ミスミソウ
配給:ティ・ジョイ(T-JOY)
監督:内藤瑛亮(ないとう えいすけ)
脚本:唯野未歩子(ただの みあこ)
出演:山田杏奈(やまだ あんな)、清水尋也(しみず ひろや)
公開日:2018/4
ジャンル:青春、ホラー
「ミスミソウ」は、東京から閉鎖的な田舎に転校してきた卒業間近の女子中学生が、悲惨ないじめと悲痛な惨劇を体験したことで、凄惨な復讐劇に身を投じる青春映画です。
監督は愛知県出身で、「先生を流産させる会」、「パズル」等の監督作品を持つ内藤瑛亮さんです。
当初は別の方が監督を務める予定が、急遽降板となり、クランクインの1か月前に内藤監督に決まったということが初日舞台挨拶イベントで発表されています。
脚本は東京都出身の唯野未歩子さんです。女優や監督、脚本としても活躍されており、「三年身籠る」といった作品を監督されています。
主演の凄惨な環境に身をおく女子中学生役を、「咲-Saki-」やロッテのCMに出演されている山田杏奈さん、クラスで唯一、いじめられている女子生徒の味方になってくれる男子生徒役を、映画「渇き。」やテレビドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」に出演されている清水尋也さんが演じています。
その他の出演者に、主人公のクラスのリーダー格の女子生徒役に、ファッション雑誌「ニコラ」のモデル等でも活躍されている大谷凜香さん、いじめグループの一員の肥満体系の生徒役に「想像だけで素晴らしいんだ-GO TO THE FUTURE-」にも出演されている遠藤真人さん、主人公の祖父役には数多くのテレビドラマ、映画に出演されている寺田農さんがいます。
原作は「ハイスコアガール」、「サユリ」等の作品がある押切蓮介さんの漫画です。
あらすじ
とある中学校の放課後、下駄箱を開けると自分の靴がないことに気づく女子生徒(野咲春花/のざき はるか/山田杏奈)、一緒にいた男子生徒(相場晄/あいば みつる/清水尋也)が「帰らないの?」と尋ねてきますが、彼女はごまかしてやり過ごします。
裏山にあるゴミ捨て場に向かう春花、女子生徒三人が春花の靴をゴミ溜めに投げ捨てます。リーダー格の金髪の女子生徒(小黒妙子/おぐろ たえこ)はその様子をジッと眺めています。
三人の女子生徒のうちの一人が、春花が妙子から相場を奪ったからだと言います。妙子はそれは関係ないと言います。
汚れたまま下校する春花、帰宅途中に妹(野咲祥子/のざき しょうこ/玉寄世奈)と出会います。春花は妹のことを“しょーちゃん”と呼んでいます。
春花がいじめられていることは妹も両親も気づいているようです。
三者面談の日、父親がいじめのことを訴えますが、担任の南先生はすっとぼけます。
春花のいる学校は閉鎖的で小さな田舎町にあり、卒業する生徒は十数人程度、今年で廃校を予定しているということで、卒業までの残り2ヶ月、南先生は事を荒立てたくないようです。
同級生は三者面談終了後に廊下を歩いて帰ろうとする父親相手にさえ嫌がらせをしてくる悲惨な状態です。いじめはとどまる事もなく、授業中にも春花の机の上には動物の屍骸が放置され、それにもかかわらず南先生は見てみぬふりをし、唯一の味方である相場だけが止めます。
その夜、春花の両親はもう学校に行かなくていいと彼女に告げます。転勤のせいでこのようなつらい目に合わせてごめんねという言葉とともに。
翌日から学校に登校しなくなった春花、教室では別の女子生徒(佐山流美/さやま るみ/大塚れな)が春花の代わりにいじめの標的にされてしまいます。
流美は春花が転校してくる以前に、いじめの対象となっていた生徒でした。
また同じような立場になりたくなければ春花が登校してくるように見舞いに行って来いと命令された流美は、放課後、春花の家まで行くことにします。
しかし、その行為が冬の小さな田舎町に訪れる非常な惨劇の始まりとなります__
感想
ホラー漫画「サユリ」の作者が原作の映画、何となく展開の予想はしていましたが、それさえも裏切る形で、ラスト30分近くの“えっ!?そこも?”という展開はちょっとやりすぎな気がしました。
スプラッター部分もちょっと非現実的すぎる印象を受けてしまいますが、非現実的だから悪いというわけではなく、非現実的な印象が残酷な描写を程よく中和しているようにも感じます。
校舎のシーン等、一部の雪が降るシーンに関して、想像よりもきれいでなかったことが少し意外で印象に残っています。インタビュー記事ではリアルに降っている雪は肉眼ではきれいに見えてもカメラを通してだときれいに見えないことがあるということで、実写の雪のシーンの撮影は大変なようです。
もちろん、雪がとても印象的に見えるシーンもあり、撮影では3種類の雪(本物の雪、衣装用の雪、スノーマシンを利用した雪)をメインに足りない分をCGで補うといった方法をとっていたとのことです。
白い雪景色の中の赤いコートを着る山田杏奈さんや、鮮血の色の対比といったシーンは綺麗に映像化していると感じました。
また、映画やドラマを見ていて、加害者側の視点を描写する際にどうしても説明くさい、あるいは、言い訳がましい台詞を必要とすることがあり、その結果、共感をまったく覚えなかったり、お前が言うなという違和感を覚えることがあります。
しかし、本作品では、遠藤真人さん演じる理屈っぽいオタクキャラにその役割を与えたことで、ストーリーの流れとしてもキャラの特徴としても、うまいこと活かされているなという印象を持ちました。
加害者の閉塞感が感じられたり、優しい楽しい思い出のシーンは光の量が多かったりする点で、単なるスプラッター作品ではなく、人間ドラマや青春要素も織り交ぜて描かれていた点が個人的には良かったです。
この草は厳しい冬を耐え抜いた後
雪を割るようにして 小さな花が咲く
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