漫画 ~ 軍鶏 ~




軍鶏(しゃも)
原作:橋本以蔵(はしもと いぞう)
作画:たなか亜希夫(たなか あきお)
出版社:講談社(、双葉社)
掲載誌:漫画アクション、イブニング
巻数:全34巻(1998/11~2015/2)





「軍鶏」は両親惨殺の罪により過酷な環境下の少年院に放り込まれた少年が、生き抜くため、そこの授業で出会った空手とともにその後の人生を歩んでいく格闘漫画です。

原作はテレビドラマ「スケバン刑事」シリーズ、アニメ映画「AKIRA」、SMAPが出演した映画版「シュート!」といった作品の脚本を担当した、島根県出身の橋本以蔵さんです。

作画は小池一夫さん主宰の「劇画村塾」出身の宮城県出身、たなか亜希夫さんです。

二人は作品の著作権を巡って裁判沙汰になっていることが2008年6月にニュースになり、その結果、途中からは、たなか亜希夫さんの単独クレジットとなっています。

本作品は、小西克幸さん主演で2008年に映画化もされています。



あらすじ


ピアノもある裕福な家庭の広いリビング、部屋の隅に背を向けうずくまっている少女(成嶋夏美)、ソファー近くの血溜まりの床上には男女の無残な遺体、右手に包丁を携えた学生服姿の少年(成嶋亮/リョウ)がそれを見下ろしています。

蝉が地表に出て大きな声で鳴いている夏、成嶋亮16歳、彼は両親を殺害した罪に問われ、鯵ヶ崎(あじがさき)高等少年院に移送されます。

リョウの他、ピアスに長髪のチャラチャラした風貌の窃盗罪を犯した望月淳哉、器物破損と傷害の罪に問われたガタイの良い金山勲が、鯵ヶ崎に送還されています。

院長との顔合わせ後、三人は看守に誘導され身だしなみを整理させられます。きな臭い建屋内を移動する三人、廊下には院の先輩たちがリョウ達を品定めするように視線を投げかけています。

今日だけは特別待遇だと個室を用意されたリョウ、夜になり、月明かりも届かない部屋で眠ろうとしていると、突然、部屋の扉が開きます。

“だ……誰!?”とベッドから身を起こすリョウ、扉から先輩の一人が顔を出します__



感想


親殺しで世間からもバッシングを受ける少年、格闘家が主人公です。

主人公は物語の序盤から悲惨な目に遭います。そして、周囲の人間もまた悲惨な状況に陥ることが多く、暴力的で厭世的な世界観が目を引き、読む人を選ぶ作品だと思います。

良い点として、強くなっていく過程や試合描写も丁寧、人間の醜悪な部分も明確に描いている、劇画に近い絵柄、結末を予想できない試合展開、強さがインフレしていく一方のバトル漫画とは一線を引いた格闘漫画、等があげられます。

ここ数年でデスゲームを題材として、安直な暴力やグロを扱った作品も溢れています。一方で、1998年に第1巻が発売された本作品は、人間の醜悪な部分を描いた上で刺激的な内容を取り扱っている点が、印象的な作品になっていると思います。



成嶋…
<空手>を忘れてまともに暮らすってのはどうだ?

……ボクがまともな暮らしを………?
はあっ……黒川先生………

……だから必要なんじゃないですか





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