に葛藤しているということが世間向きの情報となっています。

“ガル”という名前の由来は、過去に自動車の事故により焼死したロベルの妻の名前によるものです。亡き妻の思い出のために、妻を救えた可能性のある「完璧な肌」を作り出すことにロベルは執念を燃やしています。


そんな折、ロベルが不在の邸宅にマリリアの息子(セカ/ ロベルト・アラモ)が突然訪ねてきます__



感想


恋愛、サスペンス、ヒューマンドラマ、SF?、ホラー?と盛りだくさんの内容となっています。

時系列を変えて進む物語の構成は決して珍しいわけではないのですが、そこで描かれる内容が私の常識では想像できない展開であったがために中盤以降に訪れるシーンに驚嘆し、惹きこまれてしまいます。

外見の面でSF要素を取り入れた恋愛作品であれば、韓国映画の「ビューティ・インサイド」が真っ先に思い浮かぶのですが、人工皮膚を駆使して亡き妻に近い外見の人を用意するという点で外見をどこまで重要視するのかという似たような感想を持つことになります。

ただし、こちらの主人公のロベルの目的は一体なんだったのかを考えると興味がつきません。それは恋愛だったのか、研究だったのか、復讐だったのか……

また、途中から登場するセカの存在と行動もまた、外見がよければそれでよいのかという一種の皮肉的な面が見られます。


フィルム調を色濃く感じる映像、大邸宅の廊下にある絵画や、登場人物に関するワンピースの衣装等の小道具といった部分は、この作品のエキゾチックな雰囲気を増大させるのに一役買っているように思います。

細かい部分(声の問題 等)がどうでも良くなるくらいクレイジーなのが少しずるい気もしますが、おもしろい作品だと思います。ただ、好みがとても分かれそうな作品のため、人にはお勧めしづらいとも思います。


始末しないと__

彼女への想いが
癌のように あなたを蝕む





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