映画 ~世界でいちばん長い写真 ~



世界でいちばん長い写真(せかいでいちばんながいしゃしん)
配給:スターキャット、キャンター
監督:草野翔吾(くさの しょうご)
脚本:草野翔吾
出演:高杉真宙、武田梨奈、松本穂香
公開日:2018/6
ジャンル:青春




「世界でいちばん長い写真」は、写真部に所属する冴えない男子高校生が、珍しいパノラマカメラとの出会いをきっかけに高校生活を変えていく青春映画です。

監督・脚本に群馬県出身で、「からっぽ」、「にがくてあまい」等の映画や、ミュージックビデオの監督も手がける草野翔吾さんです。

主演は「ギャングース」、「虹色デイズ」等の高杉真宙さん、「逆光の頃」のときのようにどこかふわっふわとした男子高校生を本作品でも演じています。

その他の出演者に、主人公の従姉として「ハイキック・ガール!」の武田梨奈さん、主人公と同じ写真部でクラス委員役に「日曜劇場 この世界の片隅に」の松本穂香さん、主人公のよき友人として前原滉さん、主人公を写真をサポートする店員役に吉沢悠さんがいます。

原作は「ストロベリーナイト」等の作品がある誉田哲也さんの小説です。

作品に登場する360°回転パノラマカメラはマミヤ製のカメラをベースとしたものであり、「日本手作りカメラの会」の会員である山本新一さんが製作したもので、日本カメラ博物館に展示されているということです。



あらすじ


とある結婚式場、スタッフがあわただしく準備している中、式場の中心に立って周囲をゆっくりと見渡している一人の男(内藤宏伸/ノロブ/高杉真宙)、女性スタッフに「おめでとうございます」と声をかけられたノロブは新婦が待機している控え室に案内されます。

新婦(竹中温子/武田梨奈)のもとを訪ねるノロブ、「まことにおめでとうございます」とノロブは温子を祝福します。

ノロブと温子は従姉弟の関係であり、またノロブが恋のキューピット役をしたことで今日の温子の結婚があります。


4年前__

とある高校の文化祭、どの部がどの教室を利用するかの打ち合わせ、議長より多目的室を使いたい部活動はありますか?と希望が募られます。

真っ先に手を上げたのはサッカー部、一方、ノロブも手を上げようとしていましたが、サッカー部の勢いにたじろいでしまって、無抵抗のまま多目的室を譲ってしまいます。

ノロブがその顛末を同じ写真部の女子生徒(三好/松本穂香)に報告したところ、廊下で叱責されてしまいます。三好はクラス委員も務めているためノロブに部の代表として会議の参加を依頼したのですが、そんなことであれば自分が参加すればよかったと嘆きます。

ノロブの本名は内藤宏伸ですが、動作が少しドンくさいところがあるため、ノロブという愛称で呼ばれているようです。


海岸で友達二人(前原滉、田村杏太郎)と雑談するノロブ、ノロブは陰キャとして高校生活を過ごしていましたが、友人から一発逆転するつもりでクラス委員になるように発破をかけられていました。

しかし、結局はいつものように何も変わらずクラス委員にもなれなかったノロブ、三人は海岸近くで楽しくはしゃいでいる陽キャラの同級生たちを遠くから眺めています。

そんな三人の近くに「リサイクルショップ竹中」という営業者が近づいてきます。そこから降りてきたのはノロブの従姉弟にあたる温子でした。

温子は美人であり、また、ノロブとは対照的にいろいろなことに取り組み、何でもできてしまうタイプの人間です。そんな温子にノロブの友人の一人は一目惚れしてしまいます。


車で送ってくれるという言葉で温子の車で帰宅する三人でしたが、その途中、温子が叔父から引き継いでいるリサイクルショップを手伝うことになります。

何とか手伝いを終えた三人に対して、温子が手伝ってくれた御礼に好きなものをあげると言います。

ノロブは、叔父がどこからか持ってきたという大きなカメラに興味を示します。

それは少し大きなヴィンテージカメラで、レンズを覗くと左右が逆転して見えました。

友達の一人がそれを聞いて、そのカメラのことを一発逆転カメラと呼びます。

ノロブはそのカメラを使って、密かに憧れている陸上部の女子生徒(安藤エリカ/黒崎レイナ)を撮影することを想像して一人にやけています。


別の日、校内では様々な部活が活動します。

写真部の定例の発表会では、三好の撮影した鏡を利用した独創的な写真が部員から賞賛される一方で、ノロブはパッとしません。

ノロブと三好の二人の会話の中で、ノロブが人を撮ることが苦手だと三好に伝えると、三好は「何か得意なことあるの?」、「ずっと聞きたかったんだけど、何で写真を続けているの?」と卑屈なノロブに何とかしてもらいたいと問いかけます。

1番とか比較されることを避けたいノロブ、1度でも1番になってから言わないとダサいと三好は一蹴します。


そんな中、温子からもらったカメラを動かしてみようとするノロブ、実はそのカメラはとても珍しい360度の撮影が可能なパノラマカメラでした。

その特殊なカメラを活かせる構図を見つけるために、ノロブは校内や街をいつもと違った風景で見ようとすることとなります__



感想


文化系の青春映画、最後の盛り上がりまで楽しく鑑賞できました。


ストーリーは限られた時間の中でとてもテンポよく作られています。挫折する場面といった起伏がない点をどう捉えるかで印象が変わるでしょうが、個人的にはスッキリとしていて、青春ものとしてはちょうど良かった印象です。

冒頭でスタッフがあわただしく準備をしている式場のど真ん中でつっ立っている主人公や、部活の最初の定例会での鏡を利用した部長の写真といった、細かいシーンが作品全体を通して活かされていて、観ていてスッキリできます。

ただ、エンディングで流れる写真はもっとじっくり見たかったような気がしました。最後の20分間がワクワクするシーンである分、より強くそう思ってしまいます。


キャラクターは気弱な文化系主人公をはじめとして、サバサバイケイケな従姉、陰キャだが友達思いの友人、同級生を惹きつける小悪魔的な女子生徒、そして気が強いようで誰よりも主人公を信頼しているように見える女子生徒と、ステレオタイプかもしれませんが魅力的で特徴的な登場人物でまとめられているように思います。


青春ものは新しい人との出会いによって転機が訪れることが多いと思っているのですが、物をきっかけに主人公が見る風景を変え、もともといた周囲の素晴らしい人たちとの関わり方が変わっていくという流れはあまり見る機会がなかったため、王道なストーリー・展開のなかでも印象に残る作品でした。



145mって これくらいかな




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