ブルーピリオド
作者:山口つばさ(やまぐち つばさ)
出版社:講談社
掲載誌:月刊アフタヌーン
巻数:既刊3巻(2017/12~2018/8)
「ブルーピリオド」は気の合う不良仲間とつるみ、人当たりもよく、成績も優秀、ただ、日々の生活に空虚感を感じていた男子高校生が、一枚の絵に心奪われ、一つの絵を描いたことから美術の世界に入り込み、難関の国立美大の合格を目指す青春美術漫画です。
作者の山口つばささんは東京都出身で、講談社主催の漫画新人賞「アフタヌーン四季賞」2014年夏に佳作を受賞されています。他の著書に新海誠さんのアニメをコミカライズした「彼女と彼女の猫」があります。
本作品は宝島社の「このマンガがすごい!2019」のオトコ編にランクインしています。
あらすじ
6月、深夜から明け方が近づく時間帯のとあるスポーツバー、サッカーの日本対イタリアの準決勝をテレビ観戦する4人の高校生、ひとしきりに盛り上がった後の午前5時、締めのオール明けのラーメンに4人で繰り出します。
ラーメンを食べながらこの後の予定を話す4人、宅飲みでもしようかという流れの中、一人が学校があるからと席を立ちます。
席を立ったその青年の名は矢口八虎(やぐち やとら)、チャラチャラした風貌がDQNと形容されたりもしますが、試験成績は学年4位、愛嬌も良く、人生を卒なく楽しんでいます。
しかし、矢口にとっては勉強も人付き合いもゲーム感覚でしかありません。クリアすることで結果が得られ、周囲からも褒められ、それはそれで楽しいと思いつつ、手ごたえのないその生活に空虚感を抱いていました。
ある日、美術の授業中にタバコを忘れたことに気づき美術室へと取りに向かう矢口、そこで偶然見つけた1枚の絵に立ち止まります。
縦横が1mを超える巨大なF100号のキャンバスに描かれた天使の絵、一目見たその絵の凄さに圧倒され、また天使の顔の色使いにも目が離せなくなっていきます。
絵に目を奪われた矢口、そんな彼の後ろから突然声がかかります。
矢口が振り返ると、そこにいたのは彫刻素材を両手に抱えた同級生の鮎川龍二(あゆかわ りゅうじ)、彼は綺麗な顔に、ロングヘア、上は学ランで下はスカートにハイソックスというルックスで周囲からはユカちゃんの愛称で呼ばれている女装男子です。
仲が悪く、口喧嘩に発展する二人、そんな二人の間に割って入ったのは美術を担当する先生でした。
先生から絵を描いていかないかと誘われた矢口ですが、彼は将来への期待値が低い美術の世界には興味がなく、堅実な選択をしたいと主張し、美術部への非礼を謝罪して教室を退出しようとします。
そんな矢口に対して、美術の先生は矢口の空虚感を見抜き、矢口の人生に転機を与えるような言葉を与えます。
後日、またいつもと同じように仲間たちとつるむ矢口でしたが__
感想
美術を題材とした文化系青春漫画です。
芸術という比較や結果がわかりにくい分野を扱っていますが、主人公の才能やセンス、感性に頼るだけではなく、理論や実践といった部分も大切にしていると感じられ、読みやすい作品です。
個人的にはサッカー漫画の「アオアシ」に似ているなと感じました。タイトルに「ブルーとアオ」が含まれているのは同じ青春漫画という点で偶然ではないでしょうが、一流を目指すうえで主人公が足りない要素を理論や実践で身につけていく点、試合や製作する作品で結果がでたときの高揚感やカタルシスといった点は読んでいてワクワクし、続きが早く読みたくなってきます。
また、本作品は青春漫画として友情、恋愛、家族、進路といった人間ドラマの一面も当然持ち合わせているのですが、あくまで美術が基本にあってのものであり、月刊誌で稀に発生する、ぜんぜん話が進まない本筋からの脱線が感じられない点も魅力的だと思います。
主人公の美術に対する取り組みを彩る枝葉的な存在として、友人も仲間も先生も家族も魅力的なキャラクターがたくさんいて、素敵な作品になっていると思います。
コメント
コメントを投稿