漫画 ~ サンクチュアリ ~




サンクチュアリ
作画:池上遼一(いけがみ りょういち)
原作:史村翔(ふみむら しょう)
出版社:小学館
掲載誌:ビッグコミックスペリオール
巻数:全12巻(1990/12~1995/6)





「サンクチュアリ」は、経済大国に上り詰めながら疲弊し腐敗する日本を、暴力団と議員秘書の二人の男が、表と裏の世界から変えていこうとする作品です。

作画担当の池上遼一さんは福井県出身、劇画漫画で数多くの著名作品があり、「HEAT -灼熱-」では2001年度の小学館漫画賞の青年一般部門を受賞しています。

原作は「ドーベルマン刑事」、「北斗の拳」等で著名な長野県出身の武論尊(ぶろんそん)さんで、史村翔の別名義で池上遼一さんとタッグを組んだ本作品を始めとして、数多くの著作があります。

本作品は1995年に、永澤俊矢さんと阿部寛さんの二人の主演で映画化もされています。



あらすじ


六本木警察署の前に駐車してある1台の黒いベンツ、二人の婦警が警邏から戻ってきたとき、そこにある邪魔なベンツを見て、こんな車に乗っているのはスキンヘッドかパンチパーマのヤッちゃんに違いないと話をしています。

そこに警察署から出てきた白スーツのイケメンの男が近づいてきます。婦警は思わぬ男前の出現に、ヤクザの車と勘違いしましたと謝罪します。男は“いいんだ、オレはヤクザだよ”と言い残してベンツを運転し、唖然とする婦警たちを置いてその場から立ち去ります。

その男の名前は北条彰(ほうじょう あきら)、六本木に拠点を持つ暴力団「北彰会」の会長であり、警視庁・六本木署の副署長である石原杏子(いしはら きょうこ)とサングラスと無精髭の刑事、尾崎(おざき)からマークされている存在です。


事務所に戻ってきた北条、側近の田代(たしろ)が出迎えます。少しして事務所に電話がかかってきて、北条たちは出かけます。

電話は北条が雇ったカメラマンからでした。北条は現職の国会議員のスキャンダルとなる写真の入手を依頼しており、電話の内容は、カメラマンがついに写真を入手したとの連絡でした。

しかし、カメラマンは北条がサラリーマンのようなヘナチョコのヤクザだと侮って、50万円のはずだった報酬の約束を反故し、一千万を要求してきました。

カメラマンの家に到着した北条と田代、ドアを開けるや否や、田代がカメラマンに鉄拳をおみまいし、そのまま家へと侵入、金的への蹴りや戸棚のガラスに顔面を叩きつけるといった暴力による制裁を与えます。

そして、その様子を見ていた北条が胸ポケットから拳銃を取り出し、カメラマンに脅しをかけ、フィルムを強奪していきます。

その帰り道、北条は田代に対してどうしてヤクザになったのか尋ねます。田代は突然の問いかけに“さぁ”と返して、逆に北条に同じ質問をぶつけます。北条も“さぁ”と返します。

すると田代は“「さんくちゅあり」ってやつですか?”と、北条の絶対に他人には見せない部分、誰の力も及ばない自分だけの世界を形容する言葉を北条に投げかけます。


後日、ターゲットとなる佐倉(さくら)という国会議員のもとを尋ねる北条と田代、年内の解散総選挙を見据えて佐倉を強請ろうとする二人、しかし、佐倉はチンピラヤクザごときに強請られる国会議員ではないと写真をつき返します。

そこに佐倉の秘書である浅見千秋(あさみ ちあき)が現れ、田代をパンチ一発でふっ飛ばしてしまいます。

北条は浅見に名前を尋ね、その名前を覚えておこうと言い残して立ち去ります。


場面が変わって東京タワーの展望台のメインデッキ、二人の男が立っています。その一人は北条であり、一千万円の金を入れたアタッシュケースをもう一人の男に渡します。

北条はどんな手段を使っても、その男を国会議事堂の赤絨毯の上に立たせてやると宣言します、それが二人の“聖域(サンクチュアリ)”を作るために必要だということです。

そこに東京タワー内で遊んでいた小学生くらいの男の子が来て、もう一人の男にぶつかってしまいます。すいませんと謝る子供、その子供に対して、北条は“この人の顔を覚えておくといい… 君達が大人になった時 この人はきっと首相になっている……”と伝えます。

もう一人の男が振り返ります。

そこで笑って立っていたのは、佐倉議員のところにいた秘書の浅見でした__



感想


政治と反社会という表と裏の両方から日本を変えていこうとする男たちの漫画です。

写実的な劇画風の絵柄と日本社会が抱える問題点に立ち向かっていくストーリー、そこに魅力的な登場人物が合わさり、とても熱い作品となっています。

これを書いている今でも、アメリカの関税問題で車の輸出入のこと、ロシア外交の北方領土のこと、外国人労働者受け入れ拡大を目指した改正出入国管理法に関連すること、憲法改正、などなど社会ニュースで目にする事柄が、この作品で語られています。

この漫画の主人公たちが日本を変えていく強い意志を、いかに当時から日本の先を見据えて描いていたかがよくわかります。
(結局、今なお、様々な事柄が事なかれで継続していることは寂しいことでもあります)

個人的に間違いなくトップクラスにおもしろく、お勧めできる作品です。


普通の人間が30年かかるところを……
一日でやれるからですよ!





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