英国のスパイ
原題:The English Spy
著者名:ダニエル・シルヴァ(Daniel Silva)
訳者:山本やよい
出版社:ハーパーコリンズ・ ジャパン
発売日:2016/7 (原題発表 2015/4)
ジャンル:サスペンス
「英国のスパイ」はダニエル・シルヴァさん著書、美術修復師にしてイスラエル諜報機関に所属する敏腕エージェントが、英国の元プリンセス暗殺事件の犯人検挙を秘密裏に遂行していくスパイ・サスペンス小説です。
本作品は2000年からほぼ1年間隔で刊行されている著者の「美術修復師ガブリエル・アロンシリーズ」の第15作となります。
訳者の山本やよいさんは本作品の他に、上記シリーズ第14作目の「亡者のゲーム」や、第16作目にあたる「ブラック・ウィドウ」でも翻訳を担当されており、他にも、アガサ・クリスティーさんの早川書房「オリエント急行の殺人」の翻訳等、数多くの作品を担当されています。
あらすじ
バハマの首都ナッソーを本拠地とする全長50メートルの豪華クルージングヨット「オーロラ号」、英国海軍出身のレジナルド・オギルヴィがその客船の船長を務めており、彼だけが身分を知っているきわめて重要な船客を迎え入れる準備をしていました。
その船客とは英国の“元”プリンセス、もともとは中流階級の娘でしたが、大学で未来の国王と出会い、人目を忍ぶ交際を実らせて婚約し、その生き様から女王陛下を凌ぐほどの名声を集めていましたが、結局は未来の国王との袂をわけた女性です。
そんな重要な船客を迎える直前にもかかわらず、船長には頭を悩ませる問題がありました。
それは、スパイダーという名の、カリブ海最高の洋上シェフとの名声を持つ男が、フランス領サン・バルテルミー島に停泊している間に行方不明となってしまったことです。
スパイダーはとあるバーで働いている島に着たばかりのウエイトレスであるヴェロニカという女性に出会い、二人で夜の街に出かけた目撃を最後に二人ともども行方がわからなくなっていました。
コック不在の状況に頭を悩ませていた船長のオギルヴィですが、とある男の噂を聞きつけます。
その男の名前はコリン・エルナンデス、1ヶ月ほど前に島に来て、観光客かもビジネスマンかもわからないままコテージを借りて、怠惰に島での生活を謳歌しているように周囲から噂されていました。
そんな彼があるとき、突如として料理人として小さな店で働き始めると、その評判が島中にいきわたるようになったのです。
オギルヴィはエルナンデスに対して破格の条件でスパイダーの代わりに船上コックとなることを依頼し、エルナンデスもその条件に了承します。
しかし、それが世界中に悲報をもたらす元プリンセスを巻き込んだ船上での痛ましい事件の起因となるとは誰も知る由がありませんでした__
その事件の謎の容疑者を追う英国の秘密情報部、通称<MI6>、なかなか有力な手がかりを見つけられないまま事件から10日ほど過ぎたときに、長官であるグレアム・シーモアのもとに1本の電話がかかってきます。
その電話の主はウージ・ナヴォト、イスラエルが誇る諜報機関、通称<オフィス>の長官からであり、彼によると、事件の容疑者はエイモン・クインというアイルランドの武装組織であるアイルランド共和軍、通称<IRA>の元メンバーであり、爆弾製造の天才といわれている男です。過去にはシーモアとの因縁もありました。
クインを追跡すべく、美術修復師にして<オフィス>の凄腕スパイである男、ガブリエル・アロンと、その相棒としてガブリエルの旧知の殺し屋であり、英国特殊空挺部隊<SAS>の元隊員である男、クリストファー・ケラーが協力して、その行方を追います__
感想
海外の小説、さらにシリーズ物を途中から読み始めるということで、登場人物の台詞等で混乱する場面もありましたが、その一方で、スマートに目前の障害を取り除いていく主人公たち、シニカルな登場人物間の会話のやり取りといった、海外の小説らしい部分は大変楽しめました。
ただ、今回タッグを組んで捜査に取り組む二人があまりにも順調に問題を取り除いていくため、いまいち二人のキャラクターの差異がわかりにくかったです。境遇が異なる分、二人の行動に差異はあって当然なのですが、極論、二人の境遇を入れ替えたとしても同じようなリアクションになってしまうのではと感じてしまったことが残念です。
次回シリーズも読んでみたいと思えました。ただ、このシリーズは第16作まで出版されているのですが、翻訳は1~3作と、14~16作という若干中途半端になっているのが悩みどころです。
例の魔法の言葉が頭に浮かんだ。
“ほかのやつを見つけてくれ……”
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