漫画 ~ All You Need Is Kill ~




All You Need Is Kill(オール ユー ニード イズ キル)
原作:桜坂洋(さくらざか ひろし)
構成:竹内良輔(たけうち りょうすけ)
キャラクター原案:安倍吉俊(あべ よしとし)
作画:小畑健(おばた たけし)
出版社:集英社
掲載誌:週刊ヤングジャンプ
巻数:全2巻(2014/6)





「All You Need Is Kill」は近未来の日本を舞台に、ギタイという人類を皆殺しにしようとする化物を相手に、軍に所属する一人の青年が初陣の前日から当日までの2日間を繰り返し体験していく漫画です。

原作は「よくわかる現代魔法シリーズ」等の著者、桜坂洋さんの小説です。
キャラクター原案は小説の装丁、イラストを担当した安倍吉俊さんで、他に「NHKにようこそ!」の装丁を担当していたり、また、自身も漫画家として作品を出版しています。
構成を担当する竹内良輔さんは、他の担当作品にジャンプSQで連載中の「憂国のモリアーティ」があります。
そして、作画が「ヒカルの碁」、「DEATH NOTE」等で著名な小畑健さんです。

原作は2014年にトム・クルーズさん主演、「Edge Of Tomorrow」のタイトルでハリウッド映画化もされています。


あらすじ


戦場で死に際にいる一人の男、霞んでいく視界の先にいるのは、大きなバトルアクスを構えたメタリックレッドカラーのジャケットに身を包んだ兵士、その兵士が語りかけてきた内容は日本では食後にグリーンティーが無料で提供されるのは本当かという与太話、そこで男は意識を失います__


気づくと男はベッドの上に仰向けになっていました。男は殺される夢を見ていたようです。

男の名前はキリヤ・ケイジ、統合防疫軍と呼ばれる軍隊に所属し、明日、初の出撃を迎える予定の兵士です。

迎え撃つのは「ギタイ」と呼ばれる謎の化物です。突如として現れたその化物は、どこから来たのか、どんな生態なのかはわかっていません。その化物が人類を皆殺しにしようとしていることだけが唯一わかっていることであり、人類は絶滅の危機に瀕しています。

ケイジのいるフラワーライン基地は防衛の最前線となっています。人類はその基地を死守するために、アメリカから部隊を派遣してきました。

それはリタ・ヴラタスキと呼ばれる世界中の戦場で勝利を収めている一人の女性兵士が率いる特殊部隊です。


夢から覚めたケイジは同僚とのやり取りにどこか違和感を抱きます。それは、サインを書けと渡された宣誓書にはすでに自分がサインをした記憶があったり、出撃は明日のはずなのに今日の午後だと勘違いしたりといった出来事に関してです。

そして突然、上司が現れたかと思うと、出撃前日にもかかわらず基礎訓練が実施されます。

前支えを長時間維持する言い渡されたケイジたち、途中、アメリカの特殊部隊の面々が、その訓練の様子を興味半分に眺めています。

その中の一人に人類最強のジャケット兵、リタの姿がありました。ケイジは想像以上に小さなその体に少し驚く一方、彼女にどこかで会っているように思います。

ケイジがリタを眺めているうちに、彼女と目が合います。すると、何を思ったか、彼女が自ら志願してケイジの隣で同じ前支えの体勢をとり始め、訓練に付き合うことになります。

自分の顔に何かついていたのかとリタから問いかけられるケイジ、彼はすいませんと謝りながらその隣の可憐な少女と一緒に訓練を続けます。

訓練が終わり、各人が思い思いの夜を過ごします。ケイジは読書をした後で、昼に見た悪夢は所詮夢だと、改めて生き残る決意を胸に翌日を迎えます。


翌日、警報が鳴り響くなか、ギタイが占領しかけている島の奪還のために派遣されるケイジ達、ケイジに与えられた役割は、主力部隊がしとめ損ねたギタイを迎え撃って殲滅することでした。

至るところで閃光や火柱があがり、爆音が鳴り響く中、無線からケイジ達のもとにギタイが近づいてくることが知らされます。

その影が確認できた瞬間、ケイジが所属するグループが一斉に銃弾を浴びせます。しかし、ギタイからも反撃にあい、ケイジのそばにいた仲間がスピア弾という敵の攻撃に倒れます。

想定以上の数のギタイがケイジ達の目の前に現れます。先輩とともにその場から離れようとするケイジ、しかし、次の瞬間、ケイジの先輩が目の前で蜂の巣にされてしまい、ケイジも左胸から肩にかけて抉られてしまいます。

激痛の中、死を覚悟したケイジ、ギタイからの止めの一撃を霞んでいく視界で捉えながらブラックアウトした直後に見た景色は、明日初めての出撃を控えている自分が、ベッドに横たわっている前日の景色でした__



感想


ループする世界に巻き込まれ、異世界の化物との戦争に幾度となく駆り出される一人の青年を主人公としたSF漫画です。

2巻という500に満たないページ数は読みやすい分量であり、小畑健さんが描く高い画力の絵も読みやすいです。

ループの世界で表情を失っていく主人公の様子や、戦争での悲惨な状況、その圧倒的な画力で物語をより一層と魅力的なものとしています。

世界観やループの設定、登場人物の簡単な歴史や性格が垣間見れる出来事等、短い物語の中で最低限の説明、描写がなされており、さらに展開もきれいにまとまっています。

2巻という分量を考慮すると、とても完成度の高い作品なのではないかと思います。

ただ、主人公のケイジがお世話になるメカニックとのやり取り時に放つ言葉(「だいぶ前から」や「昨日が」等)がどこか軽く、狙いすぎに感じしまう点は気になります。


「人生は石に刻むものだ。何度でも書きなおせる紙に書いたって意味はない」





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